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――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ

南極上空のオゾンホールが回復の兆しを見せている。6月30日付の英「BBC News」が報じた。

同日に学術誌「Science」に掲載された論文によると、2015年9月に観測されたオゾンホールは、2000年時点より400万平方キロメートル(インドの面積と同じくらい)小さくなっていたという。

この論文を発表した研究者らによると、オゾンホールの縮小は「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の成果だという。

■世界中の国が協力した大いなる成果

地球の成層圏にはオゾンの多い層(オゾン層)が存在し、太陽からの紫外線を吸収して地表の生態系を保護する一方、地球の気候形成にも大きく関わっている。

しかし1980年代、南極上空でオゾンの量が著しく減少し、オゾン層に穴が空いたような状態になる現象(オゾンホール)が観測されるようになった。

その後、オゾンホールの原因はフロン類などの塩素や臭素を含む化学物質であることが判明。

フロン類は成層圏の上部で紫外線により分解され、オゾン層を分解する触媒となる塩素原子を生じるのだ。この問題に対処するため、1987年に「モントリオール議定書」が採択され、世界中で製造や使用が規制されるようになった。

今回の論文はオゾンホールが形成される時期が遅くなり、穴自体も小さく浅くなってきていることを示したが、著者らによれば、これは全世界的なフロン類の規制による成果であるという。

20世紀末までに放出されたフロン類が未だに大気中に多く残っている上、オゾン層の回復ペースも遅い。しかし、オゾン層は21世紀半ばには完全に回復すると著者らは述べている。これは世界中の国が協力して問題解決に取り組んだ、大きな成果である。

■火山の噴火がオゾン層を破壊していた!?

ところで、オゾン層破壊の要因はフロン類だけではない。今回の論文では、オゾンホールと火山噴火の関係も明らかになった。2015年10月には過去最大のオゾンホールが観測されたが、その原因はチリのカルブコ火山の噴火にあったという。

なぜ火山の噴火がオゾン層を破壊するのか?

理学博士X氏に解説してもらった。

南極でオゾンホールが発生する原因の一つは、『極成層圏雲』とよばれる成層圏にできる特殊な雲です。

この雲は、極地や高緯度地方の冬によく見られ、太陽の光を受けて虹色に輝くことから『真珠母雲』とも呼ばれています。火山の噴火によってばらまかれた微粒子が、この雲の発生を促進したと考えられます」

X氏の解説によると、オゾン層を分解する塩素原子は、成層圏下部においては塩化水素や硝酸塩素といった比較的安定した化合物として存在するという。

しかし、「極成層圏雲」の発生により、それらの安定した化合物から再び塩素分子などが生成される。冬の間蓄積された塩素分子は春になると融解し、太陽光によって分解されて塩素原子を生じてオゾン層を急激に破壊してしまうのだという。

■オゾンホールの脅威は南極や北極だけではない!

ところで、「極成層圏雲」によるオゾン層破壊は南極や北極以外の場所でも起こりうるという。

「近年、夏場に発生する巨大な嵐によってオゾン層が破壊される可能性が指摘されています。嵐によって成層圏に吹き上げられた水蒸気が、塩素原子の生成を促進する可能性があるのです」

温暖化によって増えた、巨大な台風やハリケーンが、オゾンホールの原因になりうるというのだ。幸いなことに、これまでのところ極地以外の場所でオゾン層を破壊するほどの塩素原子が観測されたことはないという。

しかし、過去に放出されたフロン類が無害化するまでには、まだ50~100年かかるといわれている。

オゾンホールが縮小しているとはいえ、その脅威はまだ近くにあるのかもしれない。

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出典:BBC News
出典:Science

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