12日、米フロリダ州、オーランドにあるゲイクラブ「Pulse(パルス)」で午前2時頃、1人の男が銃を乱射。場内の50人が死亡、50人以上の人が負傷するという惨事が起きました。

警察に射殺された男、オマール・マティーン29歳

銃を乱射しクラブ内に人質と3時間引きこもった男は、その後警官に射殺されました。当初は「テロ行為とは無縁」との報道がありましたが、徐々に事件の背景が明るみに。そして今は、アメリカで起こった[9.11]テロ事件の次に被害が大きいテロ行為として報道されています。銃撃事件としてもアメリカ史上最悪の犯罪事件となってしまいました。

「ISとの関係」と報道があった時点で、正直「またか」とうんざりし悲しくなりました。犯人のオマール・マティーンは実は2013年からFBIに目をつけられていた人物だったそう。その時点で何とかすることができなかったのかと、今更ながら悔やまれます。

多くの犠牲者を出した後、筆者が思うのはやはり米国の銃社会がこうした犯罪を助長しているように思えてなりません。罪なき50人もの命が奪われたのです。このクラブに居合わせた息子から最後のメッセージを受け取ったという母親もいました。

「もうダメだ。奴が来る。愛してるよ、ママ」

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クラブ内のトイレに隠れていた男性が、撃たれる直前に母に向けて送ったメッセージも公開されました。恐怖に怯えている人をいくつもの銃で容赦なく射殺していった犯人。ISがしかけた人物であろうとなかろうと、これは紛れもなく虐殺行為です。

そんな残酷な虐殺行為のきっかけとなったのがなんと「男性同士がキスをしているのを見た」こと。犯人は当時その光景を見て父親の前で激高したといいます。そしてその父もまた、今回息子が起こした事件で「ゲイは息子にではなく神によって裁かれるべきだ」という不謹慎極まりない性差別発言をし、世間から猛批判を浴びています。

更に、元妻は犯人を「精神疾患のある人だ」と主張。結婚していた時も洗い物をしないというだけでDV行為を繰り返していたという証言も。今回、男が敬虔なイスラム教の信仰者であったからか、不公平な性差別による偏見で50人もの命を奪うという許されざる事件を起こしたことは決して宗教上の言い訳にはなりません。

LGBTの人たちがヘイト(憎悪)行為の生贄に

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犯人の性差別により、このクラブを憩いの場としていたLGBTの人たちが犠牲になってしまいました。このクラブは元々、オーナーがHIV感染で亡くなった最愛の弟のためにオープンしたクラブで、思い入れのある場所。

そしてマイノリティーの人たちはこの場所をコミュニティーの場としても利用していたのです。週末ということでクラブ内は混雑。いつもの楽しい週末になるはずが一気に悪夢へと変わりました。

更に悲しいことに、この銃撃事件をイスラム信仰が篤いトルコの「Yeni Akit(イェニ・アキト)」という新聞はオンライン上で「ホモセクシュアルの変態が通うクラブでの銃撃事件」と報道し、これみよがしに性差別をしたのです。

人の命の重さに性差別は関係ない

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男でも女でも、命の重さに代わりはありません。ゲイだから「変態」というネーミングで今回亡くなった人を侮辱したトルコのメディアは許されることではありません。ゲイだから殺されても仕方ないというようなニュアンスが出ていて、不快に感じる人も少なくないはず。

こういう見出しが、イスラム教徒とそうでない人たちの間の溝を深めてしまうのでは。今回の事件は、犯人にどういう背景があったにせよ、50人もの命を奪った後射殺されてしまうという、大切な家族を失った遺族にしてみれば責めるべき犯人さえいなくなってしまい、その辛さだけが残った非常に悲しい事件となってしまいました。

犠牲者に追悼のメッセージを…

出典 https://www.facebook.com

この事件を受けて、フランスのエッフェル塔はゲイのシンボルともいえるレインボーカラーに色を変えライトアップ。9.11事件が起こったニューヨークでも建物にレインボーカラーが点灯し、今回のオーランドの被害者への追悼の意を示しました。

また、Facebookではこの事件に関してコミュニティサイトも設置。ところが「ゲイ」の人たちが犠牲になったということで、イタリアのカソリック教祖ローマ法王はあえてメディアにコメントを出さず。というのもカソリックではゲイはご法度だからです。

人の命には変わりがないにも関わらず、明らかに線引きされてしまった今回の事件の犠牲者たち。悲惨なこの襲撃事件に涙を流しているのはほとんどが遺族というのはあまりにも悲し過ぎます。

イスラム教社会は、ラマダンの真っ最中

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イスラム教は今「ラマダン」に入っています。ラマダンとは宗教上の儀式として義務付けられているもので約一か月ほど断食するという行事。イギリスのメディアは先日、ラマダンの間にイスラム教徒が何か大きな事件を起こさなければいいがという懸念を報道していました。それがこのような形でアメリカで起きてしまったことに胸を痛めずにはいられません。

というのも、「イスラム教=IS」という誤った認識をしている人がまだ多く存在しているのです。アイルランドでも、イスラム教徒のイギリス人に向かって白人が「お前ら国へ帰れ」というとんでもない差別発言をしているのが報道されました。

誰かが単独で犯した事件でも「テロ」と結び付けられてしまうのは今はもう仕方がないこと。今回の事件がISが関連したテロであったとしても、これが原因でまた全てのイスラム教徒の人がまた社会から断絶され、偏見の目で見られ差別されるようになってしまうのでは彼らにとっても不公平ではないのかと思ってしまいます。

今回、クラブで犠牲になった50人の人たちはイスラム教の教えの犠牲になったのではなく、アメリカの銃社会と世間の差別や偏見の犠牲になったのだと考えるべきではないでしょうか。武力で武力を抑える社会は決して平和を生み出しません。そしてこのような性差別や人種差別によって人の命が奪われることが決してあってはならないのです。

何の罪もない人々が犠牲になってしまう銃撃事件が多発している世界。ニュースを見る度怒りが広がります。今回、悲しくも命を奪われた50人の犠牲者たちの冥福を心から祈る筆者です。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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