7月に入り、本格的な夏の季節がやって参りました

出典 http://www.nikkei.com

クールビズの推奨も当たり前になって久しいですが、薄着の季節到来ということは、当然ですが肌を露出する機会が増えてきます。それゆえに夏に大量発生する蚊のように、対策を講じなくてはならないモノが出て来ます。

世の女性たちにとっては弊害でしかない、そう「痴漢」です。

関東エリアの鉄道事業者19社局では、利用者に安心して鉄道を活用してもらう為、警察と連携して『痴漢撲滅キャンペーン』を、今年も6月6日~17日までの12日間に渡り実施しています。

読者のみなさまも駅構内などで見かけたことがあると思いますが、こうした地道な取り組みの積み重ねが、痴漢行為を抑止、撲滅する動きへと繋がっているのですね。

さて、ここに興味深いデータがあります

出典 http://hakusyo1.moj.go.jp

上記棒グラフは、法務省が作成している「犯罪白書」から参照しているデータです。区分は赤棒が『迷惑防止条例違反の痴漢事犯の検挙件数(電車内以外を含む)』で、青棒が『電車内における強制わいせつの認知件数』です。

平成18年度から平成26年度までの約10年間の件数を抜粋してみたところ、平成19年度(黄色枠)が最も高い年度で、検挙数は4515件、認知件数は438件でした。

しかし、平成26年度(青色枠)の検挙数は3439件、認知件数は283件と、この10年間で最も数値が下がっているという嬉しい結果となっています!

減少傾向はすばらしいけど…なぜ減ったの!?

出典 http://01.gatag.net

『痴漢撲滅キャンペーン』や、『女性専用車両』の増加、駅員や警察、そして一般市民のボランティア活動なども抑止効果に貢献しているのは間違いありません。でも、そういった取り組みはこれまでもされてきたことで、最近始まったものでもありませんよね?

ここ3年、特に数値の減少が右肩下がりしてる?と感じた筆者はある仮説を立ててみました。もしかして「“アレ”の功績が一番大きいのではないか」と。

それは、一度みたら忘れられない強烈なインパクトをもった…

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

駅構内、電車内でよく見かける「痴漢撲滅ポスター」です。このポスターが登場したのは、今から3年前の2013年。年度毎に新作が登場するのですが、上記は2016年度版の最新作で、70、80年代に多く見られたような、往年の巨匠マンガ家の画風を彷彿とさせます。

痴漢に遭ってる女性がものすごく毅然とした態度で「痴漢です!!!」。この声に反応し、すぐさま駆けつける駅員、結託する乗客たちにじわります…。これは記憶に残らないほうが無理ありますよね。

・これ誰が描いているのだろう?

誰が描いてるの?

気になる方はやはり多かったようで、こちらのTwitter投稿者さまは、上村一夫先生を連想されたようです。

・痴漢撲滅ポスター見るたびに楳図かずおを思い出す

楳図かずお先生の作品を連想される方も!

・「それ風」に描いているらしいけど、すごい特徴とらえてる!

やはりデザインされている方が気になって、調べた方は多いようです。

手掛けたのはイラストラーターの師岡とおるさん

出典 https://twitter.com

イラストに興味、関心がある方なら、師岡とおるさん(※以後は師岡先生と表記)をご存知でない方は居ない気がしますが、師岡先生はスタイルにとらわれない表現方法で、さまざまなタッチを描きこなすイラストレーター、グラフィックデザイナーです。

これまでに計4枚の撲滅ポスターを世に送り出している

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

こちらは2015年版。「…ち、痴漢です!!」と訴える女性以上にモブキャラが濃ゆい!個人的には美人、イケメンすぎる2人の車掌さんがツボです♡

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

こちらは2014年版です。ポスターが強く訴えようとしていることは、痴漢に遭った場合、大声を上げて周囲に知らせようということ。

あなたがアラートをあげれば、まわりの人達も気づくことが出来ますし、絶対に味方になってくれます。痴漢に遭遇したら勇気を出して叫んじゃいましょう!そう注意喚起を促しているのです。


