記事提供:LITALICO 発達ナビ

LD(学習障害)のある子や、集団で学ぶことに困難さのある子でも、iPadやパソコン、デジカメ、ボイスレコーダーなどのICT機器を使った合理的配慮で、自分の苦手を補い、可能性の扉を拓いていくことができます。

うちでは、長男がiPadの学校持ち込みの理解を得ることができました。iPadで広がる可能性と学校との交渉のこと、楽々かあさんが全力でお伝えします。

長男はLD(学習障害)とADHD、ASD(自閉症スペクトラム)の全ての特徴があります。

今まで学校と連携し、家庭でできるフォローをしながらサポートしてきました。

そして、本人も4年生まで、通常学級で本当に頑張ってきました。

それでもどうしても、発達の凸凹差が大き過ぎて「努力では乗り越えられない壁」があります。

それならば、「鍵」を使えばいいんです!

iPadやパソコン等のICT機器は「壁」に風穴を開ける鍵になります。

道具1つで、LDのある子や集団で学ぶことに困難さがある子の「可能性の扉」が開いてゆくんです。

・iPadで何ができるのか

・学校とどう交渉していけば理解を得られるのか

楽々かあさんがウチでの経験を基に、全力で応援します!

好きなこと、自分に合った方法ならできる!

マインクラフトのコマンドメモ。好きなこと、得意なことならがんばれる。

字を書くのが苦手(書字障害)、単純な暗記が苦手、集中力に偏りがある、などの理由で長男の学校の成績は、見事に「頑張りましょう」のC評価がズラリと並んでいます。

ところが、小4の夏。

そんな彼にパソコンを買い与えたところ、さすがデジタル・ネイティブ。

あっという間に使いこなせるようになりました。

分からないことは自分でどんどん調べ、PCゲームの「マインクラフト」など、好きなことなら寝食を忘れて集中していられます。

こんな素晴らしい特性を、活かさない手はありません。

当時、学年を追うごとに学習ハードルが上がり、授業中ノートも取らず、テストも白紙回答で、勉強への興味と意欲を失い始めていた長男。

私は学校に合理的配慮をお願いしてiPadを持ち込めないか、考えるようになりました。

iPadで何ができるの?Assistive Technologyとしての使い方

残り時間のゲージが見えるタイマーアプリなどを普段から使っている。

ATという言葉があります。

Assistive Technology(支援技術)の略です。

つまり、視力の弱い人のメガネ、お年寄りの補聴器と同様、身体機能の弱い部分を補うためのテクノロジー全般のことです。

私は、集団での学習に必要な書字・記憶・集中、といったことへの長男の「苦手を補うAT」としてiPadを使えないか?と思ったのです。

例えば、

・板書が大変な時にカメラ機能で黒板を写真に撮る

・習った漢字が思い出せない時に電子辞書アプリで調べて書く

・うっかり忘れ防止や気持ちの切り替えが難しい時に、タイマーやリマインダー、ボイスメモなどを使う

というように。

そして現在、発達障害のあるお子さんがパソコンを持ち込んで高校、大学の受験をするなど、一部の導入事例も少しずつ増えて来ています。

でも、受験直前になって「持ち込ませて下さい!」とお願いしても、学校側はもちろん、本人だって戸惑ってしまいます。

今のうちから、ゲームだけでなく長男の苦手を補う「学習や自己管理ためのAT」として、自分の手足や脳の延長、身体の一部のようにiPadやパソコンを集団教育の中での「実践で」使い慣れておく必要があるように思ったのです。

