日本テレビ「月曜から夜ふかし」でブレイクし、活動の幅を広げている「芸人のももち」こと柏崎桃子さん。ももちさんは、芸人として活動する傍ら介護士としても勤務しています。

若い世代であっても、いつかは直面することになるのが「家族の介護」。中には、育児と介護のタイミングが重なる家庭も増えており、他人事と考えてはいけない事態が起きています。

そこで今回Spotlight編集部では、ももちさんに介護に関するインタビューを敢行。前回は、介護士の労働環境と介護現場の実態についてお聞きしましたが、今回は家庭での介護と家族の心構えについてお聞きしました。

家族がやるべきこと

出典Spotlight編集部

ーー昨今、介護施設の利用者さんが虐待されるなど、痛ましい事件がニュースになりましたが、そういったことを防ぐために家族ができる対策はありますか?

ももち:うーん…絶対スタッフさんと話したほうがいいですよ。私が前にいた施設では、お茶会のようなイベントを開いて家族の方と交流する機会を設けていました。

介護する側も人間なので、利用者さんに引っかかれたり叩かれたりすれば、心も体も傷付きます…。例えばそういうことが起きてしまった時に、私たちが「痛いからやめて!」と強く言ったとします。もし、家族の方と信頼関係が築けていなければ「ひどいことを言われた」という利用者さんの声がそのまま伝わって、家族の方は「何をするんですか!」とネガティブな印象を私たちに抱いてしまうのではないでしょうか。

でも、家族の方が面会にいらっしゃる度に、普段の利用者さんの様子を逐一お伝えするようにすれば、そういった誤解は防げると思うんです。

だから、スタッフさんとはきちんと会話した方がいいと思います。それから施設に預けたら終わりではなく、家族の方に利用者さんとたくさん関わって欲しいなと思うんです。

ーーマメに面会に行くようにするということですか?

ももち:もちろん各ご家庭の事情もあるでしょうし、面会に来ることが大変な場合もあると思います。1ヶ月に1回、1年に1回でもいいんです。少しでも話せる時間があるといいなというのはずっとお話しています。

なぜなら、私たちも家族の方が来やすい環境を作らなきゃいけませんし、家族の方が定期的にいらっしゃることで、私たちがより一層気を引き締めなければなりません。

ですから家族の方の出入りが多い施設というのは、虐待などが起きることが少ないと思います。どのお宅の家族の方でもいいんです。人の目があるということが抑止に繋がりますから。

在宅介護をしている場合、いつ施設に入れたらいい?

出典Spotlight編集部

ーー現在自宅で介護をしている方もたくさんいらっしゃいますが、いつか自宅で介護をするのも限界が来ると思います。どのタイミングで介護施設に入所するのが良いと思いますか?

ももち:家族がいっぱいいっぱいになった時ですね。介護できる内はまだいいんですよ。でも、限界が来たら絶対に手をあげてしまう瞬間が来ると思います…。そうなる前に施設へ行って欲しいです。

おそらく手をあげてしまう人が一番辛いと思います。もちろん叩かれる方も辛いですけど。手をあげてしまうほどに追い詰められているというのは、本当に辛いはず。そうなる前に、誰かに相談して欲しいです。

私もデイサービス(日中の介護サービス)で働いていた時、家族関係がうまくいっていない家庭もたくさんあって…。おじいちゃん、おばあちゃんは離れから来るんだけど、家族の方はまた違う建物から荷物だけ渡して「お願いします」っていうケースなど、そういった家庭はたくさんあるんです。

でも、そういう時も家族の方がスタッフと会話をすることによって、家族関係が改善することが多いんです。また、介護士もおじいちゃん、おばあちゃんだけではなく、家族の方にも声をかけてあげることが大事だと思います。

ーー精神的に家族の方が辛くなったら、やはり施設にお願いするしかないと思いますが、中にはずっと我慢してしまう家族の方もいらっしゃいます。「こういう症状や兆候が現れたら施設の利用を考えたほうがいい」という目安はありますか?

