出典 http://www.flickr.com

記事提供:messy

2015年の合計特殊出生率※は、1.46でした。

2005年に1.26と過去最低の数字を打ち出して以降、年々微増をつづけてきたものの、2014年にはまた1.4と前年を下回る数字だったので、朗報と受け取る人も少なくないかもしれませんが、国が目標に掲げる1.8とはほど遠いのが現実です。

※15~49歳の女性の、年齢別出生率を合計した指標。女性が平均して一生のあいだに何人の子どもを産むかを表す数値。

「少子化ヤバイ!ほら、早く産んで!若いうちじゃないと産めないし!」という社会から女性へのプレッシャーが増していく昨今。

女性の人生には、子どもを持たない選択肢もあります。が、「子どもを産んで育てる人生を望まない」という女優の発言が大いに取り沙汰されるのを見るにつけても、「女性は子どもを産むもの」という決め付けはいまだ根強いと感じざるをえません。

そしてそれは、「少子化は、子どもを産まないオンナのせい」という考えにつながりかねず、そら恐ろしさを覚えます。

それよりも「いま産みたい人、いつか産みたい人が、産みたいときに産めるようにする」を目指すほうがよほど現実的。

にもかかわらず、「結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして」として昨年3月に閣議決定した「少子化社会対策大綱」も具体的に何がどう動いているのか、いまひとつ伝わってきません。

卵子凍結保存プロジェクトの現在

そんななか、画期的な少子化対策を実施しているのが千葉県・浦安市です。

千葉県は昨年の合計特殊出生率は1.32と全国平均を下回っていますが(最低は東京の1.15)、同市は1.1とさらに低い数字。

少子化への非常に強い危機感から、同市が順天堂大学浦安病院と組んで、「20歳から34歳までの浦安市民は、低額で卵子凍結保存できる」という世界でも類をみない政策を打ち出したことは以前お伝えしました。

2015年春に発表され、同年7月からセミナーをスタート。

このセミナーは妊孕能(にんようのう=妊娠する力)と年齢の関係、および卵子凍結保存とはどのようなものかを正しく理解したうえで、その実施を検討するためのものです。

浦安市は、去る6月16日に記者会見を行い、このセミナーを受けた女性のうち1名がすでに採卵を終え、11名が採卵を希望し準備中であると発表しました。

前出の記事が掲載された時点では「4人が凍結保存を具体的に検討」だったので、そこから大きく前進したことになります。

左=順天堂大学浦安病院 菊地医師、右=浦安市 松崎市長。

採卵をする/した女性の年齢は30歳前後に集中し、うち既婚者は2名含まれます。今回の会見では、女性らの「希望の理由」も明らかにされました。

・約3分の1…社会性不妊によるもの

社会性不妊=本人に病気など健康上の理由がなく、「早く産みたいのに、条件が整わなくていまは産めない」状態にあること。

不妊治療中の年上友人らから、体外受精の厳しさを聞かされるなどして、「このままだと産めるときになっても、妊娠できないのでは」と不安にかられて、卵子凍結保存を決意。

・約3分の2…健康不安によるもの

子宮内膜症や多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群など婦人科疾患が指摘されている、精神疾患で投薬中、または夫の疾患によって今は受精卵を作れない、などの理由で卵子凍結保存を決意。

これに対して、同院・菊地盤医師は「なんとなく、という気持ちで採卵を決めた人はいない、みなさんそれぞれに切羽詰まった事情があって凍結保存を決断されている」とコメントしています。

これは、同市がこの政策を発表したときに多数寄せられた「仕事や遊びなど自分のことを優先して、出産を先延ばしにするのは女性のワガママだ」という市民からの声へのアンサーでしょう。

そもそも採卵は、簡単にできるものではありません。自宅、または通院で排卵誘発し、数日おきに病院でチェックを受け、採卵当日は入院もします。

女性にとっての身体的、精神的、時間的負担が小さくないため、「なんとなくのワガママ」でできるはずもないのです。

この「時間がかかる」という事実を踏まえ、採卵希望中の8名は長期休暇が取れるタイミングを見計らって、採卵時期を決定するという説明もありました。

卵子凍結保存では、会社を休めない

一方で、「採卵を希望しながらも、凍結保存のための受診まで至らなかった」女性たちの理由も、時間にあります。

既婚女性は「卵子凍結保存するよりも、早く妊娠出産できるよう調整したほうがいい」と判断して体外受精を選択し、未婚女性は「受診の時間がない」ために凍結を諦めています。

通院のみならず、排卵誘発中は副作用が起きる可能性もあり、その際はすぐに病院で診てもらう必要があります。そうでなくても、安静にしておくべき期間。ハードワークは禁物です。

卵子凍結保存や不妊治療はきわめて個人的でデリケートなことであるため、それを理由に会社を休むことはおろか、周囲の人に話して理解を得るのもむずかしいのが実情でしょう。

浦安市は費用を助成することで、卵子凍結保存を希望する女性にかかる負担の一部を軽くしました。

これによって将来、「産みたいときに産める」がどこまで広がるかは、いまはまだわかりません。会見では松崎秀樹市長が、

「今回の12名という数字を成果としてとらえ、この事業は有効だと考えています。出産に公費を投じるのは当然のこと。本来は国がやるべきことだけど、いまは浦安市がその歯車を動かしたと思っています」

と、まだ始まったばかりであることを強調しながらも、強い手応えをアピールしました。

卵子凍結保存への公費助成について、他の自治体から浦安市への問い合わせは少なからずあるとのこと。けれども、実施に向かって動きが見られるところはないそうです。

卵子凍結保存だけが「自治体による少子化対策」ではないのはいうまでもありませんが、では自分が住む自治体は何をやっているのか、一度チェックしてはいかがでしょうか。

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス