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「官邸から炉心溶融という言葉を使うなという指示があった」。福島第一原発事故を巡り東電が設置した第三者委員会のこの調査結果、検証方法に各所から疑問の声が挙がっています。

注目すべきはこの第三者委員会にも、先日掲載の記事「汚職の守り神…舛添、小渕、猪瀬を擁護した『逆ギレ弁護士』の正体」で取り上げた逆ギレ弁護士こと佐々木善三氏が名を連ねているという事実。

メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者・新恭さんが、会見での委員会の言を引きながら、彼らの調査のでたらめさを強く非難しています。

マムシの善三、今度は東電の炉心溶融隠ぺいを擁護

またしても「マムシの善三」がらみの話をしなければならない。

舛添問題のずさんな調査報告書で一躍、悪名をとどろかせた「マムシの善三」こと、佐々木善三弁護士元東京地検特捜部副部長)が、

こんどは東京電力の炉心溶融隠ぺい疑惑でも、「第三者検証委員会」を名乗って片手落ちの調査報告書を作成し、依頼主に大サービスした。

福島第一原発事故から2か月もの間、東電が「炉心溶融」ではなく「炉心損傷」だと世間を欺いたのは、官邸の指示があったからだと思わせる内容の報告書を、当時の官邸の主である菅直人元首相らに何一つ聞くこともなく作成し、公表したのである。

福島第一原発の原子炉は2011年3月14日から15日にかけて次々と「炉心溶融」に陥った。

原子炉建屋が爆発するなど苛烈な事故の状況がテレビに映し出され、いわゆる「原子力村」に属さない専門家は「炉心溶融」との見解を明らかにしていた。

ところが東京電力は「炉心損傷だとウソをつき続け、しぶしぶ「炉心溶融」を認めたのは約2か月も後のことだった。

この問題を継続して追及していた新潟県の技術委員会に対し、東電は「炉心溶融」の判断基準がなかったと言い逃れてきたが、今年2月24日になって社内に「炉心溶融」の判断基準マニュアルがあったことを認め、新潟県に謝罪した。

同日の朝日新聞によると、この判断基準に従えば事故3日後の3月14日には1、3号機について「炉心溶融」を判定できていたという。

マニュアルがあったのに生かされなかったことについて、東電の言い訳は次のように、きわめて不自然だった。

新潟県の技術委員会の求めで当時の経緯を調べ直すなかで、判断基準の記載があることに社員が気づいた。

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マニュアルはイントラネットで社員が共有していたはずである。いくら東電がいい加減な会社でも、このように重要なマニュアルを見つけるのに、なぜ5年もかかるのか

東電はマスコミの追及をかわすため自ら説明するのをやめ、「第三者の協力を得て、経緯や原因を調べる」と、佐々木弁護士らの第三者検討委員会」なる隠れ蓑にふたたび逃げこんだ。

2013年、国会事故調への虚偽説明問題で同委員会を設置し急場をしのいだのに味をしめたのだろう。

舛添問題の調査報告書についての記者会見で「事実認定とはこんなもの」「第三者委員会とはこんなもの」と独善的な素顔をのぞかせた「マムシの善三」がよほど頼りになるらしい。

なぜ広報担当者はマイクに届くよう囁いたのか

今回の東電「第三者検証委員会」は、田中康久弁護士元仙台高裁長官)を委員長とし、佐々木ともう一人の弁護士が委員をつとめている。

小渕優子の政治資金収支不一致問題では佐々木弁護士が委員長、田中弁護士が委員だったが、東電では前回、今回とも田中弁護士が委員長として前面に立つかたちになっている。

田中弁護士の高裁長官という経歴は、客観・中立の衣を纏うのにすこぶる都合がいいようだ。表に76歳の元高裁長官を押し立てて、実務の中心を担ったのが63歳の佐々木弁護士であろう。

彼らの「第三者検証委員会」は検証結果報告書をまとめて6月16日、記者会見した。

驚いたのは、調査手法が舛添のケースとそっくりであることだ。舛添前都知事の公私混同問題について、「第三者」は事実関係をほとんど舛添やその近親者の言い分だけで認定し、多方面から話を聞いて客観性を確保する作業をあえて避けた。

東電に関しても、ヒアリングをしたのは東電の社長や幹部ら内部の60人に限り、当時の官邸や政府関係者からは一切、聞き取りしていない

報告書の次の二つの記述に注目してみたい。

清水社長が、記者会見に臨んでいた武藤副社長に対し、広報担当社員を通じて、「炉心溶融」などと記載された手書きのメモを渡させ、「官邸からの指示により、これとこの言葉は使わないように」旨の内容の耳打ちをさせた経緯があり、

この事実からすれば、清水社長が官邸側から、対外的に「炉心溶融」を認めることについては、慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される。

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その一方で、このような記述も見られる。

この点につき、当第三者検証委員会は、重要な調査・検証事項の一つと捉え、清水社長や同行者らから徹底したヒアリングを行ったが、官邸の誰から具体的にどのような指示ないし要請を受けたかを解明するには至らなかった。

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これはまことに奇妙な調査報告と言わざるを得ない。

徹底的にヒアリングして官邸の誰からどのような指示を受けたか分からないにもかかわらず、官邸が「炉心溶融」を認めることについて慎重な対応を東電に指示していたかのように書いているのである。

清水社長はその件に関して記憶していないという。いくら心理的パニックに陥っていたとしても、武藤副社長に、官邸からの指示として渡したメモの内容について忘れてしまったとは考えにくい。

しかも、武藤副社長にメモを渡しながら、わざわざ「官邸からの指示で」とマイクに届くように囁いたのが広報担当社員であったという事実は重大な疑念を呼び起こす。

広報の社員なら、マスコミ各社のマイクやボイスレコーダーがテーブル上に並んでいるのを強く意識しているはずであり、そのためにこそ声を出さず、メモという形で伝えるわけである。

