混乱真っ只中にある英国

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6月23日の国民投票によりEU離脱が決定付けられた英国。約1週間の間に英国で起こっていることは「混乱」の一言でしょう。そして混乱した社会では、移民への嫌がらせ(ヘイトクライム)が急増。離脱を後悔している人がいる一方で、離脱決定という事実を利用し移民に「英国から出ていけ!」と罵詈雑言を投げかけたり、暴力を振るったりする人も出る始末。

このままでは、英国はEU諸国からも嫌われ国内分裂に向かって一直線という気も否めません。

離脱確定後、次々と起こるヘイトクライム

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27日の夕方、ウエストミッドランドにある肉屋が何者かにガソリンを投げ入れられ店をめちゃくちゃにされるという事件がありました。CCTV(監視カメラ)によると、白人の男性が写っていた様子。「恐らくEU離脱に関連付けてのヘイトクライムだろう」ということですが、個人的に何の関係もないイスラム教徒の肉屋が攻撃されたのです。

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店内はまるでテロによる爆破のよう。店主には幸い怪我がなかったものの従業員の一人が負傷。世界でテロが起これば何かと標的にされるイスラム教徒の人々。今回もまた、理不尽なヘイトクライムのターゲットとなってしまいました。もうこれでは商売をすることなどできません。

ロンドン近辺でも…

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ハックニーでも、白人男性ドライバーが外国人ドライバーに、わざわざ車を降りて「国へ帰れこの野郎!とっととここから出ていけ!」と暴言を吐く光景が誰かの目に留まり動画に収められました。EU離脱ということで後悔している英国人もいるものの、もう後先引けない状態になっているという緊迫感が、このようなヘイトスピーチに発展するというのは許さるべきことではありません。

マンチェスターでも…

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マンチェスターでは、混み合ったトラム(路面電車)内で一人の男が移民らしき男性に「お前、イギリス人じゃないだろ!さっさと国へ帰れよ!」と言い出したために、暴言を吐かれた男性は「君は何歳だ?僕は君が生まれる前からこの国に住んでいるんだ」と反論。すると男の仲間も一緒になり「移民野郎!出ていけ!」と罵詈雑言を投げかけ、車内は騒然となりました。

男たちがトラムを降りた車内では、このヘイトクライムに涙する女性の姿も。「なんて酷いの。許せない」と怒りをあらわにする乗客もいました。この暴言を吐いた男たちは、おそらくEUの意味も理解できていない輩でしょう。彼らは、EU離脱という事実を利用しただけの大人げない嫌がらせをしているだけなのです。

国内のポーランド人に対してもヘイトクライムが急増。ロンドン市内にあるポーランド人のコミュニティセンターのドアには嫌がらせのペンキによる落書きが生々しく、エリア住民にとっても、「出ていけ」などの張り紙をされるなどポーランド人たちは恐怖と不安を抱いている様子。

今回の国民投票によるEU離脱という結果は、英国市民の心の底にあった「移民を排除したい」という気持ちがヘイトクライムとなって表れているのでしょうが、EUを離脱をするからといって差別を認可しているのではないのです。ところが、EUの意味もわからないような人たちは「あからさまに差別行為をしてもよい」と受け取っている場合も多く、このような形でヘイトクライムが急増しているのだと言われています。

メトロポリタン警察の調べでは、4週間前と比べて投票後の4日間で既に57%のヘイトクライム率がアップしているというのだからショックです。「我々は離脱を表明した。つまり移民はいらないということだ。なぜ、まだお前らはここにいるんだ?」という差別発言をする人が急増。ある女性はタクシー運転手に「あんたらみたいな人を追い出すためにUK離脱に投票したのさ」と言われたそう。

BREXITによりあり得ないほどの混乱が生じている英国

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2016年という現代に関わらず、時代は70年代に戻ってしまったと嘆く人もいるほど、あからさまな差別をする人が急増し、英国内はもはや混乱と不安の真っ只中となっています。このままでは英国はEU諸国を敵に回してしまうことでしょう。

移民に嫌がらせをする人たちが目立っている一方で「イギリス人だけど、差別は絶対にダメ!」という気持ちを持っている英国人も大勢存在するのです。

ある英国人女性がしたこととは…

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ロンドン在住のShona Pugh(ショーナ・ピュー)さんは一人のイギリス人として、この混乱を悲しく思い自分のアパートの上に住んでいる数名のEU諸国の人たちに、ささやかなプレゼントを贈ることに。花束とチョコレート、そしてカード添え玄関先へ置いておきました。

「私の上に5人、住んでいるんですけどみんなすごくいい人たちなんです。今回の投票結果に彼らもショックを受けていて。今後どうなるのか心配だって言ってました。私はもちろん残留を希望していましたが、離脱が決定して嫌がらせが増えているので、ほんの少しでも彼らを元気付けたいと思って。」と優しいジェスチャーを示したのです。

5人の反応は…

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ショーナさんの行為に5人はワインや手作りのパイでお返しをしてくれたのです。その行為に思わず涙がこぼれたとショーナさん。「ルーマニアのワインと、ブルガリアのチーズパイ、そしてチョコや猫のカードまでくれたんです。私がすっごく猫好きっていうのを知ってくれているから。」

そしてショーナさんは彼らに「一緒に集まってワイワイしましょうよ」と持ち掛けました。ショーナさんの心の中には「なぜ、国が違うというだけで彼らがこんな辛い思いをしなければいけないのか」という悲しみがあるのでしょう。その悲しみは今岐路に立たされている移民の人々にも広がっています。

肌の色や言葉、国で差別する社会は永遠になくならないのでしょうか。英国は今、時代錯誤になっています。ヘイトクライムが急増すればするほど、ヨーロッパからますます孤立していく英国。今の時代に鎖国を望んでいるのだとしたら…英国はもう終わったも同じ。手遅れになる前に、少なくともヘイトクライムだけは軽減させなければいけないのではないでしょうか。

投票した人の思いは人それぞれですが、今、イギリスに住んでいる筆者から見て英国は急降下の一途をたどっています。そして社会の様子を見ているとただただ悲しい。英国を愛する人はたくさんいます。ヘイトクライムの前に考えるべきことがあるのではと英国民に言いたい気持ちでいっぱいです。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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