記事提供:TOCANA

4月16日の熊本地震の本震発生と同日、阿蘇山で小規模な噴火が起きた。今回の大地震を引き起こした布田川断層帯の延長線上にある阿蘇山は、この影響を受けて火山活動が活発になっている兆候が見られるという。

そこで懸念されるのが、「カルデラ噴火」や「破局噴火」と呼ばれる壊滅的な大噴火の発生だ。阿蘇山に限らず、ひとたび起これば“日本の終わり”につながる大噴火について考察してみることにしたい。

■日本を滅ぼす「カルデラ噴火」の恐怖

「カルデラ噴火」とは、地下のマグマが地上に一気に噴出する形式の大噴火のことで、場合によっては地球規模の大きな環境変化をもたらす。

「破局噴火」とも呼ばれるが、これは2002年の石黒耀による小説『死都日本』でこの言葉が初めて使われてから、火山学者たちも学術用語として用いるようになった経緯がある。

また、火山学では噴火の規模を表す尺度として「噴火マグニチュード」が用いられる。過去の日本の火山噴火でいうと、富士山の宝永大噴火(1707年)がM5.2程度の規模だった。

M6.5程度のカルデラ噴火でも、場所によっては日本が壊滅の危機に瀕すると考えられている。

では、ひとたびカルデラ噴火が起きると具体的にどうなるか?

カルデラ噴火研究の第一人者である神戸大学大学院理学研究科の巽好幸教授(マグマ学)が『東洋経済オンライン』2016年5月28日)で執筆した「阿蘇山『カルデラ噴火』が、日本を壊滅させる」を参考にすると、次のようになる。

まず、広範囲に影響を及ぼすと考えられる火山灰の降灰で、電気・ガス・水道がストップし、民家が潰れ、高速道路も含めて車の通行が不可能になって交通もマヒし、食料配給も絶たれる。

細粒の火山灰による人間や動物への健康被害、さらにコンピューターなどのハイテク機器の動作不良も懸念されている。また森林は完全に破壊され、回復には200年以上の歳月が必要となる。

これはつまり、日本列島が動物も植物も生きることができない“死の地”となることを意味する。

そして、さらに恐ろしいのが火砕流の存在だ。一口に火砕流といってもイメージが湧かないかもしれないが、これは赤熱した溶岩の細片や水蒸気、そして火山ガスなどが一体となったうえ、数百度の超高温で流れていくものだ。

そのスピードは時として時速100kmを超え、標高千メートル級の山々も乗り越えて進む。これに巻き込まれれば全ての生命活動が奪われ、「瞬殺となるという。

実例を挙げると、約7300年前に鹿児島県沖の海底火山で起きた「鬼界アカホヤ噴火」では火砕流が九州の大部分を襲い、これが九州の縄文文化を壊滅させる原因となった。

九州や四国の縄文人たちは死滅したか、または一部が食料を求めて火山灰の無い地域へ移住したと思われ、九州は千年近くも無人の地となった。そして火山灰は東北地方や朝鮮半島にまで降り注いでいる。

このように、カルデラ噴火は文字通り人類の文明に「破局」をもたらしかねない大災害となるのだ。

■いつ来ても不思議ではない“破滅の日”

さて、問題の破局噴火だが、日本列島では過去12万年の間に18回ほど発生しており、これは約6500~1万年に1回程度の周期で起きていることになる。

そして過去7300年間、この破局噴火は日本で発生していないため、現在はいつ起きても不思議ではない期間に該当するのだ。

2014年、前述の巽好幸教授らは、現在の日本におけるカルデラ噴火の発生率について「100年以内に1%」とし、最悪の場合は約1億2000万人が死亡すると試算した。つまり、この「最悪の場合」とは実質的に「日本の終わり」と同義ということになる。

過去の記事でも紹介したが、2015年に英国・マンチェスター大学のアルバート・ザイルストラ教授(天体物理学)が火山愛好家たちの協力を得て「世界で最も危険な火山10」を選定した際、第4位に選ばれたのが日本の阿蘇山だった。

阿蘇山の直下にはマグマ溜まりが存在するが、最新の研究でも、それがどれくらい巨大なものかは判明していない。もしも巨大なマグマ溜まりがあるとすれば、“破局”を迎える前提条件が整っていることになる。

4月16日と5月1日に小規模な噴火を起こした阿蘇山だが、『週刊プレイボーイ』の現地取材によると、5月4日時点で、阿蘇山の火口に溜まっていたエメラルドグリーンの水がすべて消えていたというのだ。

これが大噴火の前触れである可能性も、否定することはできないのではないか?