アナログでやってきたことの延長線上にある、iPad

実は、iPadでできることは今まで「アナログで取り組んで来たこと」の、延長線にあることも多いのです。

今までの記事でもお伝えしたように、うちでは今まで様々な取組みをし、配慮をお願いしてきました。

字が思い出せず、テストやノートに文字を書けなかった時は「ひらがな表」「漢字表」等の補助カードの持ち込みの許可をお願いしました。

こうした取り組みで、少しずつ落ち着いて学習に取り組めるようになった長男。

でも、学年が上がると漢字も増えて、アナログのカードで何学年も前の目当ての字を探すのは、時間がかかってしまいます。

板書の負担を減らすため、教科書を拡大コピーして切り貼りした「教科書ノート」を作り、算数の計算は少し書けました。

でも、授業は必ずしも教科書どおりに進むわけでもなく、学習が複雑になると、授業自体に興味が持てずボーッと無為に過ごしてしまうことも増えてきました。

長男はタイマーやアラーム、メモ、ふせんなどを活用して忘れ物を減らしたり、気持ちを切り替えることもできます。

でも、不注意の多い長男はメモ自体を見わすれたり無くしたりするので、先生の声かけでメモを見るよう促して頂く必要があります。

iPadはひとつの道具に過ぎないので、長男の課題の全てを解決してくれる訳ではありませんが、ATとして使いこなすことで、学習の負担が減り、学校の勉強に興味や意欲が持てるようになるかもしれません。

そしていつか、もしも、彼が本当にやりたいことを見つけて、専門の教育を受けて学びたいと思った時に、扉を拓くための試験に挑戦するチャンス自体があるか、ないか。

その時に鍵が使えるか、使えないか。

進学が全てではありませんが、この差は大き過ぎます。

テストに字を書けないことくらいで、好きなことならいくらでも集中できる子の、未来の扉が拓かない。

自分にあらゆる可能性があることにすら気づかない。

そんなの、親としてあまりにも悔しいじゃないですか!

「なんでこんな簡単なこともできないんだ!オレのバカヤロー!」と自分自身に苛立ち、自分の頭をボカボカ叩く長男に、「こうすればできるよ」って、希望を持たせてあげたいじゃないですか!

「ダメ元でいいからお願いしてみよう!」

そう思って、長男本人に「iPadを学校に持って行くと、こんな使い方ができるかもしれないけど、やってみたい?」と提案すると、即答で「うん!」と目をキラキラさせて答えてくれました。

「教科書ノート」(H27.新興出版社啓林館「わくわく算数4上」より)

いざ交渉!具体的に「実例と実物で見せる」と説得力が出る!

手持ちのデジカメやiPod(スマホ)と、具体的な資料を用意。

息子が通っているのは地方の公立小学校です。

iPadの持ち込みは前例のないことだったので、私は担任の先生やスクールカウンセラーの先生を通じ、「iPadの持ち込みってどうなんでしょうね?」と、取り組み状況を事前に何度か伺ってみました。

すると、最初は「そういうのは自治体全体で足並みをそろえないと…」というような回答でした。

しかし繰り返し聞くうちに、交渉にあたった特別支援コーディネーターの先生も「学校全体でICTを取り入れている事例」などを、調べて下さっていました。

また、ときおり教室での長男の様子なども見に行き、気にして下さるようになりました。

そして、いよいよアポイントを取って、交渉です。

私は、資料として次のものを用意していました。

・知能検査(WISC‐Ⅳ)、視機能検査などの結果のコピーと、専門家の意見のまとめ

・今までの長男の成績表、ノート、テスト

・iPadの先行導入事例や、障害者差別解消法の対応指針などのプリント(うちの子に近い事例にふせん、マーカー)

・手持ちのデジカメ、スマホ(母のiPod。可能な範囲で使いたいアプリを入れておく)

また、管理職の先生とお話しをする場合は、

・普段の子どもの様子

・特性、学習の状況など

これらを詳しく把握してない場合もあるので、1から説明するつもりで準備するほうがいいと思います。

(うちの先生は、長男の日頃の様子を見て下さっていて、話が早かったです)

