2013年に南アフリカ共和国出身のブレードランナー、オスカー・ピストリウス(29歳)は当時交際していたモデルのリーヴァ・スティーンキャンプさん(享年29歳)を銃で殺害したとして起訴されていましたが、6日、6年の実刑判決を受けました。

世界的に有名だったブレードランナー、ピストリウス

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先天性の障がいにより生後11か月の時に両足を切断してからは、義足で生活して来たピストリウス。母親のサポートもあって10代になるとスポーツに意欲的にチャレンジするように。最初はラグビーに興味を持ったピストリウスですが、アスリートとして次第にその才能が開花。

オリンピックやパラリンピックにも出場するなど優秀な「ブレードランナー」として、母国の南アフリカだけでなく世界的にもその名が知られていました。世界記録の保持者として障がいスポーツの印象を覆してしまうほどの目立った活躍をしていたピストリウス。そんな彼の人生が転落したのは2013年のことでした。

モデルの恋人、リーヴァ・スティーンキャンプさんを殺害

A Pistorius-ügy - mi történt valójában?
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2012年に知り合ったモデルのリーヴァさんと交際をしていたピストリウス。南アのプレトリアの自宅で2月14日にリーヴァさんを殺害したとして逮捕されました。リーヴァさんも同じく南ア出身で、14歳の頃からモデル活動をしており、活発で明るい性格、そして法学士号を取得して大学を卒業するという才色兼備の彼女はモデル業界でも人気者でした。

侵入者だと勘違いし、リーヴァさんと知らずに発砲と主張

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ピストリウスは「義足を外して寝ていたら、物音がしたために侵入者だと思った。窓が開いていたので誰かが入ったと思い、浴室で物音がしたために最初は銃を構えて義足無しで出て行けと怒鳴った。慌てて寝室に戻り義足を着けて浴室に向かって発砲した。リーヴァだとは知らなかった」とあくまでもミスによる発砲だと裁判で主張。

その後浴室のドアをクリケットバットで打ち破り見てみると、頭部と腕を撃たれて血だらけになり横たわっているリーヴァさんの姿があったと説明。息があることがわかったので警察に通報し、救命措置をしたもののリーヴァさんは帰らぬ人となってしまったというのがピストリウスの証言でした。

苦しい言い逃れで罪を軽くするのが目的か…

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リーヴァさんは自分の隣に寝ていると思っていたというピストリウスですが、だとしたら何故気付かないのかという点で矛盾。「怪しい物音に気付いて」義足を取りに寝室へ戻っているわけですから、リーヴァさんがそこにいるかいないかはわかるというもの。血まみれで倒れていたリーヴァさんは、頭、腕、下半身と3か所銃弾が命中していたそう。ところがピストリウスは無罪を主張したのです。

法廷で検察官が殺害写真を公開すると泣き崩れたピストリウス

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検察官はピストリウスに「この写真を見て罪を認めなさい」と迫りましたが、ピストリウスはその時の状況が頭に浮かぶのか、号泣してリーヴァさんが頭部を撃たれた写真を見ることを拒否したものの、その後「私が彼女を撃ちました」と証言。ところがあくまでも「事故であり殺意はなかった」と主張。

同情を引くためか、義足を外し証言台へ…

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このシーンはイギリスでもかなり注目されました。「障がい者にこんな残酷な殺人ができるわけがない」ということを主張したかのような演出ともとれるピストリウスの義足を外してわざわざ証言台に立った行為は、逆に世間の批判を浴びる結果に。

ピストリウスの姉は「刑務所に行けばきっとみんなによってたかってレイプされてしまう。どうかお慈悲を」と懇願していたようですが、障がい者であっても健常者であっても、殺人という罪を犯したのならば償わなければいけません。

裁判では検察側が、ピストリウスが以前にライフルでスイカを撃って「人の脳より柔らかい」と興奮していた様子が写ったビデオを公開し精神的に問題があることを指摘。普段うつ病の薬も飲んでいたというピストリウスが、何らかの原因でリーヴァさんと口論になりカッとして射殺してしまった可能性は否定しきれず、「知らなかった」では済まされない状況ということで、これまで様々な角度からこの事件の検証が行われてきました。

男性社会がはびこる南アフリカ

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この事件では深く掘り下げられることはありませんでしたが、被害者、加害者共に南アフリカ出身者。実は南アフリカは36秒に1人がレイプ被害に遭っているといわれるほど、女性への暴力が絶えない国なのです。

南アフリカに住んでいる女性全体の3分の1がレイプなどの性暴力の被害に遭っています。酷い場合には人生を通して何度も被害に遭うことも。2週間でレイプの被害がなんと2万4千件以上もあるという南アフリカ。

男性の40%が日常的に女性に暴力を振るうという現状。それは夫や恋人、兄弟、親戚、友人など知り合いからの暴力も含めて4人に1人が「女性をレイプした経験がある」と南アフリカ医療研究審議会(Medical Research CouncilーMRC)の調査で判明しているのです。

月に約6万人の女性と子供が家庭内暴力の被害に

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世界保健機関(WHO)の調査では南アフリカの人口5千万人のうち、年間約72万人の女性と子供が被害を受けていることもわかっています。そして女性殺害率としては世界でなんと第4位にランクイン。いかに女性が虐げられて命を奪われているかがわかるというもの。

この背景には、南アフリカの男性主義社会があるとされています。貧困が不平等や性差別を招き、更にはギャングにより銃が蔓延し、薬物などの犯罪とも背中合わせとなっているといった現状。白人と黒人が混合している南アフリカでは過去20年間、社会背景は変わっていないそう。そして恐らく女性への暴力は増加しているのでしょう。

銃で女性を虐げ、暴力を振るうことが男性権利の南アフリカ

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ピストリウスは過去にも19歳の女性への暴行容疑で警察に逮捕されているそう。そして複数の銃の所有をしていたことでも普段から女性への奢った態度が垣間見れるようです。リーヴァさんも何度か警察にピストリウスの暴行を通報していたという事実もあるために、今回の殺害事件は「強盗だと思った」という言い逃れは通用しないのではと世間は考えています。

6年という実刑判決を受けた今、何を思うのか…

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南アフリカで起こる犯罪は、女性が泣き寝入りをするケースがほとんど。犯罪被害に対する支援活動自体がほとんど存在しないために、弱い法律では女性や子供への暴力は到底守りきれないという声も。古くからの悪しき文化や慣習の為に、女性への蔑視や軋轢が未だに色濃く残る社会、南アフリカ。

このほど、ピストリウスもそんな国での裁判故に温情判決が下されると思っていたのでしょうか。6年という実刑判決ですが、リーヴァさんの家族にしてみれば到底満足できる年数ではないはず。殺人罪でこの年数というところにも、南アフリカの男権社会が垣間見えてしまいます。

時折、頭を垂らして目頭を押さえるピストリウス。彼は今、自分の罪にどう向き合っているのでしょうか。栄光を掴むはずだった「ブレードランナー」としての輝かしい人生。走る速さの世界記録は自身の犯罪記録となって、彼の生涯に刻み続けることでしょう。

そして大切なことは、南アフリカの女性がこの事件がきっかけとなって、少しでも女性に対する暴力犯罪が減少することを訴えてはいるものの、未だに女性と子供への犯罪事件は後を絶たないという現状。

今回の事件が世間の関心を集めるニュースではあっても、対応策に関しては何もできないという悲しい南アの体制に、今後も多くの女性や子供が絶えていかなければならないのかと思うと、同じ女性としてもその現実の厳しさに国の在り方を思わずにはいられません。

出典 YouTube

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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