師岡先生の作品は多くのメディアで散見しているので、「師岡とおる」という名前は初耳という方でも「コレ見たことある!」と思えるものがたくさんあるかと思います。なので、先生が手がけた作品を少しだけ紹介しますね。

・氣志團万博

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

人気ロックバンド・氣志團がホストを務める『氣志團万博』のイラストです。参加アーティストさん達への深いリスペクト、愛情が伝わってきます。素敵♡

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

同フェスに参加しているGacktさん、きゃりーぱみゅぱみゅさんのイラストも!お二人の特徴を本当によく掴んでいますよね。

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

こちらはVAMPSのお二人。大和和紀先生の名作『はいからさんが通る』のオマージュのようですね。

・Men'sJOKER PREMIUMの『串と美人』

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

『Men'sJOKER PREMIUM』にて絶賛連載中の『串と美人』。見目麗しき、逞しくはたらく女性たちが毎回登場するのですが、ご本人同様にイラストが本当にカワイイです♡ちなみにイラストの女性は、左からがLillyさん(アーティスト)、みりさん(27歳/社交ダンス講師)。

サイトにはイラストになった美人さんのお写真もありますので、ご尊顔を拝みたい方はぜひチェックを。

・東宝映画『ステキな金縛り』パンフレット

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

『ステキな金縛り』は2011年公開の東宝映画。監督、脚本は三谷幸喜さん、主演女優は深津絵里さん。第35回日本アカデミー賞において優秀作品賞を受賞しています。

筆者も大好きな映画で、師岡先生を知ったのはこのパンフレットがきっかけでした。

・聖飢魔IIをビックリマンシール風にアレンジ!

出典師岡とおるさんご本人様より画像提供

聖飢魔IIの信者(ファン)、ビックリマン世代にはたまりませんね!ロッテさん、商品化してくれないかな…。

・POPEYE『ガチ恋ファンタジー・クラブ』

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

『POPEYE』読者にはお馴染み、音楽プロデューサーでトラックメイカーのtofubeatsさんが連載されていた作品で、師岡先生がイラストを担当されていました。こういうテイストの絵、ほんと大好きです♡

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

出典師岡とおるさんより画像提供のうえ掲載

いかがでしたか?これらはみ~んな師岡先生のお仕事なのですが、どれも同じ人が描いているとは思えないほどに多彩。どうしてこんな風にジャンルや画風が異なるものを描き分けられるのでしょうか…。

「お前の記事はもういいから、先生のイラストもっと見せろ!」という方は、師岡先生のオフィシャルサイトをチェックしてみてくださいね(笑)

おカタイ印象がある犯罪抑止系ポスター。「マンガ風」に思い切った理由は?

Licensed by gettyimages ®

話を戻しましょう。ところで、これまで犯罪防止の啓蒙を目的としたポスターって、たとえば凛とした警察官の写真だったり、「チカンは犯罪です!」みたいな文字の強調でとにかく目立たせるようなデザインが多かったように思います。

威圧的でこそあれ記憶には残りにくい、そんな「おカタイ、マジメ」な印象が強かった撲滅ポスターが、マンガ風の見せ方にシフトチェンジした理由は何なのでしょうか?

JR広報の発表によると…

「痴漢に遭われたお客様が、ご自分で声を出すのは難しい状況にあります。そのため、周囲のお客様が異常に気づき、声を掛けることが被害から救うきっかけになるという構成にしています。

こうしたストーリーを表現するには漫画が有効だと考え、本年も漫画タッチのデザインにしました」

(JR広報)

出典 http://www.dailyshincho.jp

男性には伝わりづらい所があるかもしれませんが、実際に痴漢に襲われた場合、女性は本当に恐怖を感じています。なので、声をあげたり振り払おうとすることって少しも簡単なことじゃありません。

