欧米と比べて団体意識が強いとされる日本では、社会に溶け込めない人たちに対しては非常に冷たいといわれています。周りと合わせること、集団生活をすること、共同社会の中で生きること…どれも大切なことには違いないのですがほんの少しはみ出してしまうだけで、自分が思ってもいないいじめのターゲットになることがあるのです。

いじめは世界中に存在します。そして子供の世界だけでなく大人にもあります。文部省の調べでは、日本の学校内でのいじめが認知されている件数は約19万件だそう。でもこれは認知件数なので、実際にはもっと多いとみていいでしょう。この件数は去年と比較して約2,300件増加しているそうです。

個性よりも調和を重視する日本社会

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欧米では個性を尊重するのに対し、周りに合わせて集団の中で生きていくことが重視される日本社会では、ちょっと他の人と違うというだけで生きにくさを感じてしまう子供が多いでしょう。

欧米ではある程度の学習能力を持った障がい児は、健常者の子供たちと一緒に学ばせることを尊重しています。もちろん個人のレベルを考慮した上でのことですが、最初から「あなたは障がい児だから別のクラスで授業を受けなさい」とはなりません。

成長過程に重要な教育機関で、子供たちに「個性の尊重と他者の受け入れ精神」を学ばせることで、大人になってもその社会の中で「人は誰しも違う」ということを基本に対応できるようになっていくのではないでしょうか。

周りに溶け込めない子供たちは一人で孤独を抱えている

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最近では、性への問題も取り上げられています。思春期の難しい年齢になると自分自身の体にも困惑する子供たちが増え、もし自分の性に疑問を感じるようになるとますます孤立してしまうでしょう。

そしてそれが集団生活の学校の中では目立ってしまい、更にいじめのターゲットとなりやすくなるケースもあるのです。「ちょっと違う」ということが集団生活の中では「大きな違い」と誇張して見られてしまうのが問題。

そしていじめのターゲットになってしまえば周りの人もまたスケープゴートにされることを恐れ徹底的に引いてしまうために、ますます孤独になっていくのです。

周りの大人が見過ごすことで酷くなるいじめ

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よくいじめ問題が起こると「気付かなかった」という担任の先生。いじめはあからさまに起こらない場合がほとんどだとはいえ、いじめられている生徒は大人になんらかのサインを出しているケースが多いと聞きます。ところが、周りの大人はそれに気付かず、結局は大切な子供を死に追いやってしまうという悲しい結果になってしまうのです。

いじめにレベルはないと筆者は思っています。どんな程度であっても、人を傷つけるいじめは決して許すべきことではありません。加害者からすれば「ふざけた」という程度でも取り返しのつかない事態を招くことだってあるからです。

先日、イギリスのハートフォードシャー州にある学校で、13歳の男子生徒が14歳の男子生徒にいわゆる「おふざけ」でアタックされ、そのまま床に転倒。脳を激しく打ち付けたために痙攣を起こし意識不明の重体になったのです。

普段からいじめを受けていたと思われるトミー君

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この日も、いじめの加害者である14歳の男子に「ポケットに手を入れておけ」と命令され、「ハッピースラップ(楽しい仕置き)」と称してトミー君をいじめ始めたそう。勢いをつけて攻撃したために、トミー君はそのまま転倒しポケットに手を入れていたために頭から強打してしまったのです。

ところが、トミー君が意識不明に陥ってから救急車が到着したのは30分も後だったのです。見ていた人たちや加害者自身も「緊急事態ではない」と思ったというのですから驚きです。30分の間にトミー君の脳内は激しく出血し、神経にダメージを与えてしまっていました。

生涯、歩行不可能になってしまったトミー君

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脳内のダメージがあまりにも酷かったので、生きていることが奇跡と言われたそうです。13歳という若さで、自分の不注意でも何でもなくいじめによって自分の人生が180度変わってしまったトミー君。

両親は怒りと涙を抑えることができません。半身不随の車椅子生活となってしまったトミー君を見た母親は「今、ここにあるのは新しい姿のトミーです。昔のトミーにはもう決して戻ることはないんです。あの子が元気だった頃に戻って欲しい」と嗚咽を漏らしました。

脳への深刻なダメージのために、急きょロンドンのグレート・オーモンドストリート病院へと搬送され緊急手術を受けたトミー君は、その後12日間昏睡状態でしたが奇跡的に一命を取り留めたということです。

それでも、医師からは「二度と車には乗れないし飛行機も無理。好きなスポーツをすることも不可能」と宣告を受けたそうです。これから生きて行く人生の方が長いにも関わらず、いじめのせいで輝かしい人生を奪われてしまったのです。

今後は辛い試練が待っている

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これからの彼の試練を思うと胸が痛む思いです。両親はメディアで「10代の一番いい時期をあの子は失いました。既にあの子を失ったような気持です」と語っています。その一言でどだれけ両親が深い悲しみに見舞われているかがわかります。

今回の事件で、学校側は見て見ぬふりはしていないと主張しながらも救急車の要請が30分も遅れてしまい「そんなにひどいとは思っていなかった」と言っています。これは学校側への責任も問われるでしょう。

「苛められる側は決して悪くない」

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たとえカウンセラーでも「あなたがこういう態度を取ればいじめられなくなるのでは?」とアドバイスする人もいるそうですが、いじめを受ける側に非があると考えるのは間違いではないでしょうか。

もしいじめを受けている側が何らかのトラブルを起こしたとしても、いじめをすることは何の解決にもならないからです。一番悪いのは相手を受け入れることができずにいじめをする側です。

学校も親も、自分の子供がほんのちょっとでもサインを出していた時に気付くようにするには、常に子供の話を聞いてあげることが大切なのでは。いじめられている子供たちは、大人たちの「こうすればいい」「こう言えばいい」という指示やアドバイスよりも、気持ちを理解してくれる人が欲しいのではないかと思います。

社会からいじめが無くなることは、これはもう理想でしかありません。実際に現実で起こっているいじめに対応するには、撲滅を訴えることよりも子供の感情を受け止めてあげる心の余裕と広さが大人には必要ではないでしょうか。

そして学校という教育機関であるなら尚更、教師たちがこうしたいじめ問題は絶対に許すべきことではないという強い精神力で生徒に接していくことが大切ではないでしょうか。見て見ぬふりをしているズルい大人というのを、子供たちは知っているものです。普段、子供たちに侮られない大人でいることが、いじめを予防する対策にもなるのではないかと思います。

「もう昔のトミーはいません。」そう呟くトミー君の母親。いじめで愛する我が子の人生を変えられてしまった悲しみ。加害者が14歳というだけに法律に守られている歯痒さ。ネット上では「いじめの加害者にはもっと厳しい制裁を加えるべきだ」という怒りの声があがっています。

トミー君の精神崩壊が心配される

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今回、トミー君が受けた激しいダメージは体だけではなく精神的にも相当なもの。これから心身共にリハビリをしていくことになるでしょう。13歳という難しい年ごろに起こってしまった悲しい事件は多くの人に悲しみをもたらしました。

いじめられていた日々も暗闇のトンネルの中にいるような気持ちだったことでしょう。そしてこれからも、そのトンネルの先に光が見えるのかどうか…今は両親共々精神的に相当辛いと思いますが、どうか暗闇の光を見出すことができるようにトミー君の精神と肉体が少しでも回復に向かうことを願って止みません。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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