「アベよ、戦いに参加するというおまえの無謀な決断でこのナイフはケンジを殺すだけでなく、おまえの国民を場所を問わずに殺戮する」

IS(通称イスラム国)が昨年発表したこの宣言が、とうとう現実のものとなりました。

バングラディシュ人質テロの犠牲者の方々とそのご家族に深い哀悼の意を表すとともに、イスラム系の人々は親日派だという長年の伝統が、今や崩れ去ったことに注目したいと思います。

今回の犯人はベンガル人でアラブ人ではありませんが、ISのような過激派の間では、アラブ系イスラム過激派だろうと東南アジア系イスラム過激派だろうと国籍・民族を問わず共通したイスラム過激派の思想を共有しているので、

ここでは便宜上、代表的なアラブ人のメンタリティーという観点から見ていきたいと思います。

戦前戦後を問わず、アラブの国々の人は、日本に好意的でした。

戦時中も日本はアラブ諸国を攻めることが無かっただけではなく、日本は共通の敵アメリカにコテンパンにされた気の毒な国、という歴史認識があったと言われています。

戦後は石油を買ってくれる良いお客さんでもありました。

さらに皮肉なことですが1972年5月30日にイスラエルのテルアビブ空港で、岡本公三ら日本赤軍がパレスチナ側に立って乱射自爆攻撃を起こしたことが、

日本人は命がけでアラブのために闘ってくれたとパレスチナの人々に思われ、彼らの間で親日感情を高めた原因でもあります。

岡本公三はアラブの中で英雄視され、僕たち日本人がアラブを訪れても「お前は日本人か。コーゾー・オカモトを知っているか?」と嬉しそうに近づいてくるくらいでした。

基本的に日本人はイスラム教徒からは慕われることはあっても、嫌われたり憎まれたりする要素は無かったのです。

だからアラブの国々へ言っても「私は日本人です」と言えば、親しくしてくれるというのが常識でした。またバングラディシュに至っては日本は最大の援助国であり、そのため日本人は歓迎されてきました。

そんな常識が、今回犠牲になったJICA関係者の方々の頭のなかにあったのでしょう。

英語で三回も「アイム・ジャパニーズ。ドント・シュート」と繰り返したと、現地の報道は伝えています。だから身を守るため、とっさに「私は日本人です」と伝えたのでしょう。

しかしISには通用しませんでした。

逆に日本人だから殺されたのです。

欧米のキリスト教徒による「十字軍」(と彼らは呼んでいる)からの空爆に、日本も加担していると認識されているというのが現実です。

だから日本人も敵なのです。仏教徒が多い日本人が「十字軍」というのもおかしな話ですが、アメリカと共にISと戦うチームの一員として、彼らの中では完全にカウントされているのです。

IS周辺の難民救済のために20億の援助をすることを、安倍首相が発表した時から、ISの態度は、冒頭の宣言のように変わりました。

「おまえの国民を場所を問わずに殺戮する」の言葉通り、日本人なら敵だというわけで、バングラディシュの7人は理不尽にも殺害されたのです。

日本は中東問題とはそもそも無縁であり、中立な立場であったはずです。

なぜISを攻撃する欧米の仲間に入れられてしまったのでしょうか。彼らの言葉によると「安倍よ、戦いに参加するというおまえの無謀な決断で」となっています。

そんな決断を安倍首相がいつしたのか、僕には正確にはわかりませんが、少なくともISにとってそう受け止められる言動をしたのでしょう。

あるいは集団的自衛権でアメリカに追従して海外派兵できるように法案を通したことも、彼らにとっては日本がアメリカとともに攻めてくる、という懸念をいだかせたのかも知れません。

僕は明後日から中東に行きますが、そこで出会うアラブ人は、もはや昔出会ったアラブ人とは異なることを、ある程度は覚悟しておかなければならないのかも知れません。

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