記事提供:サイゾーウーマン

「乳がんは恐ろしい病気、というイメージだけが独り歩きしている」

――そう話すのは、真水(ますい)美佳さん。乳がんサバイバーに向け、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上のための情報を提供し、乳房再建の正しい理解に導くNPO法人E‐BeC(エンパワリングブレストキャンサー)の理事長を務める女性だ。

最近では、小林麻央さんが33歳の若さで乳がん闘病中だと報じられた。

過熱するばかりの報道合戦が問題視されたが、「20代も30代も、いますぐ検診に!」といわんばかりの過剰な検診推奨も、乳がんへの恐怖をあおりすぎている。

一般に、乳がん検診、特にマンモグラフィは40歳以降、2年に1度のペースで受けるのが適切とされている。しかし、同世代の有名人が罹患したと聞けば不安になり、検診にダッシュしたくなるのも無理はない。

こうした状況について、真水さんは次のように語る。

「それもこれも、乳がんについて知らないからです。言葉としての“乳がん”は誰もが知っていますが、病気の実態は驚くほど知られていません」

■乳がんイコール死ではない

真水さん自身も乳がんサバイバー。8年前に診断され、治療、乳房再建を経て、現在に至っている。

「私はいま、NPOの活動も日々の生活も、積極的に楽しんでいます。乳がんは、みなさんが思っているより、治療後の経過がいい病気なんです。

毎年10月に開催されるピンクリボンフェスティバルをご存じの方は多いと思いますが、10kmものスマイルウォークをしたり、お城や東京タワーをピンクにライティングしたり、すごくアクティブ!

病気の状況にもよりますし、個人差も大きいのですが、乳がんサバイバーには元気な方が多いんです」

おそらく、多くの人が持つ乳がんへの漠然とした不安は、「死んでしまうかも」「治療がつらそう」「乳房を失うのではないか」の3点に集約されるだろう。

ちなみに、2013年の乳がん死亡数(女性)は約1万3,000人。これは、がんで死亡した女性全体の約9%を占める(国立がん研究センターがん「がん情報サービス」)。

「5年生存率が92%というと、乳がんイコール死ではないとおわかりいただけますよね。世界で、いい薬がどんどん開発されていますから。

また、かつては再発すると2年後ぐらいに亡くなるケースが多かったのですが、最近では、再発後も治療を続け、元気に生活している人たちが増えています。

その後の人生が長いからこそ、QOLが大事。病気ですから、手術をすればQOLは低下します。私もそうでした。でも現在は、治療の過程で緩和ケアが取り入れられ、QOLを維持しながら治療する方向に変わりつつあります」

■日本の乳房再建技術は非常に高い

なかでも真水さんらが力を入れているのは「乳房再建」の啓発活動だ。

これは全摘出して平らになった胸に、シリコンインプラントを入れる、あるいは自家組織(自分の体の脂肪や筋肉)を移植して乳房をつくる形成外科手術のことで、

長らく自費診療だったシリコンインプラントによる乳房再建にも13年、保険が適用されることになった。

「胸をなくしたくないから、全摘出ではなく、温存して患部だけ摘出するという方もいますが、思っていた以上に乳房の形が変わり、ショックを受けて心の病になってしまうこともあります。

では、全摘出したなら誰もが再建したほうがいいかというと、そんなことはありません。必要ない方は、そのままでいいんです。

再建する人の理由もそれぞれ。『温泉旅行に行きたいから』という人もいれば、バストがもともと大きくて、片方がなくなったことで左右のバランスが崩れたのを解消するためという人もいます。実際、再建している方は、みなさん前向きですよ」

E‐BeCでは、全国で乳房再建の啓発イベントを行っている。

「イベントでは、再建した人の胸に触れ、お話を聞かせてもらう“体感会”を行います。その明るくて元気な姿を見て、手術後で落ち込んでいた女性が『私もこんなふうになりたい』と感極まって涙する光景も、よく目にします」

体感会では、再建した胸に触れて「シリコンって意外と柔らかい」「自家組織だとあたたかくて、元の胸と同じ柔らかさ」などの感想が聞かれる。

また、仕事の復帰時期や、赤ちゃんを抱けるようになる時期、普通のブラジャーを着けられるようになるタイミング、傷は引きつるか否かなどについて、具体的な質問も飛び交う。

「再建するもしないも個人の自由です。が、『再建という選択肢を知らなかったから、できなかった』という人はゼロにしたい。

都市部と地方とでは再建に対する情報に格差がありますし、悲しいことに乳腺外科医の理解が低くて、『病気が治ったんだから、再建なんかしなくても』と言われる場合もあります。

かと思えば、乳がんになった事実をまだ受け入れられていない女性が、『再建するかどうか、次の外来までに決めてきて』と言われることも…。シリコンか自家組織か、“一次再建”か“二次再建”か、決めることが多すぎて混乱します」

一次再建とは、乳がん手術と同時に再建することで(エキスパンダーといわれる拡張器具だけを胸に埋め込んでおく場合も)、二次再建は、乳がん手術とは別に時期を改めて再建手術をスタートさせる。

前者には「手術の回数が少ない」「乳房の喪失感が小さい」、後者には「まずは治療に専念できる」「乳がん手術とは別の病院でも再建できる」などのメリットがある。

「日本の再建技術は非常に高いといわれています。腕に自信のある先生なら、『再建したら、どんな胸になりますか』と訊けば、症例写真をたくさん見せてくれます。

でも、胸の形って究極は『自分が納得できるかどうか』なんです。すごくきれいにできているのに不満を抱えている人もいれば、はたから見るとバランスがおかしいけど満足している人もいます。

ただ、乳がんを治すことより再建のほうに気持ちがいっちゃうこともあるので、そこは注意したいですね。まずは、乳がんをきちんと治す。再建は、いつでもできますから」

■後回しにせず、自分自身の体をまず大事に

乳がんは予後がよく、決してこわい病気ではない。漠然とした恐怖が拭えれば、検診も前向きに考えられるのではないか。

「私の周りでも、再建のことを知って『だったら検診に行こうかな』という人がいます。

ただ、日本人の胸はマンモグラフィに合わないかもしれないという懸念は、以前から指摘されています。日本人は“デンスブレスト”といって、乳腺の密度が高い傾向にあります」

乳腺密度が高いと、プリッとした硬めのバスト、低いとふわふわで柔らかいバストになる。

「乳腺密度が高い場合、マンモグラフィでは、がんが見つかりにくいんです。

20~30代でも、身近な親族に乳がん、卵巣がん経験者などがいる方は検診を受けていいと思いますが、その場合、若い女性はそもそも乳腺の密度が高めなので、マンモでは見つかりにくいということを意識して、健診のときは超音波も併用してください。

検診料がプラスになりますが、放っておくと発見された後のQOLは下がるばかりだし、いくら予後がいい病気といっても、生命にも関わります。

仕事、プライベート、人によっては育児や介護で、どうしても自分の体のことが後回しになる年代ですが、自分自身をまず大事にしてください」

出典:NPO法人E‐BeC

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