日本テレビ「月曜から夜ふかし」でブレイクし、現在はお笑い以外に舞台などにも活動の幅を広げている柏崎桃子さん。「芸人のももち」として幅広い年代に知られており、過去にSpotlight編集部でインタビューをさせて頂きました。

そんなももちさんは介護福祉士の資格を持っており、現在も都内の介護施設で働いています。

近年、老々介護や介護職の待遇、介護離職による貧困、施設での虐待など介護にまつわる様々な問題が起きていることから、今回Spotlight編集部ではももちさんに介護職と介護施設の実態についてお話を伺いました。

ももちさんが介護職に就いた理由

ーーももちさんが介護士になろうと思ったきっかけを教えて下さい。

ももち:子どもの育児を通して介護士になろうと思ったんです。17歳で妊娠、18歳で子どもを産んだ当時、世の中の理不尽さを痛感していて…どうにかそれを変えることができないだろうかと考えた結果、介護士になりました。

ーーももちさんが持っているのは、介護福祉士の資格だとお聞きしましたが、どうすれば取得できるものなんですか?

ももち:今は制度が変わりましたが私の場合は、まずヘルパー2級の資格を取ってから介護施設で3年働きました。この3年間の勤務で介護福祉士の“受験資格”が得られます。その後、国家試験を受けに行って取りました。

介護士の仕事内容

ーー施設では具体的にどんな業務を担当しているんですか?

ももち:食事のお世話、排泄のお世話、ベッドから起こす、寝かせる、着替えのお世話、お風呂のお世話、歯磨きのお手伝いなど、1日過ごす中で起きる全てのことをお手伝いしています。

ーー大変そうですね…。1日のスケジュールも教えて下さい。

ももち:日勤と夜勤で違いますけど、まずは日勤から行きましょうか!

日勤のスケジュール

ももち:まず9時からのミーティングで、前日の利用者さんの体調、動向、言動、いつもと違うことが起きていないか、ターミナル(特別なケアが必要な利用者さん)の利用者さんの様子について申し送りを受けてから業務に入ります。

ーー分刻みでスケジュールが続きますが、特に大変なのはどの業務ですか?

ももち:お薬の用意ですね。私たちは看護師ではありませんが、本当にやることが多くて…。お薬の用意もするし、お薬を飲むお手伝いもするんです。

お薬を飲むのが苦手な利用者さんも多くて…自分の手で飲むのが難しい方もいらっしゃいます。だから利用者さん一人一人の状況を把握しながら、お薬の形態や飲み方を変えてみることもあるんです。

もし、お薬を落としてしまうと(利用者さん自身が落としてしまった場合でも)事故報告書を書かなきゃいけません。もしくは、落ちていたお薬を見つけた場合も同様です。

ーーすごく厳しいんですね。落としてしまった薬を飲ませるわけにいかないですもんね…。

ももち:「薬を飲めなかった」という結果は全て事故扱いになります。だから、皆さんが想像するよりも、私たちの責任はかなり重いんですよ。

例えば血圧を下げる薬であれば、飲めなかった利用者さんは血圧が上がってしまうし、血糖値を下げる薬であれば色んなものに作用しなくなってしまいますから。

ーーいくつかケアについて詳しくお聞きしたいのですが、口腔ケアというのはどんなことをするんですか?

ももち:お口の中をきれいにするお手伝いをします。歯を磨いたり、入れ歯を使っている利用者さんであれば入れ歯をきれいにするんです。

ーー食後の歯磨きは大事ですよね。次に、食事の時間の見守りについてお聞きしたいです。

ももち:基本的には自分で食事は食べるようにしてもらっているんです。できないだろうとは思いつつも、まずはご自身でやってもらうことを大切にしています。なぜかというと、なんでも私たちがやってしまうことは、利用者さんのできることを奪ってしまうことに繋がるからです。

利用者さんのできることを奪うことは、介護士失格なんですよ。できることをやってみるように促すことが大事。「やってみようよ」「食べてみようよ」と、利用者さんに話すようにしています。

ーーレクリエーションではどんなことをしているんですか?

