7月7日(米現地時間)の夜、筆者が住む街ダラスで、とても悲しい事件が起こりました。携帯電話に飛び込んで来たニュース速報の内容はあまりにショックが大きく、眠ることはできず早朝までライブのニュース映像に釘づけになりました。

日本でも大きく報道された、あの「米ダラス警察官銃撃事件」です。発端になったのは、ルイジアナ州とミネソタ州で起こった”白人”警官が”黒人”を射殺したという事件でした。全米各地で抗議のデモが予定され、7月7日の夕方からダラスでも、1000人規模のデモ行進が平和裏に行われていました。

和やかに白人も黒人もなく・・・

デモ隊の多くは黒人でした。しかし、ダラス市警には白人、黒人、メキシコ系やアジア系などいろいろな人種の警官がいて、みなが全力でデモ隊の安全を守るため警護していました。左の写真が、それを象徴しています。

デモ隊が、ダウンタウンを通過している最中、それは起きました。突然響く銃声。デモ隊の人々は悲鳴をあげながら逃げ惑いました。そして現場は一瞬で混乱と恐怖に包まれたのです。


目撃者が撮影した現場動画

事件発生直後の動画。デモに参加していた一般人が撮影しています。

普段はビジネスマンらが行き来する市街地は、警察の特別機動隊(SWAT)や爆発物処理班が次々と駆け付け、騒然とした雰囲気に。幼い子供を抱えながら必死に逃げる母親の姿もあった。

犯人は警官に向けて自動小銃を撃ち、警官は拳銃で応戦していた」。目撃者の男性は地元テレビの取材に、興奮した様子で語った。 集結したパトカーが発する赤と青に点滅する光が周囲を照らす。車体を盾にしてしゃがみ込む警官ら。防弾チョッキを着た警官が、銃口を動かしながら警戒する。

出典 http://www.nikkei.com

銃声が飛び交い、そこはまさに戦場でした。

そして、明らかにターゲットとされた警官10人と一般人2人が銃弾を浴び、ダラス市警の警察官4人とダラス高速運輸公社 (Dallas Area Rapid Transit)の警察官1人が帰らぬ人となりました。


黒人も白人も関係ない!殉職した警官の死を悼む同僚や肉親たち。

全米を震撼させた今回のおぞましい事件。ダラス警察を率いるのは、ダラス市警デイビッド・ブラウン署長です。彼は写真を見てわかるように黒人です。

彼がダラス市警の署長になってから、警官による発砲件数は2012年の23件から2015年には11件まで減少しました。

ダラス警察のデイビッド・ブラウン署長

出典 http://www.nydailynews.com

ダラス市はBig Dと言う愛称で呼ばれ、120万人の市民が暮らしています。隣接するフォートワース、そして近隣の街を合わせると人口は500万人を超すという全米5位のメガポリスです。

ブラウン署長は、そのメガポリスの中心ダラスの治安を良くするために、大変な努力をしてきました。

彼が赴任して以来、努力の甲斐あって、犯罪率は減少し、市民と警察の関係も良好だと言われていました。ですから、身内とも言える警官5人の命が奪われたことは、署長にとっても、計り知れないほど大きなショックであったと言えます。

しかし、ブラウン署長にとって、実は今回が身内を銃によるバイオレンスで失うことは、初めてではなかったのです。

1988年、長年パートナーだったWalter William警官が、通報でかけつけた住民の家で頭を撃ち抜かれ命を奪われました。

1991年アリゾナ州フェニックスで、署長の弟Kelvin Brownさんが、麻薬ディーラーの手で同じく頭に銃撃を受け亡くなりました。

故Walter Williams 警官

出典 http://www.odmp.org

悲しみの連鎖は続きます。

2010年、ブラウン署長はダラス市警の署長として就任しました。

そのわずか7週間後のことです。息子のDavid Brown Jrが、共犯者とともにダラス郊外ランカスター市で警官と市民を銃撃し殺害。その後警官の手によって射殺されました。奇しくもこの日は父の日でした。

David Jr.は躁うつ病を患っていました。息子が犯した罪に心を痛めた署長は、何度も何度も2人の被害者の家族のもとを、公人としてではなく、ひとりの父親として訪れていたそうです。

David Brown Jr.

出典 http://www.nydailynews.com

悲しみの中黙とうするブラウン署長

出典 http://www.jiji.com

写真は8日、黙とうするダラス警察のデイビッド・ブラウン署長。

銃撃が続く中、市民を守る警官の姿

出典 http://abcnews.go.com

カメラマンの安全を守るために、この警官は、自らの体を盾にしていました。

フリーランスのカメラマンRobert Mooreさんは、デモの撮影のためダウンタウンを訪れていました。銃撃戦が始まった後2時間に渡り駐車場に停めてあった車の陰に身を潜めていたと言います。その間ずっと彼の前で銃を構え、自らが盾になり、Mooreさんを守った警官の姿が写っています。

悪い警官は確かにいます。でも、市民の身と安全を守るために、日夜体を張って任務についているすばらしい警官の数がはるかに多いのは事実です。黒人だから、警官だから・・・●●だから、〇〇だ。そんな考えで続く報復、悪の連鎖を早く止めなくてはいけません。

銃によって信頼するパートナー、そして弟の命を奪われ、息子は銃によって罪の無い2人の命を奪い、そして最後は、銃によって命を奪われました。

そして、今回の銃撃で尊い5人の警官の命が奪われました。

銃によるバイオレンスによって不条理に肉親を失った家族の悲しみ。銃社会の悪の連鎖。それらを身を持って知っているブラウン署長の今後の対応に注目したいと思います。

ダラスは負けない!ツイッターではハッシュタグ#DallasStrongで、ダラスにエールを送る声が相次いで投稿されています。ダラスはブラウン署長率いる警察官たちと善良な市民によって、守られ、これからもっと安全で、人々が平穏に暮らせる街であり続けて欲しいと切に願います。

次々と市民が献花に訪れて・・・

出典 http://www.nytimes.com

市民の安全を守ってくれる警察官のみなさんに心から感謝。

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公式プラチナライター。テキサス州在住。料理研究家でフリーランスのコラムニスト

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