ももち:徘徊ですね。特に元気な方の徘徊は、本当に大変です。どこにでも行っちゃうし…。あとは、身体的に危ない場合、暴力行為、排泄物をいじってしまうなど…。

大体、皆さん精神的にギリギリの状態になって「お願いします、入れて下さい」という方がほとんどです。「もう無理です」と切羽詰まった状態でいらっしゃる方も少なくありません。

ただ、大体施設の受け入れ人数の3倍の方が順番を待っている状態なんです。

ーー待機老人という状態なんですね…。決して利用料も安くないと思いますが、それでも利用したいと思う方がたくさんいらっしゃるんですね。

ももち:そうですね。私は以前、特別養護老人ホーム(要介護1から5の判定を受け、自宅での介護は難しく常に介護が必要であると認められた方が入所する施設)にいたんですけど、そこは他の施設と比べると国からの支援がある施設だったので、月に10万円以下でも利用できる施設でした。それでも大金ですけどね…。

高齢者だけで生活している方や年金で生活している方、お金に困っている方が施設に入るとなると、かなりの負担になるんじゃないかなと思います。

育児と介護のタイミングが重なった時のアドバイス

出典Spotlight編集部

ーー最近では晩婚の方も増えてきたことから、育児と介護のタイミングが重なってしまう方も少なくありません。ライフスタイルにもよると思いますが、乗り切るためのアドバイスはありますか?

ももち:デイサービスや保育園、託児所を上手に使った方がいいです。デイサービスだけでは、家族の時間が持てないということであれば、ショートステイ(数日泊まりで介護をしてもらうサービス)を利用して、その数日間はゆっくり過ごすという方法もあります。

あとは、認知症などの症状が出たら早めに市役所や施設などに相談することが大切です。今は認知症の方が介護される側にならないための予防策もあるので、早めの受診と相談が鍵になると思います。

ーー家族の方が施設に入れるということに対して、罪悪感を持ってしまうこともあるようですが…。


ももち:結構そういう家族の方はいらっしゃいます。おじいちゃん、おばあちゃんに悪いなという気持ちがある、ご近所の目が気になるなど、色々ありますね。

私は田舎にいたので東京のことはわかりませんが、介護は家族がやるものという概念が根強いんですよ。「嫁が介護をするのが当たり前」と思う方も結構いらっしゃるんですけど…そんなの全然気にしなくていいんですよ。

ーーちょっとおじいちゃん、おばあちゃんを預けるだけでも白い目で見られるというのは、プレッシャーですよね。

ももち:田舎だとそういう空気がありますね。でも、今は施設の送迎車だってたくさん走ってるし、気にしちゃダメです!

介護が必要になった時のためにポジティブな発信を

出典Spotlight編集部

ーー認知症などの症状が出てきた時に、いざ病院や施設に連れて行こうとしても本人が頑なに拒否することもありますよね。そういった時はどうしたらいいですか?

ももち:私の場合は受け入れる側なので難しいですけど、自分の両親には「おむつが必要になろうが、認知症になろうが長生きしてね」って言ってるんです。おむつが必要になって歩けなくなっても、大きい車を買って、中でおむつ交換をすれば、行きたいところに連れて行ってあげられますから。

そういう受け入れ態勢があるということを、普段から話して安心させてあげることが必要なのかなと思います。

ちょっと変だから隠すというのではなく、ありのままを受け入れてあげれば相手も心を開いてくれるんじゃないかな。

この前も利用者さんに「私ちょっと変?」って言われたんです。自分が認知症なんじゃないか、ちょっと気にされていて…。そこで私は「いいえ、年相応です。だから気にしないでください」と答えました。

「おかしい」って言うことが逆効果だと思うんです。私たちだって同じことを言われ続けたら、きっとうつになりますよ。

認知症の始まりは、おそらく気分の落ち込みも併発していると思うので、とにかくありのままを受け入れてあげる。これに尽きます。

とくに記憶に残る利用者さんの思い出

出典Spotlight編集部

ーーたくさんの利用者さんと接してこられたと思いますが、一番記憶に残っていることを教えて下さい。

ももち:病気で一度は入院したものの家族の方が「最期はここで看て欲しい」と、わざわざ退院なさって私が働いていた施設に戻ってきてくれたおじいちゃんが、一番記憶に残っています。

