6月12日テレビで放送されていたアントニオ猪木VSモハメド・アリの試合を見てこれの何処が世紀の凡戦などと言われた一戦だろうかと思われたのではないだろうか?

この試合をちゃんと全部見たのは私自身初めてだった。見る前に持っていた印象は猪木が横になってアリがステップを踏むだけの試合というイメージだったが実際の試合を見ると猪木は何度もキックを放ち、アリもジャブを放っていた。そして、どっちも当たっていたのである。アリの足はボロボロになり、後の世界戦を棒に振っている

そして、猪木自身も骨折という決して小さくない代償を払う羽目になったのである。

アントニオ猪木のキックから見るボクサー相手の異種格闘戦の戦い方

現在の総合格闘技やキックボクシングで見られる、ボクサー相手の戦いの原型をこの試合に見る事ができるのではないだろうか?

猪木の出しているスライディングキックは、現在におけるローキックの原型にあたるのではないかと私は考える。当時のアリは4オンスという極めて薄いグローブを使っていた。ボクシングのグローブからするとありえないくらい薄いグローブである。

そのグローブで殴られればどういう事になるかは明白であり、それを避ける為に猪木はスライディングキックという選択肢を選んだのではないだろうか?今行われている異種格闘戦のように総合格闘技でオープンフィンガーグローブをつけたり、キックボクシングで8オンスのグローブをつけるという事はなかったのである。

テレビの中で猪木本人も言っていたが、失明の危険もあったというアリの4オンスのグローブだったからこそ、猪木は通常のローキックよりの顔の位置が低くなるスライディングキックという選択肢を選んだのである。

結果として、アリの足は重大なダメージを受けたのである。これは現在における異種格闘戦において、他の格闘技の選手がローキックを主体に戦う原型と言えるのではないだろうか?

戦いの凄さを理解できなかった当時の人達

今のように総合格闘技やキックボクシングなどにおけるボクサーの試合を見慣れている観客の居なかった時代である。その背景を考えると、Twitterで見つけた一つのツイートが妙にしっくりと来る。

そう、当時の観客は誰ひとりとして、わかっていなかったのである。4オンスのグローブで顔面を殴られる恐怖とボクサーが寝技を使われる恐怖が…。今、私達が見てこの試合をすごいと思えるのはその恐怖をみんなが理解できるからではないだろうか?

当時、世界チャンピオンクラスの選手がアントニオ猪木VSモハメド・アリのような試合をする事は極めて異例で観客の目も感性も育っていなかったのである。

早すぎた天才なんて言葉があるが、この試合は早すぎた名勝負だったのではないかと思う。

凄い試合だったと思える現在

寝た状態がメインで動き続けた猪木の体力、そして、あのキックを受け続けて立ち続けたアリの精神力の凄さは上のツイートでも言われている通り、凄まじい試合だったのではないだろうか?

体重の掛かったスライディングキックをあれだけまともに喰らえば立っている事すら辛かったはずである。普通の精神力であれば、恐らくダウンしていたのではないだろうか?

そして、あのアリの蝶のように舞、蜂のように刺すと言われたステップにスライディングキックを打ち続け、当て続けた猪木の体力と精神力もかなりの物だったのではないだろうか?

その二人の気迫があったからこそ、今でも凡戦だと茶番だと言われながらも、何かあると話に登る試合となったのではないだろうか?

長丁場の3分15R

3分15ラウンドというと全部で45分の試合である。一時期大流行したK-1が3分3Rか3分5Rで9分から15分、同じくPRIDEが1R10分・2R5分・3R5分の20分である事を考えるとすごく長い。

その45分という長丁場を二人共闘いぬいたというだけでも本来賞賛されるべき戦いだったのではないかと思う。一度3分間シャドーボクシングを試してみて欲しい。運動していない人であれば、本気ですれば最後の方は恐らくパンチを打つことも辛いという現象に襲われるはずである。

素人の例えで申し訳ないが、格闘技は全力の10m走をラウンドの間、何度も繰り返すような運動量である。何もしていないように見える時間もステップを踏んでいたり、フェイントを入れているのである。

それを考えると2人共平然と立っているという試合後の姿には驚愕するしかないのではないだろうか。

タックルからも現在の総合格闘技の片鱗が…。

現在の総合格闘技の試合で目が肥えている人からすると猪木のタックルは決して上手いとは言えない物だったと思う。しかし、このツイートを見てほしい。

そう、この戦い方は他流試合(異種格闘戦)ではほとんど見られなかったものなのである。今でこそ当たり前のようにみんなが使っているが、元祖はアントニオ猪木だったのである。

異種格闘戦の原点アントニオ猪木VSモハメド・アリ

世紀の凡戦と言われたこのアントニオ猪木VSモハメド・アリという試合には上記でも述べたように総合格闘技の原点のような物が見られる。異種格闘戦におけるローキックの原点は猪木のスライディングキックであり、今の総合格闘技で、グラウンドを得意とする選手の多くが使うタックルの原点も猪木のタックルだったのではないだろうか?

そう、このアントニオ猪木VSモハメド・アリと言う試合には、現在の総合格闘技の原型がたくさん含まれているのである。ローキックが効いて動けなくなっていくボクサーの元祖はモハメド・アリだったのである。しかも、彼は立ち続け、最後までステップを踏み続けたのである。

時代が早すぎた名勝負

この試合は決して凡戦などではない。世紀の名勝負だったのではないだろうか?もちろん今この試合をされたら、名勝負とはお世辞にも言えないだろう。しかし、当時の時代背景を考えた上で今私達がこの試合を見ると不思議と名勝負に見えてくる。

時代が追いつく前に実施してしまった早すぎた名勝負…。それが、アントニオ猪木VSモハメド・アリの正体なのである。

そして、アリの死で本当の伝説になる

いつか、再戦を見たいと思っていた往年のファンも多かったであろうが、もはや実現する事はない。2016年6月3日モハメド・アリは現役時代のパンチの後遺症から敗血症ショックで74歳でこの世を去った。

そして、アントニオ猪木も今や73歳である。参議院議員として活躍されているが、もはや当時のような戦いは恐らくできないだろう。

あの人は今などのテレビでボロボロのモハメド・アリを見た人やテレビで政治家をしていて、頻繁に北朝鮮に渡って問題になるアントニオ猪木の姿を見るとあの頃の姿を想像できない人も多いのが現実である。

モハメド・アリは徴兵を拒み、人種差別撤廃を訴えていた、そして、アントニオ猪木は北朝鮮に足繁く通う。拳を交え戦った二人は方向性は違えど平和を願っているのかもしれない。

モハメド・アリがこの世を去った今再戦は不可能である。この昭和の名勝負は本当の伝説となったのである。何年か後にあの世で再戦する二人の姿があるかもしれないが…。それはまた、別の物語である。

アントニオ猪木は今もモハメド・アリから贈られた曲を…。

猪木の入場曲としてお馴染みの「炎のファイター 〜INOKI BOM-BA-YE〜」はテレビでも紹介されていたが元々はモハメド・アリの伝記映画である「アリ・ザ・グレイテスト」の挿入曲であった。その曲を贈られて使い続けているのである。

拳を交えれば親友なんて言葉もあるが、平和を愛した二人は魂でつながっていたのかもしれない。そんな曲を使って、これからも猪木は活躍し続けるであろう。

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いつか笑って過ごせる日までと申します。 起業家でフリーライターです。政治からゴシップネタまで幅広く手掛けています。 残念ながら今はまだ貧乏人です…。

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