合コン、婚活パーティーに相席バーと、素敵な女性との出会いを求めて日々黙々と活動してきた冴えない三十路独身男たる僕なのですが、結果は目も当てられぬ惨敗続きの黒歴史、なんとも情けない体たらく、今世で女性と付き合うのは無理なのかもしれん、とボロマンションの狭い一室で絶望しておったのです。

(こうなりゃ、出会いアプリでも使ってみようかな)

スマホをいじってサイトを眺めていると、「趣味が合う人と出会える!大手企業が運営で安心!サクラなし」そう表示されていた出会いアプリを見つけた僕は、料金や評判を入念に調べ、そのアプリを登録したのでした。

出会いアプリの仕組みって?

登録したアプリの売りは「趣味が合う人と出会える!」という事です。ドライブ好き、アウトドア派、ランニング好き、旅行好き、映画好き等々、様々なカテゴリーの中から自分と同じ趣味嗜好を持つ人を選択出来ます。

まずカテゴリーを選び、女性のプロフィール画像、自己紹介文を閲覧します。そこで「いいね!」「いやだ」の二択どちらかを押すボタンが表示されており、「いいね!」を押すと相手に通知が送られ、女性からもOKが出ると見事にカップル成立し、メッセージ交換がそこで初めて可能になります。

サイト登録自体は無料でありますが、女性を選ぶ際に「いいね!」「いやだ」を押すためには「カード」が必要です。そのカードはログインすると一日に20枚、自身の細分化されたプロフィール欄を埋めると1枚ずつ加算されます。カードが足りなくなると、別途お金を支払い購入しなければなりません。正直すぐにカードは無くなってしまいます。また、女性とメッセージ交換するには有料会員になる必要があります。一か月、三か月、半年契約、と値段が設定されており、期間が長くなればなるほど割引率が大きくなります。僕は一か月で三千円のコースを申し込みました。

高度資本主義、登録は無料ですが結局、なんだかんだ金はかかるんです。見事なシステムだと感心します。

どんな女性が登録しているの?

僕の場合、趣味というか一番興味あるのは「純文学、小説」「夏目漱石好き!」なるカテゴリーを探しますが、全然見当たりません。ダーツ、ビリヤード、ボルダリング、ランニングと最近若い世代に流行っていそうな趣味の枠ならありますが、僕は全く興味がありません。生まれた時代を間違えたのかもしれません。文学書生気質の若者が多かったであろう明治後半から大正時代にこのアプリが誕生していたら、僕だってモテたかも知れませんが、残念ながら時は平成、心に暗雲が広がります。

サイト登録直後は新規登録ボーナスとばかりにカードが振る舞われます。僕はさっそく女性のプロフィール画像と自己紹介文を眺めます。

(…おおう。うおっ。うん?…ですか、なるほど)

その時点で僕にはなんとなく、そのサイトに登録する女性の傾向というのが掴み取れた気がしました。淡い期待は軽い絶望に変わります。

1.余りに可愛すぎる顔写真に変な記号みたいな名前

2.遊びたいギャル系シングルマザー、真剣な妙齢シングルマザー

3.単純に醜女

4.ネット上で時間つぶしたいだけの女

5.メンタルが不安定そうな女

自分なりに分別すると、1は完全に業者のサクラ、2は気が重くてスルー、3は心の中で合掌してスルー、4と5も嫌だなあ、そんな感じになってしまい「いいね!」を押す手がためらわれてしまいます。

前髪ぱっつん25歳

しかし文句ばかり垂れ流しても仕方なく、僕が女性に「いいね!」を押さない限り何ら進展しないわけで、取り敢えず顔面重視、プロフ写真で見た目が美人な女性だけに「いいね!」をクリックし続けます。

ちなみに女性側から「いいね!」が送られてくる場合もありますが、馬鹿正直に記載した僕の低スペックプロフィールで寄ってくる女性は、「デブでブスです(^^♪」「誰でもいいので会いまくるぞお!」というパンチが効きすぎた方ばかりで「ごめん」と断り続けます。僕は年収は低いのですがプライドと理想だけは高い独身貴族なんです。

反応がありました。

100人以上に「いいね!」を送ったところ、向こうからカップル成立承諾されたのは、3名でした。

一人目は25歳前髪ぱっつん、ゆるふわ系ショップ店員でした。大きな目がアップになり、口元をハートで隠したプロフ写真は、まるでモデルのようです。変に記号的な名前と、その出来過ぎた写真から「サクラに違いねえ」と感じつつも、割とリアルに綴られた自己紹介文には質素で堅実な金銭感覚が垣間見えて、もしや本当は素人かな、むふふ、と気味悪くにやけつつ、メッセージを送ったのでした。

「あのお、このアプリ。うまくログイン出来なくてえ(汗、よかったらラインで話しませんか?IDは…」

いきなりラインID交換かあ、モテて困るなあ、なんて思ったのは一瞬であって、彼女からの一発目にも関わらず唐突に心を許してくれた返信メッセージに、んなわけあるかい、絶対サクラじゃねえか、と僕は我に返ったのです。