ももち:ダンスや体操、生花、陶芸など、ちゃんとインストラクターさんが来て指導してくれるんですよ。やっぱり有料の施設はレクリエーションが充実してますね。

違う施設で働いていた時は、みんなでゲームをしていました(笑)。すごく楽しかったんです!また糸巻きゲームやりたいなぁ…。

夜勤のスケジュール

ーー夜勤はかなり長丁場ですね。

ももち:そうです。17時からの申し送りで昼間に起きた出来事を聞くんですけど、たまにショッキングな内容もあって…その話を聞きながら「今夜は大丈夫だろうか?」と思いを馳せます…。

ーー夕食後のナイトケアが気になるんですが…。

ももち:でしょ(笑)?実際は寝る前の準備をするんです。お部屋に行って、口腔ケアとおむつが必要な方にはおむつをして、パジャマに着替えて横になっていただきます。

ーー寝る時間は比較的早いんですね。

ももち:そうですね。皆さん20時には横になっていらっしゃいます。

就寝時間は施設によっても違いますけど、前に働いていた施設は21時を過ぎても起きている利用者さんもたくさんいました。できる限り利用者さんが眠りたいタイミングを優先しようという方針から、19時から22時の間で順番に就寝してもらうようにしていたんです。

19時台は身体的に弱い方や、起きているのが辛い方が就寝して、あとは利用者さんが眠りたいタイミングで就寝していました。テレビを見たいという方は見ていたし。

ーー自由な雰囲気だったんですね。

ももち:そうなんです。利用者さんの意思を尊重する雰囲気でした。個人的には時間で行動を制限してしまうのは、あまり良くないなと考えています。

ーー21時からは見廻りが続きますね。

ももち:21時からは見廻り以外にも、ナースコールとの戦いが始まります。今働いている施設は、利用者さんの転倒防止のためにセンサーがたくさん付いているんです。ちょっと動くだけでも鳴るので、すぐに駆けつけなきゃいけません。

ーー休む暇もないですね…。

ももち:ないですね…。見廻りも2時間おきにあるので。あとは、夜間の利用者さんの様子などもひたすら記録しなきゃいけません。行動や発熱の有無、ターミナルの方の様子、起きてきた方がいた、不思議な言動など全部記録します。

ーー21時以降の時間帯って、一番眠くなる時間だから辛いですよね。

ももち:もちろん眠くなる時もあります。仮眠が取れるのは1時間だけなので。

でも夜間は、いいところもあって利用者さんとたくさんお話ができるんです。日中話せなかったことや、少し不安に思っていることも、ポツリと話してくださることもあります。

私、昨日久しぶりに夜勤に出たんですけど、利用者さんが「俺、嫌われているかも…」って仰って…。理由を聞いてみたら、「ナースコールしてもなかなか来てくれない」と。

なかなか私が出勤しないことも不安に感じていたようだったので、「忙しかったんだよ、きっと。だからナースコール連打してね」って話しました。

そうしたら利用者さんが「柏崎さんならできるんだけどね」って(笑)。

ーー朝はかなり早い時間から活動がはじまるんですね。

ももち:朝食の準備もあるので、食べ始めるまでの時間は利用者さんにゆったり過ごしてもらうんです。お部屋にいるとどうしても眠ってしまいがちなので、昼間はできるだけ起きていただくために、早めに声がけをして起こしています。

夜寝ない利用者さんや、朝食の時間になっても起きてこない利用者さんもいらっしゃるので、お部屋まで行って起こすんです。「朝ですよー」ってお部屋のドアを連打しながら(笑)。

ーー全てのお仕事が終わるのは何時くらいなんですか?

ももち:11時を超えますね。定時は10時なんですけど…。実は今日も夜勤明けです。

ーーそれを昨日こなしてきたんですか?

ももち:はい!ついさっきです。

ーーお疲れ様です…。

施設でのトラブル

ーー施設の中でのトラブルがニュースになったりもしていますが、ももちさんはそういう現場に遭遇したことはありますか?

ももち:ありますね。人間なので、ほんと些細なことです。声が大きい、あの人うるさいとか。認知症の方を認知症ではない方が批判したりだとか…切ないですよね、見ていて。

そういう時は「人間、いつ病気になって寝たきりになるかわからないし、明日事故にあって動けなくなるかもしれないし、認知症だって同じ。だから言っちゃダメ」と言います。

ーー難しいですよね…。スタッフさん同士の人間関係も気になるのですが。

ももち:私のブログにも同業者の方がコメントを下さるんですけど、女性が多い職場なので人間関係は大変ですね。精神的にナイーブな方が厳しい指導に付いていけず、辞めてしまうケースもありますし、いじめられて辞めてしまう人もいます…本当に切ないですよ。

ーーももちさんは介護の仕事を辞めようと思ったことはありますか?

