自転車で本を運ぶ路上図書館を開いている女性が今アメリカのオレゴン州、ポートランドで話題になっています。

「ホームレスの人たちに文学と人としての実感を」

出典 https://www.youtube.com

路上で生活するホームレスの人たちにとってはその日暮らしがせいいっぱいで、本を読んで考える時間を持つという生活とはほとんどが無縁になってしまっています。毎日を生きているという思いよりも「なんとかして生きなければならない」という気持ちで過ごすうちに、人間として「人生を生きている」という実感も失われてしまうこともあるでしょう。

ホームレスになる前は、社会の一員だった自分。ところがホームレスになった途端に社会から断絶され、拒絶反応を与えられて惨めな生活を強いられるのです。自分らしさや自分が好きなこととはほぼ無縁になってしまうために、彼らの中から知性も夢も希望も消えるのは致し方ないことなのかも知れません。

そんな彼らのために1人の女性が立ち上がった

出典 https://www.youtube.com

ローラ・モールトンさんは、ポートランドの大学、そしてカレッジの教授でもあります。そんな彼女は今自転車で、街の人たちに本を運んでいるのです。

2011年から始めた「Street Books」

出典 https://www.youtube.com

ローラさんはこの5年間、車輪のついた大きな箱にたくさんの本を入れてポートランド中を自転車で回って来ました。ホームレスの人たちが集まるコミュニティや、彼らが暮らす公園など、自転車を走らせ本を貸し出しています。

路上図書館は大人気となっている

出典 https://www.youtube.com

ホームレスの人たちがどんなに本を読むことが好きでも、地元の図書館へ行って本を借りるということは至難の業。登録には名前以外に住所が必要なのでまず普通に借りるということはできません。

そして仮に図書館から本を借りられたとしても、日々のハードな暮らしで返す前に本が汚れてしまったりすることもあるでしょう。そうなると罰金を払わなければならないことにもなりかねません。そのため、彼らは図書館で本を借りたくても借りることができないのです。

出典 https://www.youtube.com

ローラさんの移動図書館は、そんな彼らにとっては理想的なもの。彼女はまた同じ場所へと戻って来るので「読み終わったら返してくれればいい」と期限の設定をせずに登録。そしてその登録にも名前以外の詳細は一切必要としません。

ホームレスの人たちに「生きている」という実感を与え、社会の一員であるという気持ちをもう一度持ち、そして文学でコミュニケーションを計るようになってほしいとローラさんは語ります。

「彼らは実は知的な人も多いんです」

出典 https://www.youtube.com

ホームレスだから本を読めない、というのではなく何かの事情で路上暮らしをしている人たちの中には、元々本好きな人も多いとローラさんは言います。

実は筆者の相方もホームレスの人たちと関わりある仕事をしていますが、彼らの中には過去に教授だったり、医者だったりと驚くようなキャリアを持つ人達もいるのだとか。そして彼らは社会から拒絶される存在になってもやっぱり本が好きで、たまに会話をするとその知的さに驚かされることもあるそう。

子供の頃から本好きだったローラさん

出典 https://www.youtube.com

母親の影響で幼少の頃から本を読んでいたローラさんは、本を読むということが自分にとっていかに大切な人生の糧となるかということを知っています。そしてそんな思いを、ホームレスの人たちにも味わってほしいと思っているのです。

現在は7人のボランティアと共に活動

出典 https://www.youtube.com

5年間、同じ場所を廻っているうちにホームレスの人たちと顔見知りにもなります。どんな本が好きなのか、誰の本を読みたいのかリクエストを聞いて次に会う時までに仕入れるようにしたりと献身的に活動をしているローラさん。現在は7人のボランティアたちとポートランドを自転車で走っています。

「本を読むのが嫌いな人なんているかい?」

出典 https://www.youtube.com

こちらのホームレスの男性は「ホームレスになって路上生活をしているのは、必ずしも自分が選んだことじゃないんだ」と語ります。様々な事情で家や家族、果ては国までも失う人はこの世に多く存在します。彼らはみな、ホームレスの生活を強いられている人たちばかりなのです。

お気に入りの本を定期的に借りられる嬉しさ

出典 https://www.youtube.com

ホームレス暮らしの男性にとって、本を読むことは何よりの楽しみ。気に入った作家の本を読むことで自分の内側を見つめるきっかけにもなることでしょう。苦しい生活をしている人たちに、本を薦めることはパワフルなことだとローラさんは言います。それでも人の心の中から「文学」の意識を失くしてほしくない、と。つまりそれはホームレスの人にもちゃんと「人間性」を感じてほしいから。

本は全て寄贈されたもの

出典 https://www.youtube.com

私たちが「もうこの本、読まないからいいや」と思って処分してしまっても、その本を必要としている誰かが必ず存在するのです。ローラさんの図書館には、小説、伝記、SF、恋愛もの、そして文学や哲学など、ありとあらゆるジャンルが揃っています。

借りた本と記念写真も…

出典 https://www.youtube.com

本を読むことは、その人の内なる力となります。ホームレスの暮らしをしていても常に活字と触れていることで視野も思考も広がり、彼らの表情も変わってきます。

現在は5,000人ほどの利用者がいるというこの路上図書館。本が好きなホームレスの人たちはまた次の本を借りたいために、ほとんどの人がちゃんと返却もしてくれるそう。ある一人の男性は「誰しも賢明さと知性は持っていたいもんだよ。本を読むことでそれが得られるんだから、本を嫌いなわけないさ」と語りました。

今日も自転車で本を運ぶローラさん

出典 https://www.youtube.com

ホームレスの人たちの中には、やはり借りたままの本を返さない人ももちろんいるのだそう。でもそんな場合は「どうして?」という理由を必ず聞くようにしているのだとか。そして「他の人があなたの借りた本を読みたいかもしれないから、ここに来なくてもいいから誰かに事付けておいてくれたら嬉しいわ」とお願いして、無理強いはしないと言います。

辛い経験をしている人たちの中には、どれだけ他人が親切にしても彼らは社会から離脱することに慣れ切ってしまっているために、その行為を素直に受け入れられない人もいます。でもローラさんはなるべくたくさんのホームレスの人たちと会話をするように心がけています。それは励ましでもあり、彼らに勇気を与え孤独を紛らわしていることになるのです。

自分の存在を誰かに認めてもらうことは、きっと誰にとっても嬉しいことでしょう。ローラさんは、ホームレスの人たちにそうした希望を与えるために今日も自転車で本を運びます。こうした活動が世界中で広まるようになればいいなと思う筆者。どんな境遇にある人も、断絶してしまわないで同じ人間として認め合うこと。そういう意識が、社会の中で実は一番大切なのではないでしょうか。

出典 YouTube

この記事を書いたユーザー

Mayo このユーザーの他の記事を見る

公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

得意ジャンル
  • 話題
  • 動物
  • 社会問題
  • 海外旅行
  • 育児
  • テレビ
  • 美容、健康
  • カルチャー
  • ファッション
  • コラム
  • 感動
  • おもしろ

権利侵害申告はこちら