2016年6月12日。グループにとって喜ばしいはずの”Zeppツアー”のその初日、必死に涙を堪えながら、メンバーの森咲樹は話し始めました。

「ここから見る光景はもちろん素晴らしいけど、満員じゃない現実を見て不安になったし、正直怖くなりました。」

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「今日来てくれた人も、“アプガ大丈夫なの?”って不安になった方もいると思います。ごめんなさい」

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孵化できなかったアイドルの卵たち

みなさんはアップアップガールズ(仮)という名前をご存知でしょうか?

2011年に結成された7人組の女性アイドルグループで、今年で結成から丸5年を迎えます。

実はメンバーは元々、全員がハロー!プロジェクトの研修生『ハロプロエッグ』として活動していた少女たちでした。

しかし同期や後輩がモーニング娘。やスマイレージ(現アンジュルム)、またソロアイドルとして次々に夢を掴んでいく中、7人の”アイドルの卵たち”はついにその未来を孵化させることなく、ハロー!プロジェクトでの研修活動を終えています。

理由は体制変更に伴う研修課程修了。在籍者50人の中でハロプロアイドルとしてCDデビューできずに卒業を迎えた7/33、それが彼女たちの現実でした。

「エッグは全員、ハロー!プロジェクトに憧れて入ってきて、必ず上に行きたいという思いでやっていたんです。」

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「アイドルの道が閉ざされてしまった」

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“この子たちはまったく光るところがない”コンプレックスと戦い続けた5年間

デビューの可能性が無くなったことで、1人、また1人と進路が分かれていくかつての候補生たち。

しかしその中で、長年彼女たちを見ていた事務所スタッフの”ハロプロとは違うタイプのアイドルを作ることで気づけなかった才能を掘り起こせるのではないか”という発案により、一旦は活動終了を通達されていた現在の7名が、新グループのオリジナルメンバーとして選出。後に「アップアップガールズ(仮)」という名前が正式発表され、プロジェクトは始動します。

・・・ところが、活動を始めた彼女たちはいきなり、大きな壁にぶつかります。そこにあったものは一度プロデビューできなかった現実から生まれてしまった、元アイドル候補生たちの”強烈なコンプレックス”でした。

「私はスマイレージ(第1期、第2期)のボイトレを担当していたんですが、そのときのマネージャーさんがアップアップを始めて、その縁ですね。今でもそのマネージャーさんに言われますよ、「先生、初めて会った時に何て言ったか覚えてますか? “この子たちはまったく光るところがない”って言ったんですよ」って」

出典ミュージック・ストリート 原田和典[Girls!Now] 第39回 ボイストレーナー・杉浦良美さんインタビュー / http://dot.asahi.com/musicstreet/

「でも本当、そうだったんです。何の変哲もないなと思って。しかも、何かにものすごくおびえてて、小鹿みたいだった。℃-uteやBerryzは自己アピールが強くて、ぐいぐい来るんだけど、アップアップはどんどん引いていく感じだった」

出典ミュージック・ストリート 原田和典[Girls!Now] 第39回 ボイストレーナー・杉浦良美さんインタビュー / http://dot.asahi.com/musicstreet/

当初はグループ意識どころかステージに立つ自信すら全く持てず、ライブを行っても個々で立っているような感覚で、ずっとバラバラだったという彼女たち。

しかし結成から1年後、長い葛藤の末に初めてオリジナル曲の『Going my ↑』をもらった瞬間、そこにあった歌詞はついにメンバーの気持ちを動かします。

一緒に夢語ってた子がミニスカートで輝いてる
頭でわかってるんだけど悔しくて涙した

出典アップアップガールズ(仮)『Going my ↑』

泣けた経験できっとこの花咲かせるさ

出典アップアップガールズ(仮)『Going my ↑』

そして続くオリジナル曲『アッパーカット!』でアグレッシブなパフォーマンスが注目されたのをきっかけに、彼女たちは通常のアイドルライブやイベント出演だけに留まらず、まるで何かを吹っ切るように、様々な挑戦を自らに課していきます。

研修時代にはまったく行った事がなかった「対バンライブ」「大型フェス」への出演に始まり、1年間に渡る過酷な「全国47都道府県ツアー」、一斉休憩なしで臨む「2時間ノンストップライブ」

出典 YouTube

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またそれらの負荷を怪我なく乗り切るために始めた本格的なフィジカルトレーニングは、激しいライブパフォーマンスから育まれた探求心が彼女たちにいつしか桁外れの体力を授け、「2度のホノルル駅伝完走」「富士山頂でのライブ」など”アスリート系アイドル”としても大きく話題を呼ぶことに。

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そしてグループが苦難を乗り越えるごとに少しずつCD売上やライブ動員も増え、彼女たちの立つステージは一歩ずつ、ですが確実にステップアップしていきます。結成から2年で横浜BLITZ、3年で中野サンプラザ、4年で日比谷野外大音楽堂。

そして結成から5年後の2016年6月12日、彼女たちがついに見たのが、グループにとって最大規模となる”あのツアー会場”からの景色でした。

一度遠ざかった者だけが、伝えられる「明日の夢」

冒頭で紹介した森咲樹の言葉には、実は続きがあります。それは、こんなメッセージでした。

「でも私は、アプガファミリーと一緒ならがんばれるなと思ったんです。私たちは不安になりながらも、前向きに突っ走っていこうと思っています」

出典 https://www.barks.jp

彼女が後方の”満員じゃない現実”に見ていた不安、それはかつて全員が見ていた”戦力外アイドル”という過去の影でもありました。

アイドルは求める人がいなくなった瞬間、その役目を終えます。そして一度夢を失ったアイドルたちが選んだのは、続ける限り永遠に過去と向き合っていかなければならない、そんな道でした。

・・・しかし、彼女たちは弱さや不安と対峙しても、それでも走り続けることを決めました。その決意の中には、こんな意味があります。

「『一回負けてもまた頑張ればもう一度上がって来られるんだな』というのは、一回そういう経験をした人でないと伝えられない」

出典 http://enjoy.sso.biglobe.ne.jp

一度遠ざかった者だけが伝えられる「明日の夢」。その尊さを誰よりも知っているからこそ、アップアップガールズ(仮)は今日も影を受け入れ前を向き、全力のアイドルであり続けているのです。

・・・そして彼女たちの物語は、この先も。

出典 YouTube

「本当に埋まるのか、たくさんの不安はあると思うんですけど。でも私たちもう下を向かないと決めたし、前を向いてこの7人で突き進むと決めた」

出典 https://www.barks.jp

コンプレックスを抱えたアイドルたちが、涙を勇気に変えて日本武道館に勝負を挑む、そんな2016年。

そのステージの思いを繋ぐ最後のピースは、きっと今彼女たちに気づいた”あなたの存在”です。

<最新ニュース>「アップアップガールズ(仮) Road to 武道館 陸の孤島 秘境決戦」決定!

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twitter→ @drifter_2181 / 1983年生まれ。北海道在住。2012年にブログ「小娘のつれづれ」をスタート、2014年からはフリーライターとしても活動。デビューから応援しているアイドルの再評価をきっかけに、新規 / ライトファンを意識したエンタメ記事を日々研究しています。

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