「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉がある。特にテレビ番組を介してヒット曲が量産された1990年代、ますます両者は密接な関係を保つようになっていった。

これから紹介するのは、「時代」「テレビ」「記憶」を同時に映しだす、その1つの象徴ともいえる楽曲だ。移り行く時代を等身大に生きる“彼らの歌”は、まだ未熟だった若者達の原風景を、続く未来へと残してくれていた。

あの時、あの曲。

#2 「コンビニ / 猿岩石」

出典 https://www.amazon.co.jp

こちらより『コンビニ』が一部視聴できます)

前年に日本テレビ「進め!電波少年」のユーラシア大陸横断ヒッチハイクを成功させ、人気絶頂を迎えていたお笑いコンビ・猿岩石の3rdシングル。当時の猿岩石は文字通り“時代の寵児”だった。ヒッチハイクの模様を綴った書籍「猿岩石日記」は累計250万部を越えるベストセラーとなり、さらに歌の才能を見込まれ急遽決まったCDデビューでは、元チェッカーズの藤井フミヤ、藤井尚之提供によるデビューシングル『白い雲のように』で一躍ミリオンセラー歌手となる

実際、当時の彼らの勢いは歌手活動におけるタイアップの多さにもよく表れていた。1番CDリリースの多かった1997年は1年間に発表したシングル全5作品中、現に4作がCMソングとしてテレビから流れている。

今回取り上げる『コンビニ』も、実は1997年の発売当時にファミリーマートのCMソングとして知名度を広げていった作品だ。B面にも広瀬香美が作詞を手がけた『バイト最後の日』という楽曲が収録されており、このループするドラマは、当時からどこか若者の切なさをくすぐっていた。

そして今振り返ると、当時20代だった猿岩石の歌声と『コンビニ』というタイトルは、私たちが過ごした1990年代のあの空気感を見事に表していた事に気づく。

コンビニもまた、1990年代に“時代の寵児”となったものの1つだ。それまで日本社会における買い物の主役といえばデパートやスーパーだったが、1960~80年代に日本各地で相次いで誕生したコンビニは、ニーズが多様化する1990年代から本格的に勢いを加速。1991年度にはセブン-イレブンの売上高が初めて1兆円を突破し、この頃から、コンビニは日本の風景と生活を急速に変えていく。

それまで食品や飲料の販売がメインだったコンビニが新たなサービスを展開し始めたのは、ちょうど猿岩石がイギリスのロンドンを目指してヒッチハイクの旅をスタートさせた1996年の事だ。この頃ローソンで初めて切手やハガキが買えるようになり、セブン‐イレブンではカラーコピー機が利用できるようになった。

今ではすっかり当たり前となったコンサートチケットの購入システムも、実はこの頃に産声を上げているものの1つになる。

また当時の印象的な出来事として、コンビニでのゲームソフトの販売開始を記憶している人も多いだろう。それまで主に専門店に出向いて購入していたゲームソフトは、1997年の新たな流通ルート(デジキューブ)の誕生に伴って、コンビニでの取り扱いが始まる。

時に長い行列を作ってソフトを買い求めていたゲームユーザー層にとって、「近くで買える、夜でも買える」を売りにしたコンビニの進化は、その購買意欲を見事に撃ち抜くものだった。最初のコンビニ販売商品となった人気ゲーム「ファイナルファンタジーVII」は、なんと初回出荷の8割がコンビニで流通する。後に同作品は、国内で400万本を売り上げる歴史的一作となった。そのブームのきっかけにも、コンビニは大きく関係している。

あの頃を境に、コンビニはより便利に、より身近に時代を反映していくようになった。
そして思えばあの分岐点には、誰よりも早く文化に慣れ親しんだ、多くの若者の存在があった。

“雑誌 立ち読みしながら 来るのを待ったけど
今夜も1人 肉まんを 食べながら 帰るよ”

出典猿岩石『コンビニ』

そして時は流れ、2016年。

現在でもカウンターコーヒーやオリジナルドーナツの展開、また家庭用医薬品の販売など、コンビニは決して速度を落とすことなく、時代のニーズに応えて新たなサービスを日々提供し続けている。

そしてコンビニが進化を始めた時期に同じく時代の第一線へと駆け上がっていった猿岩石も、2004年のコンビ解散を経て、まずピン芸人となっていた有吉弘行がテレビ朝日「アメトーーク!」をきっかけにあだ名・毒舌トークで再ブレイク。今では多数の冠番組を抱える人気タレントとなった。

一度芸能界を引退していた森脇和成もまた、テレビ朝日「しくじり先生」への出演を機に40歳を迎える2015年、11年ぶりの芸能界への復帰を発表し、現在は舞台で主演を務めるなど再出発を果たしている。

まだ楽しんでいる余裕はありません。バラエティーでお声がけいただいて、やらせていただいているんですけど。やらせていただけるなら何でもやろうという気持ちがあるので、いろんなことに挑戦していきたいと思います。/森脇和成

出典 http://www.news-postseven.com

あれから、早いものでもう20年が経とうとしている。

コンビニも猿岩石も、時代の変化を受け入れながら、同じ今を生きている。

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Spotlight編集部 小娘 このユーザーの他の記事を見る

1983年生まれのフリーライター。アイドルと音楽と歴史が好きです。デビューから応援しているアイドルの再評価をきっかけに、新規 / ライトファンを意識したエンタメ記事を日々研究しています。

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