その方は、デイサービスでの利用から仲良くさせていただいて、ご本人はもちろん家族の方とも親しくさせてもらっていたんです。

施設に戻ってきた時、体がかなり弱ってしまっていてターミナル(特別なケアが必要な利用者さんが入る場所)に入ることになりました。それでも、私が近くに行くとなんとなく反応をしてくれて…ほとんど言葉も話せない状況だっただけに、嬉しかったです。

お孫さんのことが大好きで、「孫が膝の上でピョンピョンするのが好きなんだ」と話していたんですが、最期に近い頃にはご飯もあまり食べられない状態になってしまって…それでも私たちが「お孫さんをまた膝に乗せるんでしょ?ご飯食べなきゃダメだよ!」というと、食べてくれていたんです。泣きながらご飯をあげていました。

どんどん衰弱してしまって亡くなってしまったんですが、一ヶ月後くらいにそのおじいちゃんが夢に出てきたんです!スピリチュアルな話になってしまうんですけど、歩いて出てきて「こんなに歩けるようになったよ。ももちゃん、ありがとう。あっちに行っても元気にしてるから、心配しないでね」って…。

ーー本当にももちさんのことが好きだったんですね…。

ももち:私、こういう経験を何度かしているんです。利用者さんが夢に出てきて、出勤したら亡くなっていたとか。関わりが強いとそういった現象が起きやすいとは聞いたことがあるんですけどね。

介護士としてのももちさんの夢

出典Spotlight編集部

ーーももちさんは、以前から介護施設を作りたいと仰っていましたね。

ももち:そうなんですよ。元々は人を楽しませよう、世の中を明るくしようと思ったことがきっかけで介護の仕事に就き、芸人になったわけですけど…いつか自分の思う理想の施設を作りたいなって思っています。そこまで稼ぐのは大変ですけどね(笑)。

最近、施設関連のネットワークも広がってきて、事業者さんの集まりに来ませんか?と声をかけて頂いたんです。勉強しなきゃいけないこともたくさんありますけど。

ーーももちさんが施設を開いたら、色んなところから注目されそうですよね。

ももち:明るい施設にしたいです、本当に。具体的には、介護だけじゃなく保育や学童、障害者支援まで含めた施設にしたいと考えています。

ーー介護に関するお話を聞いていると、保育に通じる部分もあるように感じました。

ももち:繋がってますよね。子どもが好きなおじいちゃん、おばあちゃんは多いです。今は核家族が増えているから、おじいちゃん、おばあちゃんが子どもを見る機会も減っていると思うんです。だからこそ、子どもとふれあうことで生きる活力になるんじゃないかなと。

日本では要介護になること、認知症になることがとても深刻に見られがちですが、私はそういった認識を覆す新しい構図を作っていきたいんです。

お年寄りが子どものこと見て、子どもがお年寄りから何かを教わり、障害者の方に対する偏見を持たない教育と、就学してからも学童で繋がりを維持できる環境、この全てを私の施設で実現できたらと思っています。

ーーお互いにいい影響を与えられそうですよね。

ももち:口ではバリアフリーと言っても、実際にどんなことがあるかなんて体験しなければわかりません。「困った人を見つけたらすぐに助ける」という気持ちが生まれるような環境を作らなければと考えているんです。やってみなければわからないんですけどね。

ーー是非実現して欲しいです!

ももち:ここまできたら実現させたいです!私の友人達も働きたいと言ってくれているので。実現のためにも…スポンサー探してます♥

ーー少子高齢化の日本において、家族の介護は付いて回るものですし、いずれは自分たちも介護される側になっていきます。

昔と違い、ライフスタイルも多様化している以上、様々な介護ケアを受ける機会が増えるのは間違いありません。

しかし、介護施設に家族を預けることをネガティブに見る人がいるのも現実です。今回のももちさんのインタビューは、そういった偏見に一石を投じることになったのではないでしょうか。

芸人としての活動だけではなく、念願の介護施設開設に向けて頑張っているももちさんに今後も注目していきたいと思います。

<取材・文/横田由起>

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