2016年の今、再び「日本語ラップ」が名を轟かせている。若きラッパーたちが即興でリリックをぶつけ合う、ラップMCバトル番組『フリースタイルダンジョン』の誕生を契機に、雑誌で日本語ラップが特集されることも格段に増えた。

今新たな時代を迎えつつあるラップカルチャーに想いを馳せると、“ある2組のアーティスト”の記憶がよぎらずにはいられない。今から22年前、その文化へ続く一つの扉は、彼らによって開かれていた。

あの時、あの曲。

#1 「今夜はブギー・バック / スチャダラパー&小沢健二」

1990年デビューのヒップホップグループ・スチャダラパーと1993年にソロデビューしたシンガーソングライター・小沢健二によるコラボ楽曲、『今夜はブギー・バック』。
小沢健二名義 featuring スチャダラパーの“nice vocal”verとスチャダラパー featuring 小沢健二名義の“smooth rap”verが存在するこの作品は、当時活性化していた渋谷系サウンドが息づく高い完成度、また所属レコード会社の違いを飛び越える粋な取り組みでもあった事から次第に注目が集まり、50万枚を超えるヒット作となる。

そしてさらに注目すべきは、後に発表されていく多様なカバー作品の数々。当時からジャンルや年齢を飛び越えて多大な影響を及ぼしていたそのメロディやリリックは、90年代が過去となっていく日々においてもなお、様々なアーティストたちに愛され、新たな命が吹き込まれていった。

そしていつしか『今夜はブギー・バック』は音楽界において、“社会現象レベル”の作品へと育っていく事になる。

・宇多田ヒカル(1999年)
まだメディア出演が少なかったデビュー直後の16歳当時、同曲を自身のファーストライブやテレビ番組で披露していた事が大きな話題に。そのライブ映像は2015年にYoutubeで公開され、現在視聴することが可能になっている

出典 YouTube

(2:09〜)

・SMAP(2001年~)
2001年の「SMAP×SMAP」において、初めてグループで作品をカバー。世代的にもリリース当時から愛聴しているメンバーが多く、SMAPは後の2006年には「うたばん」で、また2016年にはやはり「SMAP×SMAP」でカバーを披露している(2016年はスチャダラパー本人たちともコラボ)

・嵐(2001~2002年)
2001年末から2002年にかけて行われたコンサートツアーで、ラップ担当で知られる櫻井翔をフィーチャーした形で披露。櫻井は元々1996年に日比谷野外音楽堂で開催されたヒップホップの伝説的イベント「さんピンCAMP」をきっかけとしてラップへの興味を抱いており、出演こそしていないものの、同イベントにはスチャダラパーも観客として参加している

・竹中直人&ワタナベイビー (2006年)
映画「男はソレを我慢できない」の主題歌として、主演を務めた俳優・竹中直人がミュージシャンのワタナベイビー(ホフディラン)とともに歌唱。竹中はラップパートを担当している。ちなみにこのカバーverはスチャダラパー自らプロデュースを行っており、両者はその後も度々音楽作品での共演を果たしている

・KREVA(2006年)
シングル「Have a nice day!」のカップリング曲として収録。KREVAはKICK THE CAN CREWやその後のソロ活動でも知られる通り、国内における有名日本人ラッパーの一人だが、この時のカバーに関してはあえて歌メロのみを採用したアレンジになっている(歌詞も一部変更あり)

・ハナレグミ(2007年)
2007年に開催された複数の音楽フェスで、ハナレグミがスチャダラパーとともに披露。ハナレグミは後にスチャダラパーも参加している音楽ユニット・THE HELLO WORKSのアルバム内で同曲のボーカルを務めた

・TOKYO No.1 SOUL SET + HALCALI(2009年)
ヒップホップにルーツを持つバンド・TOKYO No.1 SOUL SETと女性音楽ユニット・HALCALIによるリミックス作品。元々は自動車のCMソングとして制作されたもので特にリリース予定はなかったが、オンエア直後からかなりの反響が続いたことで後にシングル化となった。実際に2009年の着うたデイリーチャートでも初登場3位と、かなりの好成績を残している

出典 YouTube

・初音ミク(2012年)
2012年に発売されたカバーアルバム「渋谷系 feat.初音ミク」に収録。タイトルからもわかる通り、デジタル世代の歌姫・初音ミクによる新たな挑戦の一つとして、同曲が選出された。カバーということで、彼女は歌だけでなくもちろんラップにも挑戦している

・加藤ミリヤ feat. 清水翔太&SHUN(2012年)
加藤ミリヤのアルバム「TRUE LOVERS」に、男性アーティストの清水翔太とSHUNを迎える形で収録。当時ですでにオリジナルから18年が経過している時点でのカバーリリースだが、Youtubeで公開されたオフィシャルMVは執筆時点で300万回以上の再生回数を記録している

出典 YouTube

そしてもちろん現在も色褪せることなく、『今夜はブギー・バック』は多くのアーティスト、そしてリスナーを魅了し続ける楽曲であり続けている。

ちなみに製作者で元々遊び仲間だったスチャダラパーと小沢健二は、小沢が海外に拠点を移した現在も変わらぬ交流があるという。2010年には13年ぶりとなる小沢健二の全国ツアーにスチャダラパーがゲスト出演し、その後もSkypeを介したトークショーを開催するなど、共演は定期的に続く。

さらにスチャダラパーのBoseは2014年にテレビ出演した際、プライベートでもその距離感は変わらないことを明かした。

「仲が良くて、小沢君からはいまだに毎日のように電話がかかってきます」

出典BOSE(スチャダラパー)/日本テレビ「PON」2014年6月5日

名曲も友達も“その頃”からあるものはずっと、同じ愛情と敬意だった。

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Spotlight編集部 小娘 このユーザーの他の記事を見る

1983年生まれのフリーライター。アイドルと音楽と歴史が好きです。デビューから応援しているアイドルの再評価をきっかけに、新規 / ライトファンを意識したエンタメ記事を日々研究しています。

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