女性が職業を持つことが当たり前になった現代において、家庭にウェイトを置く男性「主夫」の存在が徐々に認知されつつあります。

しかし、未だに「男性は外で稼ぎ、女性は家庭を守る」というイメージが根強いのが現実です。

そこでSpotlight編集部では、「秘密結社・主夫の友」の皆さんにインタビューし、主夫という生き方、夫婦のライフスタイル、男性の育児などについてリアルなお話を伺ってきました。

今回インタビューさせて頂いたメンバーの皆様は7名。前列左から、杉山ジョージさん、佐久間修一さん、インド支局長、後列左から村上誠さん、坪井博一さん、吉田尚史さん、堀込泰三さん。

この中で専業主夫は佐久間さんのみで、他の方は在宅ワークなどの仕事を持つ兼業主夫です。

仕事を持っている方も「主夫」と名乗るには、理由があるはず…。まずは「主夫の定義」についてお聞きしました。

主夫の定義とは?

ーー主夫の世間的なイメージは、佐久間さんのような“専業”主夫ですが、他の皆さんはお仕事も持っていらっしゃいますよね。

杉山:僕らが考える主夫は、「主体的に家事・育児をする夫」です。だから、サラリーマンもアリなんですよ。

村上:女性も「主婦」に専業の方もいれば、仕事をしている兼業の方もいるわけですし。

佐久間:おもしろいのは、女性だとワーキングマザーも「主婦」と言われるのに対して、男性の「主夫」は専業扱いなんですよね。そこが不思議な感覚です。

坪井:僕らは外でも仕事をし、家の中でも家事・育児をするお父さんという感じです。

村上:男性もそれが普通になっていけばいいなと考えています。主夫はよくヒモと誤解されますが、ヒモは最初から楽をしようと考えてますよね。でも、我々は最初は働くことを経験しつつ、生きていく中で環境が変わった時に、合理的な判断をしたら主夫というスタイルに行き着いたんです。

坪井:家族の形を何かしら変えなきゃいけない時があって、そこで自分が変わる判断をしたということです。

主夫になった理由

結婚から半年で難病が発覚

ーー皆さんが主夫になった理由を教えてください。

杉山:みんなバラバラですね。インパクトが強いのは、しゅうちゃん(佐久間さん)かな?

ーーどうされたんですか?

佐久間:僕が30歳、妻が23歳の時に結婚したんですけど、結婚から半年後に僕が難病にかかっていることが発覚しました。それで働けなくなってしまい、休職→退職したんですが、結婚したばかりで23歳の若い女の子に自分の面倒を見させるのはかわいそうだと思って。そこで離婚を申し出たところグーで殴られました

さらに号泣され「そんなことを言わないで!私が働いて稼いでくるから、あなたは無理のない範囲で家のことをやりつつ、体をいたわってください」と言われたのがきっかけです。

ーーすごく素敵な奥さんですね。

佐久間:そうですね。ただ、彼女は一般的な奥さんとは違って、「昭和のお父さん」のような人。家では「風呂、飯、寝る」ですからね。けど、妻のおかげで生きていられる。妻をバックアップするのが僕の役目。最初の3年くらいは葛藤しましたけど、吹っ切れてからは金髪にして専業主夫として頑張っています。

実母の介護がきっかけ

村上:うちは親の介護がきっかけでした。僕の母が急に脳出血で倒れてしまって…第一子が生まれて、妻が職場に復帰した直後でプロジェクトも任されて忙しい時期だったんです。僕は個人事業主として働いていたんですが、僕の親のことだし、今の時代「嫁が介護をしなきゃいけない」という時代でもないから、僕が介護をするという選択をしました。

妻が嫌々介護をするより、ちゃんと自分の生きたい道を歩んでハッピーでいた方が、家庭は上手く回るんです。合理的に判断した結果、僕の方がワークダウンして家のことをやっています。

東日本大震災で目が覚めた

坪井:僕は転職をしながら、最後は派遣社員として働いていたんですけど、更新する度に条件が悪くなっていました。精神的にも辛い状況の中、東日本大震災が起きたんです。

たまたまその日は子どもが風邪をひいて保育園を休んでいたんですが、夫婦二人とも働いていては災害時に子どもを守れないなと感じました。夫婦で話し合って、妻は正社員で働いているから、僕が仕事を辞めて家庭に入ったんです。

このことで子どもの安全は確保できたのですが、妻の考えとして僕が“専業”主夫になるというのは難しいということもあり、現在は在宅ワークを中心に働きながら主夫をしています。

子供の親権を取りたかった!?

