「盲導犬を連れているからタクシーに乗ってもらっては困る。」目の見えない人にとってこれほど理不尽な言葉はないでしょう。目が不自由だからこそ、盲導犬だけではなくタクシーに頼りたい時だってあるのです。歩けない距離や具合が悪い時など誰だってタクシーを公共機関の乗り物として利用するはず。

ところが最近イギリスで「車が汚れると困るから犬はお断り」と言われて乗車拒否されるケースが相次いであるタクシー会社が批判を集めています。

24歳のチャリティーワーカー、ロージーさん

ロージーさんは、市内の盲目の人のためのチャリティー団体でボランティア活動をしている24歳。このほど、ロンドンで行われるミーティングに参加するために盲導犬を連れてロンドン市内の地下鉄駅の近くからタクシーに乗車しようとしました。

ところが、彼女が予約してあったタクシーに近付くと、そのタクシーがロージーさんから離れようとでもするかのように発進し出したのです。

「メルセデスで高級車なんだよ。だから犬はお断り」

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ロージーさんはそのタクシーに走り寄って「どうして発進しようとしたのか」と尋ねると「犬は乗せられない」とUber会社のタクシー運転手は言ったそう。「この車はメルセデスの高級車なんだ。だから汚されちゃ困る。犬はお断りだ」という信じられない発言が返って来たのです。

タクシー会社UBERとは

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日本では馴染みのないタクシー会社ですが、2009年に米サンフランシスコを拠点に設立され、2014年にはワールドワイドのタクシー会社として広がっています。イギリスでも「UBER」というロゴが入ったタクシーをよく見かけますが。イギリス本来の「黒キャブ」ではなくセダンタイプのタクシーです。

運転手はほぼ100%モスリムの人たち。イギリスではモスリムの人たちはタクシードライバーになるのは一般的。その理由は、他に仕事を見つけにくいからだろうと言われています。

運転手が誰であっても、どんな種類の車であってもタクシーである以上、公共の交通機関に違いありません。人を乗せる仕事をしているなら、危険人物などよほどのことがない限り、乗車拒否はするべきではないという認識が私たちの中にもあるでしょう。

ロージーさんはこの出来事に強く怒りを覚えたとメディアに語っています。「タクシーの運転手になることを自分が選んでおきながら客を乗せないのはどういうことだ。私は自分で目が不自由になることを選んではいないのに。」盲目の人のためのチャリティ団体でボランティアをしているロージーさん自身も目が少し不自由なために、今回タクシーを予約したのです。

驚いたことに、そのタクシー運転手はロージーさんを拒否しておきながら「予約していたからここにいる。乗らなくてもキャンセル代5ポンド(約750円)を払ってもらう」と言ったそう。このキャンセル代は後にロージーさんにタクシー会社の方から払い戻しがあったそうですが、何とも呆れるタクシードライバーです。そしてこれは明らかに違法行為。

ロージーさんはこの一件をロンドンタクシー協会に苦情として訴えました。UBERは国営のタクシー会社ではなくプライベートカンパニーとしての扱いになっていますが、それでもタクシー運転手になる規約と条件は国営タクシーと同一のもの。それを守っていないタクシー運転手は、免許剥奪の可能性もあるとタクシー協会会長もコメント。

更には裁判で訴えられることもあり得るでしょう。というのも、過去にロージーさん以外にも、このUBER会社のタクシードライバーが、盲導犬を連れた盲目の女性の乗車を拒否するという出来事があったのです。

「何度も侮辱を味わいました」

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目の不自由なジェイドさんは、これまでに何度かUBERのタクシーを使おうとしたことがあるそうです。でもその度に悔しい思いをしたのだとか。ジェイドさんがメディアのインタビューで訴えたことで、UBERが「障がいのある人を差別している」ということが公になりました。

「親切」をモットーにしているというUBERですが、親切どころか客に不快感を与えて差別している様子。そして「車を汚されては困る」という理由以外に「犬は宗教上受け付けられない」というとんでもない発言をして、盲導犬の乗車を断るUBERドライバーもいるのだから開いた口が塞がりません。

このような「違法行為」はもちろん罰金を課せられます。タクシードライバー自身がそのような発言をしているのであれば、タクシー運転手になどなるべきではないでしょう。ジェイドさんからインタビューを受けたメディア側も「タクシー会社は人を選ぶべきではないし、盲導犬を連れた障がいのある人を侮辱する行為は直ちにやめるべきだ」と強く批判しています。

誰でも気持ちよく利用したい

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ロージーさんは「違法というだけではなく、盲目の人から公共の乗り物を使うことの自信を奪います」と訴えています。目が不自由な人は、当然、日常生活に不便さを強いられます。公共交通機関さえも自由に使えないのであれば、気持ちが萎縮してしまう人がいて当然ではないでしょうか。

乗車を拒否されたジェイドさん(23歳)も裁判へ持ち込みました。30万円ほどの罰金の支払いを命じられた運転手。裁判所でも「盲導犬=ペット」と言う発言をしていたそうで、そのような認識は持つべきではありません。

立て続けに起こっている「盲導犬を連れた人の乗車拒否」のニュースでネット上でもUBERに批判が殺到。「そんなドライバーはクビにしろ!」「あり得ない」「運転手は言い訳をするな」「タクシーの意味がわかっているのか⁉」といった声が。世間が怒るのも無理はないでしょう。

訴えられたドライバーも「じゃ、罰金を払えばいい」という気持ちではなく、人としても大切な何かに欠けていたということに気付いてほしいですね。筆者は滅多にタクシーを利用しませんが、UBERは利用したくないなと思いました。障がいを持つ人もそうでない人も気持ちよく公共の交通機関を利用できるようにしたいもの。

今後、世間の訴えが全てのタクシードライバーに届き、目の見えない人にとって盲導犬の必要性を理解して自信を失うきっかけを彼らに与えないように、タクシードライバーとしてきちんと仕事をして欲しいと願う筆者です。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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