ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました。

先日、大阪府警において2270件の事件の捜査と証拠品が放置されていたことが明らかになりました。この2270件の中には、全体の約4分の1になる503件もの殺人や強盗、強姦などの重要犯罪も含まれており、世間では批判の声があがっています。

このような事態は警察内部においてよくあることなのか、現場の話を聞きたいと思ったSpotlight編集部は、元兵庫県警の刑事で映画「日本で一番悪い奴ら」のトークショーにも出演された飛松五男さんにお話をうかがってきました。

今回発覚した大阪府警の話は「あくまでも氷山の一角」

飛松さんは、兵庫県警に所属していた40年のうち36年を捜査部門で過ごし、定年退職後も重大事件の解決に貢献しています。現職の頃から一貫して現場主義を通しており、警察を愛するが故に内部で起きている不正に対して厳しい目を向け続けているのです。

そのため著書やメディアでも、たびたび自身が経験した警察内部の不正行為を暴露しています。今回のインタビューでも赤裸々に語って下さいました。

「証拠品の紛失・廃棄は日常茶飯事」

ーー飛松さんは兵庫県警にいらっしゃったということで、今回不祥事が起きた大阪府警の近くで勤務していたんですね。

飛松:そうです。近くの警察にいましたし、そういった事案(証拠品や捜査の放置)が日常的に起きていることを僕は知っていますから。今回はたまたま大阪府警の不祥事が発覚しましたが、あくまでも氷山の一角です。本当は全国区で同じようなことが起きています。

なぜ今回大阪府警の不祥事が発覚したのかというと、警察のOBの記者が堺や高槻で起きていた警察の不祥事を追っていたんです。その追跡の過程で、警察の焼却炉の前に証拠品が置かれているのを見つけたために事が明らかになりました。

警察が証拠品を無くしたり、廃棄したりするのは日常茶飯事。立派な犯罪ですよ!ただ世間に知られていないだけのことです。僕が具体的な事例を知っているのは兵庫県警と大阪府警ですが、仕事で他府県を訪れた際にも同様の話は耳にしています。

ーーええ!?なんで大事な証拠品を捨ててしまうんですか?

飛松:捜査しなきゃいけなくなるからですよ。あと「十分に捜査している」なんてよく言ってるけど、あれも嘘。大きな事件で捜査本部が立ち上がっている場合でも、ちゃんと捜査しているのはせいぜい1ヶ月です。特捜部でも人がたくさんいるのは、大体3ヶ月ですよ。殺人事件には時効がありませんから、なおさら捜査したくないんでしょう。

飛松さんが見てきた許せない捜査上の怠慢

明らかに事件性のある証拠品を紛失

ーー飛松さんが知っている事例を教えて下さい。

飛松:2005年に姫路で起きた女性バラバラ殺人事件では、本当にひどいことがたくさんありました。事の発端は、ある女性教師が姿を消したことでした。当然、親御さんは警察に捜査を依頼しましたが、姫路警察署は「事件ではなく失踪だ」と捜査をしませんでした。(飛松さんは当時兵庫県警本部の運転免許課に勤務していましたが、警察は捜査をしてくれないと判断した被害者の親御さんが、すがる思いで飛松さんに事件の調査を依頼したのです。)

ーー少し調べましたが、被害者のご家族に警察がとても冷たい対応をしていたそうですね。

飛松:そうなんです。警察署が捜査をしていなかったから、僕が全部現場から証拠品を集めてきたんです。全部押収して提出したのに、警察に無くされましたよ。

明らかに事件性を疑うべき事案なのに、兵庫県警は「被害者は生きている」という主張を続けたんです。

さらに犯人を突き止めたのは僕なのに、裁判では聴取は一切されませんでした。警察のメンツを優先してのことでしょうね…。

ーーあまりにも証拠品の扱いがずさんですね…。

飛松:今でも警察は証拠品を捨てています。警察の焼却炉に行けばいっぱいありますよ。1ヶ月張り込めば、必ず見つかります。

盗撮被害にあった女性の映像を…

飛松さんは、この証拠品や書類の取り扱いに対する、許しがたいエピソードを話してくださいました。

中でも、交番勤務の警察官が被害届を提出せずに机に入れっぱなしにしていた、盗撮被害にあった女性の映像を当直中の警察官が私欲で鑑賞していたなどのエピソードは、怒りを通り越して悲しくなるものでした。

被害届が警察署に提出されなければ、捜査自体がされません。つまり、被害者の訴えを見殺しにしていたとも言えます。また提出しないことで、事件数の分母自体を減らし検挙率を上げる狙いがあるとのこと。

さらに証拠品だけではなく、書類を警察署が紛失していたケースもあるそうです。飛松さんが過去に逮捕した容疑者が、別件で逮捕された際に逮捕履歴がついておらず、検察庁から照会がかかったことがありました。飛松さんはもみ消しを疑われるも、書類提出時の控えを持っていたため、警察署による書類紛失が発覚したのです。

さて、ここで気になるのが“本来の”証拠品の取り扱いルールと、時効になった事件の証拠品はどうなるのかについてです。

「忙しくて引き継ぎができなかった」はウソ

ーー今回の大阪府警の不祥事が起きた理由として、異動時に忙しくて引き継ぎできなかったと報道されているんですが、本来の引き継ぎの様子やルールはどのようなものなんでしょうか?