杉山:みんなの話を聞いていると、うちだけ主夫になった理由を一言で表しづらいな…。

佐久間:ここの家庭はネタとしては最高です!

ーー何があったんですか?

杉山:僕、離婚したかったんです。でも、ただ離婚すると今まで育ててきた娘の親権が取れない。最近は父親でも親権が認められる判例が出たけど、当時は育児放棄、虐待、病気、犯罪歴など明確な理由がない限り、男性が親権を獲得するのは難しかったんです。

奥さんは働いているし、実家も近いし、健康で犯罪歴もなかった(笑)。僕は男という理由で親権を取れる要素が全くなかったんです。でも育児や家事はほとんど僕がやっていたから、離婚して向こうに引き取られた場合、奥さんは対応できない状況だったはずで。だから家事や育児の記録を毎日ノートにつけて、証拠を残していました。

ーー結局離婚したんでしょうか?

杉山:離婚の準備をしながら、家事と育児の記録ノートも2冊くらいにはなっていたんですが、離婚調停に向けて弁護士と準備をしていたら東日本大震災が起きたんですよ。僕も震災の時に夫婦で色んな話をした結果、離婚せずに今に至ります。

佐久間:離婚しないどころか第二子まで生まれてますもんね。

杉山:今は夫婦仲良くやってますね。離婚もするもんじゃないなと思って、記録していたノートも捨てて、一緒にやっていこうと決めてからは奥さんを受け入れられるようになりました。

それまでは自分が持ってた結婚像や奥さんのイメージがあったけど、そもそもそういったイメージとは違う人と結婚したんだなと。

詳しくは著書の『新ニッポンの父ちゃん ~兼業主夫ですが、なにか?~』でも書いていますので、よかったらご覧ください。

主夫の妻も偏った見方をされている

ーー主夫の方は、偏見で夫婦のパワーバランスも奥さんの方が強いのでは?と思われている気もしますが、実際はどうですか?

杉山:それは夫婦それぞれかなぁ。ただ1つ言えることは、主夫の奥さんは強いというよりも変わってる。

「主夫」と旦那が名乗ってもいいという価値観は少数派である中、それを許してくれるというのはある意味では懐が深いですね。

ーー普通は奥さんが「主婦」と名乗らなきゃ、母親としてダメなんじゃないかという目で見られてしまいますよね。

坪井:そうですね。「母親失格」と思われちゃうんじゃないか?と思うのが女性なんですよね。

村上:ママ友同士で「お宅はいいよね」とか言われることもあるしね。

吉田:まだ子どもが小さい時は、僕の妻も周囲から「男性に小さい赤ちゃんを預けて心配じゃないの?」って言われたと。妻は「全然」って言ったそうですが(笑)

「秘密結社・主夫の友」を結成した理由

ーー「主夫の友」を結成のいきさつを教えてください。

佐久間:立ち上げメンバーが5名いるんですけど、平日の昼間にひょっこり集まって「何かしよう」というゆるい流れで始まりました。

杉山:主夫をやっていると、なかなか主夫に出会わないんです。でもファザーリングジャパン(育児中のお父さんを支援するNPO法人)に入ると、住む場所や環境の違う主夫の皆さんに出会える。そういう機会を広げようと始まったんです。

みんな同じ苦悩を抱えているから共感することも多いし、お互いに情報共有をすることもあります。

僕らは「主夫」って名乗った瞬間から、マイナススタートなんです。だからこそ、僕らの活動を通して主夫に興味がある人、主夫をやっている人が「こういう選択もアリなんだな」とか「自分のやっていることは間違いではないんだ」と思えるきっかけになればと考えています。

堀込:また、志は真面目に持ちつつも、発信はゆるく、柔らかく行うことを心がけています。

村上:男女逆転するとフィルターをかけて見られてしまう社会のおかしさを、我々がおもしろく伝えられたらと考えています。

女性が子育てするのは当たり前なのに、男性が子育てするとなぜおかしいの?とか、そういった投げかけを楽しくしていきたいですね。

ーー「主婦」ではなく「主夫」。男性が家庭にウェイトを置くだけで、同じことをしているのに様々な見方をされるということに、複雑な気持ちを覚えました。

しかし、秘密結社・主夫の友の皆さんは、後進の道が楽になるようにポジティブに自分達の現状を発信をしています。

第二部では、子育て世代が気になる「主夫の育児」の実情や男性の育児の強みについて、ためになるお話をたくさんしていただきました。続編をお楽しみに!

<取材・文/横田由起>

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