記事提供:おたぽる

河崎実監督作『大怪獣モノ』。大巨人が活躍するが、これは『進撃の巨人』(15年)ではなく、『フランケンシュタイン対地底怪獣』(65年)を意識したもの。

人はそれを便乗商法と呼ぶ。

バカ映画の巨匠・河崎実監督の最新作『大怪獣モノ』が7月16日(土)より劇場公開される。夏休みに合わせてこの公開日が設定されたわけではない。

SFアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズを大ヒットさせた庵野秀明が脚本・総監督を務める特撮大作『シン・ゴジラ』が7月29日(金)より全国公開されるのに先駆け、その話題性に乗っかったものだ。

シン・ゴジラ』を観るつもりが、うっかり映画館を間違ってしまったという人たちを取り込もうという狙いがある。

河崎監督には前科がある。『シン・ゴジラ』にも参加している樋口真嗣監督の『日本沈没』(06年)が公開されるのに合わせて、筒井康隆原作のSFパロディ『日本以外全部沈没』(06年)を映画化。

今はなき映画会社トルネードフィルム社が配給し、同社にとって数少ないヒット作となった。

他にも洞爺湖サミット開催イヤーには『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(08年)、AKB48人気にあやかった『地球防衛ガールズ P9』(11年)、壇蜜ブームに合わせた『地球防衛未亡人』(14年)などを劇場公開。

おそるべきコバンザメ体質の男なのだ。

だが、そんな河崎監督の便乗商法には、ある種の人生哲学が感じられる。大作映画やブームの話題性に乗っかって低予算で作られた便乗映画だが、どれも怪獣映画だということで一貫している。

『シン・ゴジラ』に登場する新ゴジラがフルCGで描かれるのに対し、河崎監督が撮る怪獣映画のクリーチャーたちは今なお着ぐるみである。

『ウルトラマン』(66年~67年)をはじめとする円谷プロ製作の特撮シリーズに幼少期から慣れ親しんで育った河崎監督は、異形だがどこか温かみのある着ぐるみ怪獣たちの活躍の場を、誰から頼まれたわけでもないのに延々と作り続けているのだ。

もはや河崎監督作品に登場する着ぐるみ怪獣は、歌舞伎や能・狂言といった伝統芸能の一種だと言っていい。便乗でもいい、たくましく生き延びてほしい。そんな想いが河崎監督の怪獣映画には込められている。

『メガ・シャーク』シリーズなど超低予算な海洋パニックものをやたらと撮っている米国のアサイラム社もコバンザメ体質で有名だ。

1997年に設立されたこの映画会社は、著作権の切れていたH・G・ウェルズ原作の古典的SF小説『宇宙戦争』を『H.G.ウェルズ ウォー・オブ・ザ・ワールド』(05年)として映画化しているが、

スピルバーグがトム・クルーズ主演作として同じ原作を製作準備していることを知り、「これは勝てっこない」と製作中止を考えていた。

ところが、DVDの販売会社から「逆に話題性があっていいんじゃないの」と励まされて製作したところ、スピルバーグの映画『宇宙戦争』(05年)もアサイラム社のDVD作品『ウォー・オブ・ザ・ワールド』もどちらも大ヒット。

以後、アサイラム社は「予算・タイミング・スピード」の3つを合い言葉にして、年間15本という驚異的なペースで便乗映画を作り続けている。

便乗ネタを探すので、スタッフは大忙しだ。ちなみに作品のクオリティーは4つめに重要な要素らしい。インディーズ企業ながら、サバイバル能力に優れた組織である。

話を河崎監督の『大怪獣モノ』に戻そう。主演はDTTと新日本プロレス、インディーズとメジャーの両団体と同時に契約したことで話題を呼んだ人気レスラーの飯伏幸太。

火山活動が活発化した明神岳から伝説で言い伝えられてきた大怪獣モノが現われ、地球防衛軍の兵器を寄せ付けないモノは東京に接近。

超理化学研究所で開発された万能細胞セタップXを注入された草食系男子の新田(斉藤秀翼)がみるみるとマッチョな大巨人(飯伏幸太)に変身して、モノと激突するというストーリーとなっている。

飯伏の他にも、ビジュアル系レスラーの赤井沙希(赤井英和の娘!)が女スパイ役、クライマックスシーンではプロレス界でいちばん性格の悪い鈴木みのるが登場。

ここ数年のプロレスブームも取り込んだものとなっている。岩井志麻子、会田誠など文壇やアート界を代表する著名人たちも唐突に出演。

とてもカオティックな内容となっている。現在オンエア中の『ウルトラマンオーブ』(テレビ東京系)のメインライター中野貴雄と河崎監督との共同脚本作だそうだ。

6月27日に行なわれた『大怪獣モノ』の完成披露に、斉藤秀翼、飯伏幸太、河西美希、河崎監督らが登壇。低予算映画だけど、みんな楽しそうだ。

完成披露に飯伏、斉藤、赤井、ヒロイン役を務めた河西美希らと共に登壇した河崎監督は誇らしげにこう語った。

「まともなことをやっても勝てません。『シン・ゴジラ』の前座になっちゃう。前座になるつもりは、まったくありません。真剣にやってますから。

マジメにバカやってます。現役のプロレスラーが怪獣をガチでリンチしてしまうという驚愕の内容です。ご覧になった方は、怪獣に同情するかもしれません。これが僕のスタイルなんです」

昔ながらの着ぐるみ怪獣への愛情一本で、技術力でも宣伝力でも遥かに上回る『シン・ゴジラ』の牙城にどこまで迫れるか。庵野秀明vs河崎実、怪獣オタク同士のバトルの行く末に注目したい。

『大怪獣モノ』
監督・特技監督・脚本/河崎実 脚本/中野貴雄
出演/飯伏幸太、鈴木みのる、斉藤秀翼、真夏竜、河西美希、古谷敏、きくち英一、堀田眞三、赤井沙希
配給/アーク・フィルムズ 7月16日(土)よりヒューマントラスト渋谷ほか全国公開
(c)2016『大怪獣モノ』製作委員会

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