記事提供:AbemaTIMES

5月20日(金)に公開された押井守最新作『ガルム・ウォーズ』。これを記念して5月29日(日)に、新宿バルト9で「監督・押井守ティーチインイベント」が開催された。一般参加者の質問を交えながら、今だから話せる撮影秘話や裏話を語った。

本イベントは、『ガルム・ウォーズ』の上映直後に観客から押井守監督へ直接質問できるというもの。だが、まずイベントを始める前に押井守監督から観客に「どうしても聞いておきたいこと」があるという。

それは、「今回上映前に字幕版を観た人はいるか?」ということだった。監督本人は、上映された吹き替え版を「日本語版としては良く出来ている」と言った上で、やはり字幕版の方が気に入っているという。

その場にいる多くの方が挙手するのを見て、とても満足気だった。

「この映画は、最も過酷だった」

監督本人がそう語るほど、本作の撮影は困難の連続だったという。そのストレスは目に見えるかたちで頭に現れ、撮影の前と後では頭髪の印象が大きく変わってしまったという。

その証拠にと、監督自ら壇上で帽子を脱ぐファンサービスに、会場からはドっと笑いが起った。会場の空気が和んだところで、いよいよ本格的にティーチインイベントが開始される。

進行役の牧野治康(プロダクションI.G.)が観客に監督への質問を募ると、熱心なファンからの熱い質問が飛び交う。ファンならではの濃厚な質問の連続に、両名ともに「もっとしょうもない質問でいいんですよ」と言う場面もあった。

以下、観客から寄せられた質問と、押井守監督と牧野プロデューサーの回答である。

――監督はよく映画で「構造」に関して言われますが、『ガルム・ウォーズ』の構造とはどんなものなのでしょうか?

押井:それを語ると朝までかかってしまいますが(笑)平たく言うと、建築のようなイメージ。映画のどの部分がどの部分を支えているか、というようなこと。キャラクターにしても、単独で成立しなくて、ペアないし三角関係で成立する。

よく、宮さん(宮崎駿監督)と構造の話をするけど「女性監督の映画には『構造』が足りないよね」って。そう言う宮さんの映画も、全く構造がなく願望だけの映画の典型なんだけど(笑)

――映画をつくるにあたって、「時間を切り取る」という言葉を使っていたと思いますが、今回の映画で気にされた点などはありますでしょうか?

押井:35年監督をやってわかってきたんだけど、映画でしか実現しえない体感しうる時間、登場人物が動いていなくても流れる時間…『スカイ・クロラ』の時から思うようになってきたんだけど、そういうのが最終的に映画のテーマになってきたな、と。

あえていえば、モーツァルトの時間、停滞しているんだけど静止していない時間、緊張感があるんだけど心地よい時間――前作の『東京無国籍少女』もそうだけど、そんな時間を目指しました。

――『ガルム戦記』の展示会の時、スタッフ意思共有用に造形物があったと思うんですけど。今後、フィギュア展開などは、ありえるのでしょうか?

押井:造形物というのは、イメージを確認する為の中間生産物なんですよ。プラモデルとか、特に艦船模型をやっている方はわかると思うんですけど。

戦艦大和だって、カッコいい戦艦っていうイメージがあるかもしれないけど、俯瞰で見るとものすごいたらい船なんですよ。当時の人が目撃しないアングルで見る。

造形物には、そういう弊害もある。最近はその弊害の方が多いかな。でも、なんで僕が毎回隙あらば模型をつくるかというと、それは僕が見たいからですよ。可能なら持って家に帰りたいくらいです(笑)

――今回、『ガルム・ウォーズ』は初見だったんですけど。ワンちゃん、とっても可愛いですね。殺伐とした世界の中でオアシスのようなものに感じました。

押井:登場するグラは、この世界の中の聖獣なんですよ。アンタッチャブルな存在。生き物としての本来のあり方というか。でも、なぜバセットなのかというと、それは僕がバセットが好きだからですよ(笑)。

映画としては、バセットは似合わないけど。あの子を探すのも、結構大変だったんですよ。現地の動物プロダクションにいって、60匹くらいの中からオーディションで選びました。

映画中、グラがおしっこするシーンがあったんですけど、気づかれた方はいましたか?おしっこをすると、バセットは必ず振り返るんですよ。

牧野:
ちなみに、あのシーンは編集の人が、最後まで切りたかったシーンです(笑)

――私の中で、押井監督の作品は退廃したイメージがありまして。でも、今回最後の方で森が出てきて、押井監督の作品としては珍しいと思いました。なぜ、森を出されたのでしょうか?

押井:実は、最初に考えていたのはああいった豊穣な森じゃなくって、化石の森のようなものを想定してたんですよ。

でも、気分の問題もあるでしょうけど、色彩が爆発するシーンが欲しくなった。森の緑とカラの赤い衣装。あそこはね、赤ずきんなんですよ。森に迷い込んだ赤ずきん。

実は色彩もかなりいじってます。ノイズが出るギリギリまで彩度を上げています。仕上げは相当大変だったと思う。もともと、僕の映画は彩度を下げて成立するものが多くて『アヴァロン』なんてその典型。

そういう渋い感じのが好きだった。でも、今回は色彩が欲しくなった。これはなんでかっていうと、年を取ったせいなんですよね。年をとるとね、原色に惹かれるんですよ。

――前売りについていた特典DVD。すごいと思いました。あれ、前売りの特典につけるくらいなら、Blu-rayの特典にも欲しいくらいです。あの映像は、どこから出てきたものなのでしょうか?

押井:あの映像は、スタッフにイメージを共有してもらうため、開発の初期につくったものです。あれつくるだけで、半年くらいかかりました。

本当はもっと簡素なものの予定だったんですけど、つくっている内にいろいろいじりだしてしまって。でも、あれをつくったおかげで、いろいろ大変だった。

プロデューサーや出資者にも見せたんだけど、「これでいいじゃない」と言われてしまった。アニメーション技法としてもよく出来た手法だったし。でも、僕はやっぱり実写でやりたかった。

あれをアニメーション化するには、プロダクションI.G.のトップクラスのアニメーターを何ヶ月も拘束しないといけないし。アニメーター自体、二度とやりたくない、と言ってましたからね。

牧野:この話をすると、18年分のたまったものが噴き出しそうで。また一晩くらいかかりそうですね(笑)

まだまだ質問希望の方は多かったが、時間の都合上、ここで質疑は打ち切りとなる。短い時間ではあったが、ファンにとってはとても濃厚なティーチインイベントだっただろう。

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