記事提供:TOCANA

近年、目覚ましい発展を遂げているロボットや人工知能(AI)の技術。高度になればなるほど、人間との境界が曖昧になり、私たちに「生命とは何か?」という難題を突きつける。

そして今回、この問いをますます複雑にする新技術「バイオハイブリッド」が登場した。生命体でありながらロボットでもある、前代未聞の“エイ”の詳細についてお伝えしよう。

■ネズミの心筋細胞から“エイ”が誕生

今月8日、「アメリカ科学振興協会(AAAS)」が発行する権威ある学術誌『サイエンス』上で、米・ハーバード大学の科学者が驚くべき最新成果を発表した。

生物工学者のキット・パーカー博士率いる研究チームは、なんとネズミの心筋細胞から“エイ”を生み出すことに成功したという。

だがエイとはいえ、それは獲物を食べることもなければ、繁殖することもない。彼らは周囲に照射された光に反応し、水中を泳ぎ回ることができるが、その動力はネズミの心筋細胞。まさに、生物とロボットの中間のような存在なのだ。

研究チームは今回のエイを「バイオハイブリッド」と呼び、生物工学におけるブレイクスルーになると自負しているようだ。

出典 YouTube

その動きを見れば一目瞭然。「バイオハイブリッド」のエイは、海洋生物のエイとまったく同じ動きで、パチパチと周囲を照らす青い光を追いかけるように、ヒレを波打たせながら水中をぐんぐん進む。では一体、その構造はどうなっているのだろうか?

■ヤバすぎる「バイオハイブリッド」の構造

出典 http://fortune.com

「バイオハイブリッド」の“エイ”、体長は1インチ(2.54センチ)をわずかに上回る程度で、体重も約10グラムと極めて軽い。

その体は、全部で4つの層から構成されている。皮膚となる第1層は、豊胸手術などで広く用いられるシリコンを3Dプリント技術で成型したものだ。

その内側、第2層は、金で作られたエイの骨格。これは“ひれ”の複雑な動きを、安定して再現する耐久性の確保に一役買っている。

第3層は、第1層目と同じシリコンだが、これは金の骨格が第4層に直接触れることを防ぐためのもの。そして一番奥の第4層目に、ネズミの心臓から取り出した約20万個の細胞が“ひれ”とつながる形で収まっている。

出典 http://www.popularmechanics.com

この心筋細胞には、光に反応して動くように「オプトジェネティクス(光遺伝学)」の技術による遺伝子改変が施されており、照射する光の周波数(明るさ)や位置で“ひれ”の動きに変化が生じる結果、進行方向やスピードを制御することができる仕組みだ。

「電子工学で生み出されるロボットでは、これほどの軽さと精密な動きを実現することはできません」

「今後さまざまな分野で応用される技術となるでしょう」(パーカー博士)

なお、栄養素を含む特製の液体(ネズミの体温と同じ温かさ)に浸しておくことで、ネズミの心筋細胞には何度でもエネルギーがチャージされ、約6週間にわたり動き続けることができるという。

しかし、この構造にはエイの免疫システムが備わっていない。これは、ネズミの心筋細胞を細菌から守る手段がないことを意味するため、自然界に放つためにはさらなる実験と改良が必要とのことだ。

■生命体でありロボットでもある

私たちは、この「バイオハイブリッド」のエイを生命体とみなすべきなのか、それとも単なるロボットとして扱うべきなのか?研究者自身はそのことに答えていないが、議論が必要だと考えているようだ。

「このエイは、ロボットでありながら、生息していると考えることもできます。しかし、繁殖することができないため、生命体といい切ることもできません」

「『バイオハイブリッド』は生きているのでしょうか?今後、哲学的な問題を呼び起こすことになると考えています」(パーカー博士)

出典 YouTube

なお、複数の海外メディアによると、今回のエイについて科学界では「生命の新たな次元を切り拓く偉業である」として高く評価する動きがあるようだ。

今後、生命の定義さえ変えてしまいそうな「バイオハイブリッド」。

その存在は、果たしてロボットなのか、それとも生命体か?

そして人間への応用は?

さまざまな物議を醸す研究成果であることだけは間違いないだろう。

出典:Science
出典:POPULAR MECHANICS
出典:POPULAR SCIENCE
出典:FORTUNE

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス