記事提供:まぐまぐニュース

NHKの長寿番組「おかあさんといっしょ」で「うたのおにいさん」として活躍した杉田光央被告の初公判が6月14日に行われました。

メルマガ『今井亮一の裁判傍聴バカ一代』では、裁判を傍聴した今井さんが、なぜクリーンなイメージの「うたのおにいさん」が覚せい剤に手を出したのか?その経緯と現在の被告の様子を細かく伝えています。

「歌のお兄さん」、あぁこの日がきたなと

さぁ、お待たせしました、ちょっと時空を超えちゃうけども、やっぱこれをご報告しようっ。

14日(火)10時~11時、東京地裁815号法廷(52席、野原俊郎裁判官)で「覚せい剤取締法違反」の新件!

開廷前に2分間のテレビ撮影が入った。たとえばTBSのニュース映像、俺がどこにいるか、頭頂部を探さないで~(笑)。

撮影が終わり、傍聴人は20数人だったか。記者たちが多く、一般傍聴人はほんの数人。ただ、覚せい剤の裁判はシンプルだってことで、見学の団体がよく狙う。危ないのだ。

被告人は非身柄。良い感じの黒スーツに黒ネクタイ。やけに日焼けしてつやつやしてる、そこがちょっと怪訝に感じた。

人定質問によれば51歳。職業をこう答えた。

被告人「歌手、そしてミュージカル俳優として活動していました」

公訴事実は、今年4月13日頃、渋谷区内の自宅で覚せい剤を加熱、気化させ吸引して使用し、4月13日、自宅で覚せい剤0.374gを所持したというもの。認否は…。

被告人「はい、間違いありません」

聴き取れたところを時系列に沿ってまとめると、おおむねこういう展開なのだった。

大学を卒業後、歌手などの音楽活動をスタート。その後、NHKの「おかあさんといっしょ」のオーディションに合格、4年間、「歌のお兄さん」(正しくは「うたのおにいさん」か)として同番組に出演し続けた。

同番組を「卒業」後、ファミリーコンサートのメインスタッフとして全国をまわった。NHKさんも手広くいろんなことをやるんだね。

その間、2005年にバリ島へ行ったとき、興味本位で1度だけ覚せい剤を使用した。楽しい気分を味わうことができた。そのときはそれで終わった、興味本位だったので。

2014年、事務所をかわり、ファミリーコンサートから外れ、「むしゃくしゃした気分」になった。被告人質問ではこう述べていた。

被告人「いちばん大きな理由はそれです。責任を持っていた大きな仕事から外れることになり、これからどうなるんだろう…」

ずいぶん不安な気持ちになったんだそうだ。

同年、渋谷のセンター街を歩いていると、ある男と目が合った。「何かほしい?」と言われ、「エスある?」と言った。※エス=S=スピード=覚せい剤。なぜ「エス」などという語が口から出たのか、誰も突っ込まなかった。

そうやって買った覚せい剤を使用したら、「前と同じように楽しい気分」になれた。

その後、売人に電話して最寄り駅付近で覚せい剤を買うようになった。最寄り駅まで来る売人の中に、サムと名乗るイラン国籍の男がいた。

2015年2月、「住むところが見つからない」とサム。被告人のマンションは広かったし、サムは「礼儀正しい、いい人」だったので、被告人はサムが可哀想になり、「お金を払ってくれるなら」と同居することに

※マニア諸氏は「同性愛か?」と思うでしょ。俺も思った。が、そういう話は全く出なかった。

2015年8月、金銭的な問題から、マンションを手放して転居することに。「私はビザがない。お金を(半分?)持つから、一軒家にしてくれ」とサムが言い、逮捕時の住居地を借りた。被告人は1階、サムは2階、お互いに干渉しない生活だった。

2016年4月13日の午後6時頃、被告人はサムから覚せい剤(量不明)を3万円で買い、1階のトイレで、以前売人からもらっていたガラスパイプに入れ、ライターであぶって加熱、気化させ使った。

サムから「質のいい覚せい剤」と聞いており、たしかに気持ち悪くなることもなく、いい覚せい剤だった。

そして警察がやってきて…

なぜ警察が踏み込んだのか、明かされなかったが、甲1号証は捜索差押調書。こんなやり取りがあったそうだ。

警察官「あなたは覚せい剤を持っていますか?」

被告人「はい持っています。この中に入っています」

ソファーの上に置かれた紫色のポウチに、チャック付きビニール袋に入った結晶やガラスパイプなどが入ってたんだという。

このときのことを被告人質問で尋ねられ、被告人はこう答えた。

被告人「あぁこの日がきたなと思いました

10時13分、検察立証が終了。ちなみに検察官は2人。指導係の中堅男性と、完全に“お人形アイドル女子”というべき新人女子だ。女子のほうが主任検察官。

情状証人として、長身を濃いめのグレーのスーツに包み、白髪混じりの短髪の、園原敏彦裁判官をものすごく格好良くしたような年配男性が、証言台のところに歩み出た。

被告人の身内かと思いきや、いま被告人がいる長野ダルクの代表、竹内剛さんなのだった。

長野刑務所や少年刑務所へ、薬物からの離脱の指導員として招かれ、厚生労働大臣賞とか県知事賞とか受けてるんだという。あとでネット検索したら、ある高校での講演の様子がヒットした。へぇ~!

弁護人「ダルクで(被告人と)いっしょに暮らし、どういうことを?」

証人「1日3回のミーティング…規則正しい私生活の立て直しを…クスリによって1日のリズムを完全に崩しています。これを立て直すのが先決…」

自身も薬物依存だったらしい。メモしきれないところを「…」でつないだが、証言はきっぱりして迫力があった。昔は任侠方面だったんだろう、と思えた。

あそうそう、この証人も、おっそろしく日焼けしてるのだった。ダルク所有の畑で、入所者と日々農作業をしてるのか。とすれば、それはすごく良いことだろうと思う。

薬物から立ち直るためには、「自分の過去を見つめ直すことで、正直な生き方がすごく楽だと気づくこと」が何より大事なんだそうだ。クレプトマニアにも言えるんじゃないか。

大した人物のもとにいるのでもう大丈夫、では検察のメンツが立たない。アイドル女子の検察官はこう突っ込んだ。

検察官「(ダルクへは)入るのも出るのも任意なんですか?」

証人「(きっぱりと)そうです」

検察官「(薬物を)ヤメることができた人はいますか?」

証人「(きっぱりと)もちろんです」

検察官「再び(薬物に)手を出す人もいますか?」

証人「(きっぱりと)もちろんです」

検察官「どこが違うんですか」

証人「自分がどこまで“底”に気づくかです

「底」とは何か、尋ねず…。

検察官「本人の意思次第ですか」

証人「(きっぱりと)意思ではヤメられません。正直になれるかどうかです

弁護人からの補充質問に答えて証人は、「保釈をとって自分からダルクへ来る人は滅多にいない。そこは(本件被告人は)大変前向きと思う」と述べた。

10時27分、被告人質問が始まった。その内容は、以上にだいぶ出てしまってる。一部拾えば…。

検察官は、前にも「覚せい剤疑惑」があったことを持ち出した。2000年12月に週刊誌が「覚せい剤疑惑」を報じたらしい。

被告人は「(そのときは)使っていません」ときっぱり否定し、事実ではない報道に「とても嫌でした」と述べた。

サムとの同居について、裁判官は、売人と住めば覚せい剤の入手が楽だからと、なんとしても言わせたがった

問い詰められて被告人は、「(いっしょに住めば入手が)楽だな、便利だな…外でびくびくして受け取るよりも…」と述べた。

裁判官「そうでしょ!薬物を安全に入手したいから!

被告人「それがぜんぶじゃありません」

やっぱサムの人間的な魅力があったんだろうと思えた。家賃折半なら助かるし。

何より、売人と住めば検挙される可能性が飛躍的に高まる。圧倒的に危険度は高い。

しかしっ!裁判的には、売人と同居は「薬物を安全に入手したいから」でなくてはダメなのである。長く傍聴を続けてると、裁判は“お利口ちゃんの頭の中の儀式”という面が確かにあるように思う。

求刑は相場通り懲役1年6ヶ月。被告人は最終陳述でこう述べた。

被告人「今回、自分が犯してしまった過ちが…心より…薬物依存…一生治らない病気…1日1日、手を出さないクリーンな1日を、一生積み重ねていきたい…若い世代にも伝えていけるよう、日々精進していきたいと思っています」

希望に満ちた新しい人生の幕開け、みたいなものを俺は感じてしまった。竹内剛さんという人物の魅力に心酔してるのかな、とも。

判決は6月20日(月)10時と決め、11時12分閉廷。

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