そして、

検査結果で、長男には大きな発達の凸凹の差があるという「証拠」

下書きや教科書を切り貼りしたノートで、本人と親が取り組んで来た「努力」

それでも乗り越えられず、得意な凸が、学校のテストや成績では全く活かされていない「現実」

手持ちのiPodとデジカメで「こんな風に使うことができる」と、実際に先生の目の前で「実例」

を見せました。

具体的に、実例と実物で見せることで「なるほど!」と、先生にもiPadの必要性を充分理解して頂けました。

また、あらかじめ問題点として想定される、次のようなことに対しては、対応策も用意していました。

・学校のインターネット解放の危機管理上の問題→LAN解放は必要なく、オフラインで使える機能で充分であること

・高価な機器の取り扱い→保護フィルムと破損防止のカバーケースをこちらで用意

・使い方を教える教員がいない→家で予め練習し、使い慣れてから持って行く

・他のお子さん達への説明→カードとiPadのロック画面に説明書きを用意

それ以外の不安要素や学校側の事情にも耳を傾け、ひとつひとつクリアにし、お互いに妥協しながら解決していきました。

iPadのロック画面に設定した、説明書き。同じものをカードでも用意。

「なんでも一度、やってみたらいいんじゃないのかな?」…校長先生の一言

こんな風にお願いをした所、その時点で特別支援コーディネーターの先生からは「そういうことでしたら、多分大丈夫だと思いますよ。校長先生に話してみますね」という、前向きな回答を頂きました。

後日校長先生から、

「なんでも1度、やってみたらいいんじゃないのかな?」

という柔軟なお返事を頂き、iPad持ち込みの許可を得ることができました!

その後、必要なものを揃えてから、再度使い方などをチェックして頂く流れになりました。

実は、私が思っていた以上にすんなりと許可が降り、内心驚きました。

でも、今まで「本人なりに頑張って来たこと」「親が何度も働きかけてきたこと」もあって、校長先生も特別支援コーディネーターの先生も、日頃から長男の様子を気にかけて、時折話しかけて下さっていて、温かい目で見守ってくれていたのだと思います。

そんな積み重ねが、うちの小学校では前例のなかった「iPadの持ち込み」の理解を得ることにつながったのではないかと思っています。

また、特別支援コーディネーターの先生から聞いた、先進的な取組みをしている地域での全校的な導入例や、法的な背景の整備などの昨今の流れから、地方でも「合理的配慮」へのハードルは、徐々に下がって来ている感触でした。

その学校で最初に切り拓く親子は大変だと思いますが、使う子が増えるほど導入時や、子どもへの周囲の理解のハードルは下がります。

どんな子にも、どんな可能性だって…

長男が使うiPad。

現在、長男は4月から支援級に転籍し、毎日iPadを持って登校しています。

導入したばかりで試行錯誤の過程ですが、長男に合わせたペースで、文字が出て来ない時には何学年も前の漢字などを電子辞書アプリで調べながら、つまづいている所までさかのぼってプリントに取組んでいるようです。

家でも宿題のあと10分ほど、漢字と計算のアプリを使って、1年生の問題から順に1つひとつ取り組んでいます。

学校と家庭の両輪でフォローしながら、息子にも少し自信がついてきました

また、支援級のお子さん達と一緒に、休み時間に宇宙の動く図鑑を見たり、ビジョントレーニングのアプリで遊ぶなど、私が予想してなかった使い方もしているようです。

今後は、スモールステップで、長男が自分自身で「こういうことが苦手だけど、こうすればできるのでお願いします」と、配慮をお願い出来るようになれたらと思っています。

そして。

私がこの記事を書いている時に、長男がPCを覗き込んできたので、こんな会話をしました。

「今、日本には◯太郎と同じように字を書くのが苦手だったり、集中するのが苦手だったりで、学校の成績が悪く『勉強ができない』と思われている子が沢山いるんだよね。

でも、そういう子もiPadやパソコンを使えば、勉強が好きになるかもしれないし、受験だってできるかもしれないよね」

「じゃあさ、今ガッコーとかベンキョーがキライなヤツがさ、これ見てiPadとかパソコン使ってさ、大きくなってダイガクに行ってさ、病気のケンキューとかしてさ、ワクチンを発明したりしてさ、沢山の人の命を救うかもしれないね!」

そうなんだよ。

どんな子にも、どんな可能性だって、あるんだものね。

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