(いや、でもサクラでもいいや。寂しい。騙された振りで、会話して心の隙間を埋めよう…。もしかしたらサクラじゃない可能性も…)

僕は一日考えて、やっぱりメッセージを送ろうと翌日アプリを開きました。

「メンバーは退会しました」

可愛いプロフ写真はすっかり消えてしまい、騙されたくても連絡する方法が途絶えました。サクラにさえ逃げられた、僕の心の先に灰色の廃墟が見えました。

後日、彼女とまったく同じ顔写真が別の名前、年齢、プロフィールで登録されているのを発見し、性懲りもなく僕は再び「いいね!」を送ったのです。

反応は今のところ、ナシ、です。

アート好き31歳

「プロフ見てたら、手が勝手にいいね!押しちゃいました」

二人目はプロフィールに顔は出してないものの、大きな帽子を被りオシャレな服装をしている芸術的なセピア色の写真を載せた同世代の31歳、オフィス勤務の女性でした。僕の自己紹介文は低スペック全開で敬遠されがちでしょうが、これでも顔立ちはなかなか整っていると評されることもあり、自撮り顔写真を堂々と公開していることが功を奏したようです。

(一般の女性なら怖くて顔写真載せないよなあ。うん、この人は本物だ。顔は映ってないけど、まあ多分、雰囲気からして、美人、でしょう。失礼のないように、ここはひとつ紳士的な振る舞い、ジェントルで礼儀正しく、立派なビジネスパーソンとして言葉のやり取りを行おう)

まあ何度か会話のキャッチボールがあり、相手から僕の自己紹介文について質問がありました。僕はペンネーム「久留米の爪切り」として、このサイト「Spotlight」に記事を執筆していると半分自慢げに書いており、彼女はそれを知らないようでした。

「是非、記事を読んでください!」

僕はメッセージでお願いしました。それが彼女とのやり取りの最後になりました。

「メンバーは退会しました」

翌日、彼女から返答はまだかと、期待しながらパソコンを立ち上げアプリを作動させると、同じ表示がまた画面に映し出されました。やっちまいました。僕の記事を熱心に読んでいる友人から指摘された言葉が脳裏をよぎりました。

「おまえは、まじめ系クズ、だ。おまえは、クズ、だ!一見まじめそうやけど、中身は、クズ。まあ、そこがめっちゃ面白い。でも絶対、女にはモテない」

そうです。僕の書く記事はいささか女性蔑視と捉えられても仕方ない記述、描写が散見されます。記事は記事で実体験に基づいてはいるけど、あくまでフィクションなのになあ、書かれた時点で現実とは違うんだけどな、と僕は自分に都合のよい論理を展開し己を納得させ傷付いたハートを慰撫するのでした。

フランス系美女37歳

三人目はかなりなハイスペック、年収が僕の3倍から5倍、官公庁勤務の年上女性でした。顔写真を公開しており、高い鼻梁は日本人離れした顔立ち、大きなサングラスをかけた姿はまるでフランス人女優みたいに優雅でした。

手が滑って「いいね!」を送り返してきたとしか思えません。僥倖です。神様が投げたど真ん中のストレート、失投、でしょうか。

「フランス人女優みたいで素敵ですね!」

僕の単刀直入な褒め言葉に素早い返信がありました。

「実は祖母がフランス人なんです。うれしいです」

僕は人を見る目があるらしい、己の審美眼に自信を抱かせてもらえるコメントです。おもむろに部屋で埃をかぶっていた仏語辞典を取り出すと、僕はフランス語で文章を作ろうと例文を探します。頭脳明晰なバイリンガル、インテリジェンスをアピールする作戦です。辞書に掲載された例文を繋ぎ合わせ、なんとか意味の通る文章に仕立てると、そのアルファベットの羅列を送信しました。訳すと、超びっくりした、マジっすか、美人ですね、くらいの意味になる筈です。

「すいません。別にフランス語が話せるわけではありません」

僕の熱量とは温度差が大きい、素っ気ない短い一文が返信されました。仏語辞書と格闘した時間は無駄だったようです。しかし、ここで引き下がるわけにはいきません。エスプリに富んだ返しで一泡吹かせなければ気が済みません。

「ボンラパス!おいしい食事!」

福岡市で展開する高級スーパー「ボンラパス」はフランス語で「おいしい食事」という意味です。福岡市民なら大爆笑の鉄板ネタ、と最近市内に引っ越した僕は踏みました。ハイスペックな彼女なら、常日頃利用しているスーパーかも知れません。全然返信が無く、翌日確認すると、既にお馴染みの表示が出ていました。

「メンバーは退会しました」

さーんかいめえ、と絶叫する機会が人生においてあるとするなら、まさにこの時、だったでしょう。奇しくもカップル成立した三人ともまったく同じ結果に辿り着いたのです。

アプリを始めて一週間、現場からのリポートは以上です。アプリには何のお知らせ通知も届きません。心にますます深い闇が侵食していきます。

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男は久留米という砂漠の中の一粒の砂であり、クルマ、金、女に縁がないライター志望の孤独で吝嗇な三十路だった…http://ameblo.jp/kt660cc http://tabelog.com/rvwr/002224433/

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