痴漢を見逃さず撲滅していく為には、周囲の人達が被害者からのシグナルにいち早く気づいてあげられるよう意識を持ってもらうことが必要不可欠です。そのことをわかりやすく、かつ記憶に残るようなインパクトで伝えられるように、漫画でアピールというカタチになったのです。

でも、ポスターの“あの独特なテンション”はどういった意図があってのことなのでしょうか?それは師岡先生曰く…

「ボクに画力が足りないからです」

「漫画には時代ごとに画風があると思っていて、最初は70年代ならこんな感じかなと。評判が良かったので、次の年は、80年代風に。今年は一周して劇画風に戻しました。

漫画は描けないので、漫画家さんへのオマージュです。妙なテンションに見えるのは、意識して描いているわけではなく、ボクに画力が足りないからです。

この仕事をしてから、電車に乗る時、必ず、両手を上げておくようにしています」

出典 http://www.dailyshincho.jp

※2016年6月23日号掲載の『週刊新潮』より参照

「漫画は描けない、漫画家さんへのオマージュ、画力が足りないから」と、なんとも正直すぎる師岡先生(笑)どこかで見たことがあるような親しみを覚える劇画調に、独自のスパイスを+α!どんな絵柄でも描けるというのが彼の味であり視点です。

なお、電車内では両手を必ず上げているといった対策も講じられているようです。「自分は絶対痴漢なんてしないし、関係ない」という男性方にも、痴漢は決して無関係な話じゃありません。冤罪なんて事態に巻き込まれる可能性もゼロではありません。誰もが被害者になる可能性を孕んでいるのです…。

正論であるからこそ、サービス精神のある見せ方が必要

痴漢は犯罪、言うまでもない正論です。でも正しいからといってそのまま伝えても、常習的に痴漢行為を働くような人の気持ちは動きませんし、突発的な衝動で行為に及んでしまう人を踏み留めるにも、パワー不足感は否めません。

これは日本を代表するコピーライターの谷山雅計さん(元博報堂、現谷山広告代表)の受け入りですが、「正論を表現しようとするときこそ、必要なのはサービス精神」という考え方があります。

簡単に言うと、私たちが何かに心動かされたり、いいなって感じられるモノって、事実として正しいことを言っているからだけじゃなくて、正しいのに面白い、正しいのにカッコいい、正しいのにお茶目、なモノだったりするからです。

世の中の正論と呼べる多くのものは、正しさを大義名分とするあまり、上からモノを言うような押し付けがましさがあったり、正しいけどつまらなかったりします。それゆえに反発されたりします。だから正しいことを伝えるときこそ、伝え方に工夫が要るのです。

このポスターも同じで、正しいことを面白く、カッコよく、お茶目に表現しているから、見る人の心を動かし記憶に残るインパクトを生み出せています。ここ数年の痴漢検挙・認知件数減少に多大な貢献をしていることは間違いないと筆者は感じています。

クリエイティブな発想や試みで、犯罪だって無くしていける

出典師岡とおるさんご本人様より画像提供

イラストの力で多大な影響力を及ぼせるクリエイターの表現力って、本当にすごいと思います。でもイラストが一人歩きして物事を変えているのではなく、それがきっかけとなり伝播し、さまざまな可能性を生み出しているということ。

『バタフライ・エフェクト』なんて言葉があります。些細で小さなことがさまざまな要因を引き起こし、やがては世界を変えてしまうような大きな差を生み出すことがあるように、誰かが勇気と声を出せば、誰かが耳を傾けるのです。

撲滅ポスターのスローガン「みんなの声と勇気で痴漢撲滅」とあるよう、あなたが痴漢被害に遭ったら、あなたがその現場を目撃したら、まず声を出して周囲に知らせようとする共有的行動が必要。私たちはそのことを改めて認識しなくてはいけません。

このポスターのように、世の中から痴漢や犯罪を減らし無くしていけるような取り組みが、今後もっと増えていくといいですね。

※本記事は師岡とおるさんより執筆許諾ならび、画像素材提供を頂いた上で掲載させて頂いております。

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