就労目的で来日する外国人が年々増えている昨今。しかし、彼らの労働環境について明るい日本人は多くないと言わざるを得ません。

そんな外国人の労働環境について、日本人も真剣に考えなければならない事件が起きていることをご存知でしょうか。

事の発端は、あるツイートでした。

カレー店・シャンティの従業員の告発

池袋・大塚を中心に5店舗を展開するカレー店・シャンティの従業員の方が、2年間に渡って賃金を支払ってもらえず、経営者からお店の閉鎖を言い渡され窮地に立たされているとのこと。

このツイートが拡散されたことにより、従業員の方がTwitterアカウントを立ち上げ、これまでの経緯を自らツイートするようになりました。

彼らのツイートから現在までの経緯を簡単にまとめてみます。

従業員のこれまでと劣悪な労働環境の実態

1. 従業員はそれぞれ10年近く同店に勤務しているものの、雇用当初から満額の給与が支払われていない。(契約上は月額20万円だが、実際には4万円しか支払われていない従業員もいる)

2. 2016年の給与については1円も支払われていない。

3.
経営者側は給与から所得税を天引きしていたものの、実際には納税していなかった。

4. 今年の2月に社宅が火事になってしまい、当時の服以外の全ての持ち物は燃えてしまった。

5. そのため現在は店舗に寝泊まりしている。店を追い出されたら、全員ホームレスになってしまう。

6.
妻子と共に来日している従業員の方は、永住権、定住権、配偶者が日本人、特別定住者、いずれにも該当しない為に生活保護すら申請できない。

7. 6月17日朝の時点で、経営者である児玉氏に電話するも「今病院にいる」と言われて電話を切られる。以後、児玉氏は25日まで従業員からの電話に応じず、折り返しの連絡もしていない。

8. 6月16日に児玉氏は労働基準監督署の呼び出しに応じている。その際に、未払い給与の支払いができないこと、経営するカレー店の本店は個人名義で所有しているものであり、売却すれば5000万円ほどになること、自身に6000万円以上の借金があることを話した。

9. 従業員は雇用保険も社会保険にも加入されていなかったため、失業手当がもらえない。

10. 調理中に火傷を負った料理長・スラット氏は実費で診療費を支払い、現在労災の申請をしている。お金もなかったため、負傷してからしばらく病院にも行けなかった。

11. 従業員は手続きを法的に有利に進めるために、6月23日に労働組合を結成している。

読んでいるだけで胸の痛むような内容ばかり…。従業員の方は、お店の閉鎖を通告されるも追い出されてしまえばホームレスになってしまうこと、そして何よりも応援してくれているお客様のためにと営業を続けているのです。

テレビ等でも取り上げられたことにより、この問題が広く知られると同時に連絡を絶っていた児玉氏の行方も注目されていました。

そんな中、6月25日に児玉氏に動きがあったのです。

児玉氏が弁護士を伴い、店舗に!

今後のことについて話をするということで、27日に再度話し合いの場を設けることが決まったのです。

このツイートの後に場所と時間の変更があり、最終的に27日の18時半からシャンティ南大塚支店にて話し合いが行われました。

Spotlight編集部では、このシャンティ従業員の皆さんと、経営者である児玉氏の話し合いの場に潜入!以下、緊迫した現場の様子をお伝えします。

話し合いが行われたシャンティ南大塚店

Spotlight編集部が話し合いの場となった南大塚支店に到着すると、既に報道各社の記者が到着しており、他に児玉氏の債権者も来ていました。

今回の話し合いの参加者は以下の通り。
【従業員側】
シャンティ従業員15名、弁護士・指宿昭一氏、シャンティ労働組合顧問・アミン氏

【児玉氏側】
児玉氏、児玉氏の代理人である弁護士、破産管財人

今回の話し合いでは、シャンティの運営会社の現状と経営者・児玉氏の現状、今後の従業員の皆さんへの対応、従業員の方へのこれまでの待遇と未払い賃金についてが話されました。

それでは話し合いの場で話された従業員側と児玉氏側、双方の言い分をまとめていきます。

管財人から伝えられた児玉氏の破産決定

・6月24日午後、裁判所から運営会社の破産決定の連絡が来た。

・今後は会社の処分権限等は管財人の管理下に入る。

・今後管財人は運営会社の資産を現金化し、借金や滞納している税金、未払賃金の返済をしていく。

・賃貸契約をしている店舗の家賃は、4月分から滞納している物件もある。賃貸契約をした際に大家へ支払っている保証金から、滞納分の家賃は引かれていくので早く立ち退いて欲しい。保証金は、会社の財産として扱われる。保証金を債権者への返済に充てたい。

児玉氏個人も破産しているので、未払賃金を支払うお金がない。

従業員が語るこれまでの待遇と賃金支払状況

・社宅が火事で燃えたことに対する補償がない。(社宅は児玉氏の持ち家で、同氏の住まいも兼ねていた。5~6部屋ある内、彼らが使っていたのは狭い2部屋)

