記事提供:デイリーニュースオンライン

山本一郎(やまもといちろう)です。最近、周囲に「どういうことなの?」と思ってしまう事案が増えてきて困っているところです。

ところで、最近巷でうわさの水素水ビジネスが絢爛になっておりまして、まあ要するに詐欺まがいのものも多いんですが、

きちんと研究してまともに水素の入った水の健康上の効用を追いかけている人もいれば、なんとなく「水素水って言葉を繰り広げればただの水が高額商品に化けるんだろ」と参入する業者もあるわけです。

論文その他もつらつら目を通しましたが、健康に効果があるほど高濃度の水素を摂ろうとすると、

下手すれば毎分1リットルで高濃度水素水を飲み続けなければいけないかもしれないとか、それでいて現れる健康上のメリットは胃の調子が少しよくなるかもしれないという類の微妙な効果があるかないかというぐらいだとか、

さまざまな話が出ておるようです。

『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)の記事でも、論文に書かれた濃度の再現実験その他については触れず、一定の容量の水素を取り込むことができれば、健康に効果があるかもねという微妙な表現になっているのがポイント高いです。

論文の重要度を示すインパクトファクターもさほどのものでもなさそうで、そうだとするならば、科学的に水素水が「この濃度でこれだけ入ればこういう効果がある」と宣伝しようにも、なかなか難しいのでしょう。

「水素水は体に良い」は本当か?効果の真偽を徹底検証

そんな中、一部上場企業でさえも水素水ブームに便乗するなどして、騒ぎが拡大しています。

どうも日本トリムが法的措置だ抗議だと物騒なことを言い出し、さらに「お前らは正気か?」と例によって、J‐castが裏取りに走るという定番の展開となって、伝統芸能っぷりに涙するわけでございます。

蔓延する怪しい水素水ブーム、コナミまで便乗

電解水素水で東証1部までのし上がった日本トリム、怪しい水素水ブームの延焼防止に「誹謗中傷や風説の流布には法的措置」と初期消火を開始

整水器メーカーがブチ切れた「水素水めぐるネットの噂」法的措置までほのめかす「警告文」の中身

問題は、これらの水素水の「効用」として、水素を飲むことで身体の活性酸素と結合し、活性酸素が体内でDNAを傷つけるなどの悪い働きをすることを防ぐと書いているケースが散見されることです。

もちろん、一部の研究ではこれらの水素の摂取が身体に良い影響を与えるとするものもあります。

ただし、それらは「一定の条件下で」という但し書きがつくものであり、ちょっと水素の溶けた水を飲んだところで、効果が出るとは言えないというのが実情じゃないかと思われます。

当然、効果の無いものを効果があるとして販売することは問題ですから、国民生活センターも対応に動き、また伊藤園などの一部メーカーも「水素水はこんなときにオススメです!」とは書いても「健康に良い」とは一言も言ってないわけであります。

「水素水生成器」の効果は?国民生活センター、明確化を要望

国民生活センター、「水素水生成器」販売の2事業者に効果の明確化を要望

伊藤園「高濃度水素水」に対するツイッター上の反応

■企業が続々と参入するも…

さすがにそういうことをしていると消費者の信頼を失うんじゃないのかなあと思う一方、消費者行政の中で伝説となっていた「コカコーラ ゼロ」のスローガンである「ワイルド ヘルス」という文言を想起させます。

コカコーラが砂糖代替品のノンカロリー甘味料を使ってゼロカロリーを謳うことで、健康的だというアピールをするわけなんですが、これも水素水同様に健康になるとはいっていない、効用なき健康アピールです。

商業的に「身体に悪いと言われる砂糖を使っていない商品なので、したがって健康的だ」というイメージを打ち出す一方、必ずしも砂糖を使っていないから健康になるという科学的エビデンスはないまま「ワイルドヘルスだ」とコピーを打つわけです。

もちろん、これ自体が悪いわけではありません。

水素水の場合は、水素の溶けた水を飲むと身体に良さそうだけど、特にこれといった明確な根拠はこの条件下では揃わないので、効用を謳わず、健康に良いというアピールだけで売っているわけです。

これを詐欺的とするか、まあ本人が納得していればそれでいいんじゃないのと割り切るかは、かなり微妙な線ではないかと思います。

清涼飲料水のブームっていうものは、おいしさや機能性といった点ではほぼやり尽くした感もあるので、

こういったネタが出ると「出遅れるな」とばかりに飛び乗って、さらにそれが大手飲料メーカーや大手製造業までもが参入するとなると、

効果がまったく無いことが後から分かって悲惨な事態となったマイナスイオンの二の舞になるのではと心配することしきりです。

この手の疑似科学、ニセ科学については、どうしても真贋つきかねる微妙な線を突かれたときどう対応するべきなのか、いま一度良く考えたいなあと思います。はい。

著者プロフィール

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数。

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

権利侵害申告はこちら

Spotlightのライターなら1記事最大3000円もらえる!日本最大級メディアでライターデビューのチャンス