■誰も本気で対策していない!

実に恐ろしい「カルデラ噴火」だが、現在日本のマスコミでは、その可能性についてあまりにも論じられていないように思われる。

「あるわけがない」「あってもずっと先のこと」と油断しているのだろう。そのため、もちろんカルデラ噴火対策のための国家予算なども投じられていないのだ。

実際、群馬大学教授の早川由紀夫氏は、『月刊地球』(2003年11月号)の「現代都市を脅かすカルデラ破局噴火のリスク評価」で、「日本社会は、カルデラ破局噴火を経験した記憶をもっていない。

そのような『未経験の』災害を防ぐ目的で大規模予算を振り向ける決断をするのは、たいへんむずかしいことだろう」と書いている。

しかし、実際はもっと緊迫した姿勢で臨まなければならない事態かもしれないのだ。

東京大学名誉教授の藤井敏嗣氏は、『NHK そなえる防災』の「カルデラ噴火!生き延びるすべはあるか?」で、「カルデラ噴火はもはや、いつ起こっても不思議がない現象なのです」と警告している。

気象庁の火山噴火予知連絡会会長を歴任した重責ある地球科学者の言葉として重く受け止めなければならない。

ところが、前述の巽好幸教授が、これまで幾度となく霞が関のお役人にカルデラ噴火の危険性を訴えて対策を要望しても、答えは判を押したように同じものだったという。

「関連予算に限度がある以上、低頻度で100年以内に起こる確率が低い災害に税金を投入する訳には参りません」(東洋経済オンライン、同上)といったものだった。

しかし、1995年の阪神・淡路大震災では、30年間の発生確率が0.02~8%という低い数値で見積もられていたにもかかわらず、現実になったということを忘れてはならない。

■原発があることも忘れてはならない

このように、最近ようやくカルデラ噴火の恐ろしさが語られ始めたわけだが、いざその時を迎えると、過去の事例からは想像すらできなかったような悲惨な事態につながる可能性がある。そう、現代の日本には「原発」があるのだ。

実は、日本列島で過去に発生した噴火マグニチュード7以上の巨大カルデラ噴火をみると7つの火山で起きていることがわかるが、そのうち4つが九州にある火山だった。

なかでも、現在唯一稼働中の川内原発にもっとも近く、鹿児島湾と桜島を囲む「姶良(あいら)カルデラ」では2万9千年前に巨大カルデラ噴火が起きている。

鹿児島大学の井村隆介教授(火山学)は、姶良カルデラが破局噴火を起こした場合、「数百度の熱を帯びた火砕流が川内原発敷地内まで到達する可能性があります。

そうなれば、原発自体が破壊されるのはもちろんのこと、原発作業員も全員火砕流でやられてしまいます。

火砕流と放射能で、外部から救助にも原発の収束作業にも入れないという恐ろしい事態になってしまうのです」(ハーバー・ビジネス・オンライン2015年8月17日)と警告する。

しかも、噴火に伴う原発事故の場合、火山灰に放射性物質が付帯して、風に乗って全国に降り注ぐことになるという。

たとえ原発がなくても、カルデラ噴火が起きれば火砕流と降灰だけで日本中が“死の地”となるというのに、そこに原発被害が加われば、もはやこの国は永遠に再生することもできなくなるだろう。

そして、死を免れた日本人も、難民として海外への移住を強いられることになる。

筆者の場合、たまたま妻がタイ人であるため、妻の実家があるバンコク郊外へ移住するのは困難ではない。

だが、多くの日本人にとっては、まずどの国へ移住するかを決めることだけでも大変なことだろう。

地震国といわれる日本は、震災に対する備えには本気で取り組んでいる。

しかし、これまで見てきたように、ひとたびカルデラ噴火が起きれば、日本という国自体が終わりを迎えるという意味で、火山はもっとも恐ろしい存在といえるだろう。

人々がカルデラ噴火への対策を怠っている今、これが現実に起きた際には「日本と心中する」つもりで生きていくしかないのだろうか。

百瀬直也(ももせ・なおや)
超常現象研究家、地震前兆研究家、ライター。25年のソフトウエア開発歴を生かしIT技術やデータ重視の調査研究が得意。

ブログ:『探求三昧
Web:『沙龍家
Twitter:@noya momose

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