・狭い部屋に二段ベッドを使って13人も住んでいた。布団や枕の交換もされず、古くなって使えなくなった場合は自腹で購入していた。

・雇用された当初から決められた金額で給与が支払われていなかった。通常の給与以外に残業代も未払い。(児玉氏は労働基準監督署に対し、「残業は知らない」と発言している)

従業員の皆さんが置かれている環境が、想像以上に劣悪なものであったというのは言うまでもありません。

また運営会社と児玉氏個人が破産決定を受けていることが、今回明らかになりました。

社長「未払いについては従業員も合意していると認識していた」

次に児玉氏と従業員側の質疑応答では、未払いとなっている給与について従業員側が追及。

従業員側の弁護士・指宿氏:昨年まで売上が上がっていたのに、なぜ給与が未払いのままになっているのか?5店舗で月に800万から1000万の売上が上がっていたはず。ほかの事業にお金を回していたのでは?

児玉氏:ほかの事業にお金は回していない。不払い状況が続いている状況ではあったものの、従業員はそれに合意していると認識していた。会社そのものは赤字だった。


ーー給与未払いを合意とする従業員がどこにいるのでしょう?その後のやり取りの中で、未払い給与の金額についても食い違いが見られました。

従業員側は、過去2年間における未払い賃金について6000万円以上の金額であると主張しています。しかし、児玉氏は労働基準監督署に呼び出された際に1500万円程度であると発言しているのです。これについて、児玉氏は自身の認識に誤りがあったことは認めたものの、具体的な金額については明言せずに今後精査した上で決定するとしました。

従業員たちの怒り「家族は草を食べるしかない状態」

この争議において児玉氏は「従業員の皆さんを家族のように思ってお店を営業してきた。自分の無知によりこのようなことになってしまい申し訳ない」と謝罪。

しかし具体的な従業員からの質問に対しては「認識違い」「今は答えられない」という回答が続き、従業員の皆さんが納得するものではありませんでした。ほとんどの従業員の方は、アミン氏の通訳を介さねばやり取りができない状況ではあるものの、激しい語気からは児玉氏への怒りが感じられました。

中でも印象的だったのは、質疑応答の合間に語られる従業員らの状況。ある従業員は「故郷に残してきた17人の家族に仕送りできるお金もなく、妻から『もう草を食べるしかない状態』と連絡が来た」と話していました。

さらに従業員の1人は「国に残している妻のために買いそろえたものは、全て火事で燃えてしまった。残ったのは着ていた服だけ。なのに補償はまったくなかった。」と絞り出すような声で発言。

シャンティの従業員の皆さんは賃金もまともに支払われず、13人が狭い部屋でひしめきあうように暮らしていた中でも、それぞれが必死で家族のために働いていました。そんな努力も、2月の火事で跡形もなく消えてしまったのです。

「児玉氏は従業員を家族のように考えていると発言しましたが、児玉氏の家族は生活できているじゃないですか。でも、もう私たちの家族はもう生活できない…。それでも、今まで社長を信じて頑張ってきたんですよ。」

この代表者の言葉に、しばし児玉社長はしばし沈黙したのち、このように返答しました。

「私の認識不足でこんなことになった。従業員の皆さんに申し訳ない。会社の為に努力はしてきた。会社として大きな利益を出したわけではないし、私自身も娘にお金を借りて皆さんにお支払いをしたこともある。

この問題については、今ここで申し上げることができないこともある。また、従業員の方が話していることの中には、自分としては身に覚えのないことも含まれている。法律でどういうことになるかはわからない。

現状できることを一生懸命やって、皆さんにできる限りお返ししたい」

最終的に児玉氏は、給与未払の事実を認めるとともに謝罪をしたものの、なぜ給与未払い、破産という事態になってしまったかについては最後まで明言しませんでした。

従業員たちの怒りが収まらぬ中、解散となった労働争議。

現在お店では従業員たちが泊まり込み、現金で材料を仕入れ営業を続けています。最後に従業員の1人が言った「賃金が払われるまで、たとえ警察が来たとしても我々は出て行くつもりはない」という言葉が印象的でした。

話し合い後の様子

話し合い後に店を出る児玉氏。(茶色のカバンをかけている男性)

児玉氏とコンタクトが取れずに困っていた債権者(仕入れ業者の方)もたくさん集まっていました。

債権者に詰め寄られる場面も…。債権者への具体的な説明は、10月に改めて話すとのこと。

報道陣に囲まれるも、児玉氏は具体的な発言はせず弁護士と共に去って行きました。

従業員の皆さんは、管財人と児玉氏の弁護士を通じて今後も交渉を続けていくそうです。また、お店を継続して営業するために新たな経営者を探すことも決定しているとのこと。

従業員の皆さんに1日も早く未払いの給与が支払われ、穏やかな生活を取り戻せることを願ってやみません。

【6月30日追記】保健所の営業許可が取り消しに

最新の情報では、保健所による店舗の営業許可が取り消されたため仕入れができなくなってしまったことが判明。お店を継続することが難しくなっており、新しいオーナー探しが早急な課題となりそうです。

<取材・文/横田由起>

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