強迫性障害(OCD)という言葉を聞いたことがありますか?現在、日本での明確なデータは存在しないということですが、欧米と同様に人口の1~2%程度、すなわち50人に1人、総人口でいうと100万人ほどの人がOCDを患っていると推定されています。

OCDってなに?

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強迫性障害(OCD)は文字通り何らかの強迫観念に常に駆られていることです。20歳前後の青年期に発症することが多いとされていますが、欧米や日本でも子供のOCDも確認されており、また壮年期になってしまう人もいます。

不安材料を見つけると、強迫観念に駆られて何度でも同じことを繰り返したり、不合理な思考を頭の中で何度も反復させてしまうのがOCDです。一般的にOCDは「不安障害」と呼ばれています。

一般的なOCDの行動は?

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1日に何度も手を洗ってしまうという行為をする人がいます。「まだ汚れている」という不安に駆られて手洗いを何回も繰り返したり、ガスの元栓や電気の確認など消しても「もしかしてまだ消えてないかも」という不安思考が頭に反復し、何度も確認をしてしまったりする人も。

そして戸棚に並べられている缶詰の向きや、ハンガーにかかっているタオルの端が揃っていないと異常に気になり、何度もチェックし向きや角度を確認するという行為も強迫観念がエスカレートしてOCDを引き起こしているのです。

強迫性障害は、脳内の特定部位の障害や、脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどの機能異常によって起こるといわれています。 

セロトニンは、脳内の情報を神経細胞(※)から神経細胞へ伝達する役割を担っています。強迫性障害の場合、神経細胞から放出されるセロトニンの働きに何らかの問題が起こって機能異常が生じ、汚れの認識、安全の確認などといった情報の伝達が十分に行われなくなると考えられています。

※神経細胞・・・情報の伝達と処理を行う細胞

出典 http://www.myclinic.ne.jp

自分をずっと殺人犯だと思い込んでいた女性

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リリー・ベイリーさん(23歳)は幼少期から激しいOCDを患っていました。「自分は殺人者だ」という思考が頭から離れず、自傷行為をしてしまったことも。「自分は悪い人なのかもしれない」という考えが一旦頭によぎると、もうその考えから離れられなくなったとベイリーさんは語ります。

「姉がベッドで寝ていても、自分が姉の呼吸を確認しなければ姉は死んでしまうと思い込んでいました。そして私は姉を殺してしまったと言われるのだ、と。街を歩いていても、知らない子に冗談を投げかけたりしたらそれがCCTV(監視カメラ)に捉えられていて、私は逮捕されて裁判にかけられるのだ、とも思いこんでいました。」

他にも、「水泳中も、プールで偶然誰かの足に当たってしまうと、その人の体には痣ができ出血し、死んでしまう。」「男の子が私をからかえば、私は妊娠してしまい、家族の恥になる。」という究極の強迫観念が常にベイリーさんにあり、精神的にクタクタに疲れてしまうことがしょっちゅうだったそう。

両親の頻繁な喧嘩も精神的なダメージとなった

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ベイリーさんの場合、手を何度も洗ったり電源を確認したりという一般的な「無意味な行為」への強迫行為はさほど強くなかったそうです。行為より強迫思考の方が強く今は離婚してしまった両親の当時頻繁に起こっていた喧嘩も、彼女の思考を悪化させる原因となったと語っています。

「自分の頭の中には常に自分ともう一人の誰かがいた」というベイリーさん。幼少期からずっと「自分が間違ってしてきたこと」のリストは計り知れないと言います。学校生活において、最初は友人たちも気付かなかったそう。「でももし自分が何か間違ったことをすればひたすら謝っていました。誰かを怒らせることでまた心配してしまうからとにかく謝ってた。」

「クラスメートに何か言ったりしたことで、彼らが家に帰って全員首を吊って自殺してしまうんじゃないかという強迫観念もありました。」自分の匂いに気になり出したら止まらなくなったり「みんな私を臭いと思っているに違いない」という考えが頭から離れなかったり…そんな毎日を過ごして来たベイリーさんが、引きこもるようになってしまったのは16歳の時でした。

母に連れられて病院へ。OCDと診断される

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病院ではっきりとOCDと診断を受けて以来、ベイリーさんは週一ペースでセラピーに参加するようになりました。ところがカウンセリングはあまり役に立たなかったようで、飲酒をする日々が続き、自傷行為もしてしまうように。

自分のことがわからなくなって酔った勢いでクラブで見知らぬ女性のバッグを盗もうとし、逮捕され1日牢に入れられたこともあったそう。「自分が生きていればきっとまた何か悪いことをしてしまう。それなら生きていく意味はあるのか」そう思ったベイリーさんは自殺を決意。「死ぬことよりも生きていく方が怖い」そしてピルの過剰摂取をしてしまったのです。

その頃、アイルランドのダブリンで親元を離れ生活していたベイリーさんは、ルームメイトに助けられ一命を取り留めました。心配した両親に連れられて実家に帰った時に「私はこんなに愛されていたんだ」と知り、それ以降はほんの少しずつ、ベイリーさんのOCDの症状は良くなってきたそうです。

恋愛もうまくいかなかった…

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少しずつOCDの症状が回復したとはいえ、まだまだベイリーさんの中にはUP&DOWNの思考がありました。恋愛関係になった男性もいましたがキスをしながら「お前なんか死んでしまえ!大嫌いだよ!」という気持ちが湧いたりと、自分の中での感情のコントロールも難しいと感じるベイリーさんに、相手もやはり限界があったようです。

そう思いたくないのに思ってしまうという気持ちの葛藤を常に強いられるOCDを患う人は、きっと精神的に日々相当な苦痛を与えられていることでしょう。ベイリーさんは現在23歳。紆余曲折を経て、ようやく回復の兆しが自分でも見えると語っています。

「強迫観念は永遠には続かない」

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「強迫観念は永遠には続かない」と信じることが大切だとセラピストは話しています。自分に生じた恐怖や不安をうち消すのではなく、「向き合う」スキルを身に着けること。これが大切なのだと。

現在、ベイリーさんはモデルの活動をしているそう。自分に自信を持つその姿勢からはOCDに苦しんで来た女性とは思えないほど。「自分でもよくここまで回復したと思っています。でも、未だに自分で鏡を見ることはあまりしないようにしているの。『私って綺麗でしょ』って自分で思ってるんじゃないの、って思う人がいるっていう気持ちになってしまいそうだから。」

今、人生が一番充実していると感じるベイリーさん。長い間、苦しんで来たOCDから解放された彼女は、きっとモデルとしても輝き続けていくことでしょう。OCDには「永遠には続かない」そう信じ、向き合う気持ちを持つことが何よりの特効薬なのではないでしょうか。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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