記事提供:しらべぇ

「日本会議」という団体をご存知だろうか?

安倍政権の閣僚のうちおよそ8割がその影響下にあるだけでなく、「日本会議議員懇談会」という議員連盟を通じて与野党を問わず300名近い政治家に食い込む「日本最大の右翼団体」だ。

しかし、一部の週刊誌などをのぞき、その活動や実態が大手メディアに取り上げられることは多くない。

■その実態に迫るルポルタージュが話題に

そんな中、今年4月に出版された新書『日本会議の研究』が、話題を呼んでいる。すでに5刷、14万6千部を出版するベストセラーだ。

著者である菅野完氏(42)は、2013年に著書『保守の本分』を上梓し、自ら保守派・右翼を自認する。一方で、かつてはヘイトスピーチへのカウンター勢力「しばき隊」としても活動を行なっていた。

「日本最大の右翼団体」とはいえ、会員数は3万8千人ほどの組織が、なぜ政権や議員たちに強い影響力を持っているのか。しらべぇ取材班は、菅野氏に話を聞いた。

■日本会議は「肉まん」のような二重構造

菅野:日本会議、その中核である日本青年協議会や安倍政権のブレーンでもある伊藤哲夫氏が率いる日本政策研究センターは、1960〜70年代に名を馳せた、新興宗教「生長の家」学生運動を源流としています。

生長の家はGHQによる占領期が終わった後あたりから、活発な政治運動を展開します。

その過程で、70年安保の時代に勃興した左翼学生運動に対抗すべく「生長の家学生運動」が組織されます。

玉置和郎や村上正邦など、有力な政治家を輩出するまでになった生長の家の政治運動ですが、その絶頂期とも言える1983年に教団の路線変更から、突如、終焉を迎えます。

しかし、教団の意に反し、その後も「生長の家政治運動」を諦めなかった分派がいた。その人たちが今の日本会議の中心的なメンバーです。

この集団は、昭和憲法を否定するあまり「改憲」ではなく「反憲」をテーゼとしているだけでなく、個人崇拝の傾向があるなど、かなりカルト的な性質を持っている。

これが肉まんでいう「肉」だとすると、そのまわりに佛所護念会教団や崇教真光、神道政治連盟などが集まって「餡」となっています。

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菅野:「肉」の部分は過去50年変わっていない、もしくは若干縮小しているくらい。餡を取り巻く「皮」の部分が、いわゆるネトウヨ(ネット右翼)など有象無象の人たち。

メディアの責任もありますが、拡大しているのはこの皮のところ。ネトウヨだけでなく、ごく常識的に見える普通のおじさん・おばさんも含まれている。

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■思想の左右より「おっさんメンタリティ」が強さの秘密

菅野:日本会議が展開してきた活動は、大きく分けて、「天皇陛下御在位20年奉祝運動」や「海上自衛隊掃海艇部隊激励運動」などの「奉祝運動」と、何らかの法律や条例を作ろうという「法制化運動」の2つに分けられます。

後者の「法制化運動」で彼らが今でも「成功事例」として固執するのは79年に法制化を実現した「元号法制化運動」です。

しかし、それ以降の法制化運動はむしろ「自分たちの主張と反する内容の法制化運動に反対する」ものばかり。

その対象を見てみると、男女共同参画社会や選択的夫婦別姓、子供の権利条約といった、いわゆる「女子供の権利拡大」への反対なんです。

つまり、「女や子供は黙ってろ」というミソジニー(女性嫌悪)やマチズモ(男性優位主義)が根底にある。

こうした、「権利を主張する女性への嫌悪」や「女子供は黙ってろ」という態度は、「日本のおっさん」のメンタリティそのもの。

これは思想的陣営にかかわらず、日本社会に根深く浸透しています。メディアもその例外ではありません。

日本会議が打ち出すテーゼは、日本人の心に深く根ざしているものを、代表してしまっているんですね。

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■初当選から日本会議べったりの安倍首相

菅野:安倍首相の著書といえば、2006年に出された『美しい国へ』がよく知られていますが、じつはその元となった初の著書が1996年、安倍氏にとって2回目となる総選挙の公示日に出版されています。

栗本慎一郎氏、そして、「日本青年協議会」の幹部でもある衛藤晟一参院議員との共著で、『保守革命宣言~アンチリベラルへの選択』。

この本の奥付には、先述した「日本政策研究センター」の名が記されている。安倍首相の議員人生には、ずっと日本会議周囲の人脈が併走していると言っていい。

こんな総理大臣は、これまでにいません。自民党が野党時代の2012年に発表した「憲法改正草案」も、日本会議の主張そのものです。

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■ミソジニーとマチズモが憲法草案の怖さを他人ごとにする

菅野:日本会議が「9条改訂」よりも優先しているのは、自民党草案でいう99条「緊急事態条項」と24条「家族条項の追加」です。

これには、「非常時には女子供は黙ってろ」「自立した男女の意思ではなく家族が優先だ」といった女性嫌悪の思想が垣間見える。

日本国憲法で規定されている「国民の義務」は、勤労・納税・教育の3つ。しかし、自民党草案には30以上の義務が記されていて「憲法は国民が権力を縛るためのもの」という立憲主義に反しています。

米国やドイツの憲法は、たしかに何度も改正・修正されていますが、「権力の制限と権利の拡大」という方向性は一貫している。

自らの権利が抑制される危険性があるにもかかわらず、ネトウヨや普通のおじさん・おばさんが自民党憲法草案やその背景にある日本会議の憲法観を恐れないのは、

「権利を主張する女子供を黙らせられるなら大歓迎だ」というミソジニーとマチズモがあるからではないでしょうか。

また、「改憲と言えば9条を狙ってくるに違いない」と思い込んでいる頑迷な左派陣営も同じです。

思い込みを排除して自民党や日本会議の言ってることを見れば、9条が狙いじゃないのがわかるはず。

しかし「女性の権利が脅かされようとしている」「連中が狙っているのは人権そのもの」という点にいつまでも気付けないのは、左派も頑迷なまでにミソジニーとマチズモに染まっているためでしょう。

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■国民は「改憲」とどう向き合うべきか?

菅野:今度の選挙によって与党を中心とした改憲勢力が参議院の2/3を占めた場合、衆議院ではすでに2/3を確保しているので、憲法改正の発議をすることができます。

その結果、おそらく日本会議の影響が強い自民党草案を中心とした議論になる。

それをよしとしない人たちが立ち向かうとしたら、もはや「路上での反抗」しか手段がないと思う。「路上がいい」んじゃない。

メディアがこの問題を正面から取り上げないので、「最後のメディア」が「路上」だ、ということです。

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