飛松:警察官が忙しかったから、異動時に引継ぎができなかったなんて言っているようですが全くの嘘ですよ。証拠品もなくなるはずがないんです。そもそも異動のサイクルが、巡査部長以下は10年ごと、警部補は5年ごと、警部は2年ごとという目安があります。そして異動の際には最低1週間前までに内示があるんです。この期間が設けられているのは、引き継ぎをはじめとする事務処理をするためですから。

ーー引き継ぎ期間はきちんと設けられているんですね。証拠品の保管ルールについてもお聞きしたいです。

飛松:証拠品は出し入れする際に、都度書類の作成と捺印が必要なんです。証拠品は押収した後、警察署の会計の保管庫に保管されます。取り調べなどで証拠品が必要になった時は、規定の書類に捜査部門の上司、実際に証拠品を引き出す人、会計の責任者の捺印をした上で保管庫から出してもらうんです。

使い終わったら、当然保管庫に戻さなければいけませんから、引き出した時と同じように捺印をして会計に保管してもらいます。複数の人間がチェックに入っているわけですから、なくなるということはありえません。

ーー厳重ですね…。事件が時効になった場合は、証拠品の扱いはどうなるんですか?

飛松:事件が時効になった場合は、捜査書類と証拠品を確実に検察庁へ送らなければいけないんです。最終的に処分を決めるのは検察庁なので。

今回の不祥事を公にした大阪府警の信じられない「真意」

ーーそれにしても、なぜこのような不祥事を大阪府は公表したのでしょうか?今までの話からすれば、隠蔽してしまってもおかしくないと思うのですが。


飛松:それは警察の予算と人員を確保するためですよ。本来は警察の落ち度になるわけですから、マスコミに公表すること自体、本来は避けたいことなんです。しかし、警察だとこういった不祥事があっても誰かが責任をとって処分をされることはないんです。

各警察が新しい建物を建てるための予算や、人員を確保したいがために今回は大阪府警の件を利用しているんです。「忙しくて人員が足らないからこんなことになった」「きちんとした保管場所がなかったから」と。

さっきも話しましたが、異動の時期はある程度決まっている上に、引き継ぎ期間は設けられているのだから、今の人員でも証拠を引き継ぐことはできます。そして証拠品を管理する倉庫だって、そうそう大きい証拠品というのはないのだから新しい建物が必要なわけではありません。覚せい剤が何トンも押収されるのであれば話は別ですけど、そんなことはないでしょう?

ーー逮捕者が所持しているのも数グラムのケースばかりですからね。

数グラムのために大きな建物はいらないですよ。いまの警察署の倉庫は温度管理もきちんと行われていて、証拠品が劣化しない立派な設備が既にあるんです。

ーーでは、大阪府警にとっては不名誉なことではあるけど、警察全体の予算や人員増の足がかりにはなるから、あえて公表しているということですか…。


飛松:そうです。むしろ大阪府警が犠牲になってくれたおかげで、予算と人員が確保できると喜んでいますよ。

ーーまさに真実は小説よりも奇なりですね。

飛松さんの警察への想い

ーー飛松さんが現職で働いていた時と、警察の様子も様変わりしていると思いますが率直なお気持ちを聞かせて下さい。

飛松:警察というのは、昔でいうところの岡っ引きです。つまり犯人を捕まえることが仕事。

事件を解決するための逮捕なのに、証拠品をなくす、捨てるなんて言語道断ですよ。僕が現職の時は、証拠品を我が子のように大切に扱っていました。紛失・廃棄なんてクビになる時代でしたから。

今じゃ「証拠品をなくしました」と悪びれもせず堂々と言う。ありえませんよ。もし、その証拠品の持ち主が亡くなられていたら、ご家族にとっては遺品であり形見でもあるわけです。

ご家族にとっては亡くなった方との思い出があるじゃないですか。証拠品がどんな物であろうが、ご家族にとって大切なもの。だからこそご家族に返さなければいけないのに、そういったものまで無くしている、捨てているということを今回皆さんに知っておいて欲しいんです。

ーーなぜ不祥事がなくならないんでしょう?

飛松:結論から言ってしまえば、不祥事が起きるまでの経緯や手口、何が問題なのかについて検証しないからですよ。検証した場合には上層部から下の人間まで、また署名捺印しなきゃいけません。その手続きを面倒に思う、責任を取りたくないと考えているから検証しないでなぁなぁにする。

ーーそれは職務怠慢になりませんか?

飛松:おっしゃる通りなんです。こういう話をするとキャリアの警官が黒幕であるとイメージされがちですが、実際は違いますよ。ノンキャリアの警官がキャリアの警官を騙すんです。キャリアの人が所轄署に来る時は、事前に行くと伝えてから行きますから、都合のいい部分しか見せられていない。アポなしで行くと、色々見つかりますよ。

警察内部で自浄作用が働かない限り、こういった問題は今後も続くでしょう。正義のために頑張る人を悪者にしないで欲しいです。

ーー普段の生活では知りえないことをたくさんお話して下さった飛松さん。正義感がとても強い方だけに、元身内である警察の不正行為に大変お怒りのご様子でした。かつてはごく一部の警官による不正行為だったものが、現在ではその規模が拡大していることに警鐘を鳴らしています。

また、真面目に働いている警察官の存在を知っているからこそ、自浄作用を働かせよという警告は、警察の本来あるべき姿を若手から作っていってほしいというメッセージに思えました。

飛松さんの今後の活動にも注目していきたいと思います。

<取材・文/横田由起>

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