ももち:一番最初に働いた施設は2か月で辞めました。スタッフによる利用者さんへの虐待を見てしまって…。

ーーえ!?

ももち:現場を見てしまったので、私は辞めるつもりでセンター長に報告したんです。センター長には「柏崎さんみたいにハッキリ言える人は、なかなかいないから辞めないで」と言われたので、続けることにしたんですけど…次の日からスタッフ全員に無視されました。

みんなグルだったのかもしれません。愕然としましたね。その事件から1ヶ月後くらいには、仕事を覚える気力も失っていました。「私が頑張って取ろうとしている資格はこんなものなの?」って…。

そこの施設は業界の大手だったんですけど「私はこんなことをするために、10万円を払って資格を取りに来たわけじゃありません!さようなら!」と言って辞めました(笑)。

労働環境について実際どう思う?

ーー保育士さんの待遇が問題になっていますが、介護士さんの待遇も仕事内容と見合わないという意見も出ています。ももちさんが労働環境について、感じたことを教えて下さい。

ももち:施設によっても違うと思いますけど…仕事内容とお給料が合わないってみんな言いますよね。働けど働けど楽にならないんですよ。

たしかにこの肉体労働からしたら安いかもしれません。でも、私は中卒で普通の企業で働く場合に想定されるお給料よりは、良いと感じています。(ももちさんは出産のため高校を中退しています)以前は施設の正社員として働いていましたが、慎ましいながらも生活していけるだけのお給料は頂いていたので。

手に職を持っているという面では、強みになるんじゃないかなと思います。どこの施設も人手不足なので、就職が決まりやすいという面もありますね。ただ、プライベートが全くないに等しいです。常に夜勤、明け、休み、早番の繰り返しだから。

ーー1日丸々休める日がないんですね。

ももち:そうです。寝ても次の日夜勤だからどこにも行けない…常に拘束されている気がします。だから家の片付けもなかなかできなくて、部屋が散らかってしまいがちなんです(笑)。

介護の仕事、ここを改善して欲しい

ーーももちさんが介護の仕事をしている中で、働きやすくするために改善したいと思うことはありますか?

ももち:労働環境でいうと東京の施設はスタッフが少ないです。呼ばれたらすぐに駆けつけなければいけないので、ずーっと走ってますね。休む暇もありません。

ーー人手不足というのは、介護士さんの絶対数が少ないのか、それとも施設で採用している人数が少ないのか、どちらなんでしょう?

ももち:絶対数が足りないんだと思います。施設側は採用にとても前向きなんです。でも、いざ働くとみんな辞めちゃうんですよ。やっぱり仕事内容と収入を天秤にかけた時に、違う仕事をしたいと思うのかもしれません。

あと施設は「人が亡くなる場所」でもあるので…。日々生死と向き合う場所であり、命を預かる場所でもあります。私たちは看護師ではありませんが、人の命を預かっているので責任と収入を比べると考えてしまう人が出て来てしまうんです。

今の介護士の待遇というのは、昔の看護師さんと同じなんですよ。過酷な労働環境だった看護師さんが、今は見直されて待遇も改善されましたよね。

その過酷だった部分を、介護士が負担している状況です。

ーー介護士さんも看護師さんのように待遇が改善されて、納得のいく労働環境に整備されればいいですよね。

ももち:そうなんですよ。そのためにも介護士自身も意識を向上していかなければならないと思います。利用者さんを虐待するなんてもってのほかです!

そういう悪い人もいるから、この業界が暗いと思われてしまう。でも、私はそういう人ばかりではないということを伝えたいんです。

私自身は楽しんで仕事をしています。辛いこともあるけど、介護って楽しいんですよ。アハハハハッ!

ーー普段の明るいキャラクターを介護の現場で生かしているももちさん。お話頂いた介護施設の様子や、介護士さんの仕事ぶりというのは想像以上に過酷なものでした。

こういった実態は、やはり当事者の方からお聞きせねば知ることができないだけに、今回のインタビューはとても貴重に感じました。

次回は、子育て世代も知っておきたい家族の介護と、育児と介護が重なってしまった時の対策について、ももちさんにお話を伺います。お楽しみに!

<取材・文/横田由起>

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