ただし、「官邸が…」と声を出すよう、清水社長から広報担当社員へ指示があったとすれば、清水社長が意図的に官邸に責任転嫁した可能性もあり、「記憶がない」で押し通している理由もなんとなくわかる。

説明を求める菅元総理に委員会が取った行動とは

それにしても、この第三者委は、なんといい加減なことだろう。東電内部のヒアリングで事実関係がはっきりしないのなら、当時の菅直人首相や枝野幸男官房長官に聞きに行けばいいだけではないか。

官邸というからには、この二人を除くわけにはいかないだろう。政権の座からすでに退いている二人から聞くのは難しいことではあるまい。記者会見ではその点について次のようなやりとりがあった。

記者「官邸の人たちにはヒアリングしなかったのか」

田中委員長「していない。第三者委員会は調査権限が限られていて、任意でしか調査できない。今回は清水社長がはっきりしたことを言わないので、たくさんの人から聞かねばならず時間が足りない」

記者「要請はしたのか」

田中委員長「していない。短期間でやるのはむずかしい」

記者「官邸からの指示は本当にあったのか、雰囲気を感じたのか、もしくは清水社長が忖度したのか」

田中委員長「保安院に情報は官邸に上げてから発表するようにという指示があり、炉心溶融についてもできるだけその言葉を使わないようにという指示が出ていた。それと突き合わせると、どういう事実認定になるかということだ」

この人たちはいったい何を調べているのだろう。簡単な事実調査を行わず、無理な推認で事実認定をしようとしているのではないか。

菅元首相や枝野元官房長官に当時の話を聞くのに、さほどの時間はかかるまい。

自分たちで、「炉心溶融」と言わないよう官邸から東電に指示があったかどうかをポイントにあげているにもかかわらず、当時の官邸サイドから何ら聞き取りをしないというのは、真相を追求しようという気が最初からない証拠である。

これについて、当時の官邸の主、菅直人元首相が怒るのは無理からぬことだ。東電第三者委の会見の翌日、菅は自身のブログにこう書いた。

東電の自称「第三者検証委員会」が発表した報告書で、清水社長が「炉心溶融」という言葉を使わないようにと社内に指示していたことを明らかにした。

それに加えて「清水社長は官邸側から、対外的に『炉心溶融』を認めることについては、慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」と報告書は述べている。

しかし、当時総理として官邸にいた私が清水社長に「炉心溶融」という言葉を使わないように指示したことはない。

当時官房長官であった枝野氏も同様に「ありえない」と言っている。私は早い段階で、炉心溶融(メルトダウン)の可能性は外部の専門家からも聞いていた。

しかし原子炉を直接運転しているのは東電であり、東電からの報告がないのに推測で言うことはできなかった。

自称第三者検証委員会は「官邸側」という表現を使いながら、この件について官邸の政治家には一切聞き取りをしておらず、東電にとって都合のいい結論に導いている。

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菅は6月17日の午前中に田中委員長に電話し、「報告書について説明を受けたい」と申し入れた。菅によると、田中委員長は他の委員と相談し、その日の午後「説明義務を果たす気はない」と電話で回答してきたという。

委員会が当時の官邸メンバーに接触しなかったわけ

官邸側からヒアリングをしない以上、清水社長の証言がポイントとなる。ところが、先述したように、清水社長は当時の記憶がないというのだ。記者会見における関連の発言内容をいくつか並べてみよう。

田中委員長「清水社長がこの人からこう言われたとはっきり言ってくれればよかったんでしょうが…」

佐々木委員「清水社長が精神的に追い込まれ、細かい記憶がないと周囲の方もおっしゃり、ご本人にも(4時間にわたり)質問したが、よくおぼえておられなかった」

肝心の清水社長が、官邸から指示があったかどうかの記憶がないというのに、どういう判断で「官邸側から炉心溶融について慎重な対応をするようにとの要請を受けたと理解していたものと推認される」と、勝手な解釈を報告書に書けるのだろうか。

田中委員長はこう言った。

清水社長は記憶がないということだったが、流れからいくと、なんとなく炉心溶融の問題を含めて官邸とか保安院の意見を聞いた方がいいというようなニュアンスでおっしゃているような感じはしました。

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なんとなく」「流れ」「ニュアンス」「感じ」…そんなあやふやなことで「官邸の指示」があったと推認しているのだ。

第三者委は「炉心溶融を東電が隠ぺいしたとは理解していない」と言っているが、その根拠は「官邸からの指示」があったと推認したからである。

にもかかわらず、その指示があったかどうかは東電内部で確認できないばかりか、当事者である菅元首相ら、当時の官邸メンバーに問合せすらしていない。

調査報告公表後、東電の広瀬現社長は隠ぺいを認め謝罪したが、「官邸の指示」についての追加調査をする気はなく、第三者委を利用した「免罪符」は持ち続けるかまえだ。

こうしてみると、第三者委は、責任追及をかわしたいであろう東電のために、あらかじめ責任転嫁ストーリーを組み立て、それに沿った証言を得るためのヒアリングをしてきただけではないかという疑念さえ浮かんでくる。

当時の官邸メンバーからの聞き取りをして否定されたら、責任転嫁ストーリーが崩れてしまう。それを計算していたがゆえに、菅元首相らへのアプローチを避けたのではないだろうか。

前号にも書いたが、「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長、久保利英明弁護士は「第三者とは名ばかりで、経営者の依頼により、その責任を回避し、或いは隠蔽するものが散見されるようになった」と憂慮している。

「第三者とは名ばかり」の報告書が、またひとつ加わった、ということであろう。

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