またも悲しい事件が世界中を駆け巡っています。先日、米オハイオ州シンシナティにある動物園で、一頭のゴリラが射殺されました。

絶滅危惧種のニシローランドゴリラの「ハランべ」

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5月27日に17歳の誕生日を迎えたばかりだったハランべはこの動物園の人気者でした。体重180kgとまさに巨漢のハランべは、現在、絶滅の危機に瀕している貴重なニシローランドゴリラ。ところが、ハランべが飼育されていた獣舎に4歳の男児が誤って落ちてしまったことで、男児の救出を試みるためにやむなく射殺となってしまったのです。

数週間前にも、チリの動物園で自殺を図ろうとした男性がライオンの檻の中に入ったために仕方なくライオンを二匹射殺するという痛ましい事件が起こったばかりでした。人間の身勝手さに心を痛める動物保護団体も少なくなく、今回のゴリラの射殺も「どうしてわざわざ殺さなければいけなかったのか」と、最初は動物園側が激しく批判を浴びました。

ゴリラの傍で男児は泣き叫んでいる…

事件があった最初は、誰しもが「子供がゴリラに襲われる」という懸念がありました。男児が獣舎に落ちてからハランべが10分ほど男児を放さなかったからです。泣き叫んでいる男児の頭上からは「大丈夫よ!大丈夫だから落ち着いてね!」と男児の母親らしき声が。

すると、ハランべは男児を引きずって数メートル先に移動。見ていた人々から叫び声が上がりました。

動物園側は、あくまでも男児の救出を急がなければいけないということで麻酔銃より銃弾でハランべを射殺。このことが世界中で大きな批判を浴び、毎日のようにその様子が動画でメディアで流れる始末。そして今になって「ひょっとしてハランべは子供を守ろうとしたのではないか」と言われ出したのです。

ハランべは男児の手を握っている

子供からすれば巨漢のゴリラが目の前にいるために恐怖で泣き叫ぶのが当然でしょうが、ハランべは男児に暴行を加える様子はまるでなく、右手を握っていたのです。

この映像がメディアで流れると、人々は「ハランべは子供を守ろうとしていただけでは」と言い、「ちゃんと見ていなかった親が悪い」「親の管理不行届きで大事なゴリラが殺された」と今度は男児の親に批判が集中したのです。

「ハランべの死を悲しむ」という声と共にメディアが注目したのは「男児の両親への批判」でした。あるメディアでは「男児の両親には前科があり、酒とドラッグ好きの最低の親」と批判。動物保護団体も「ハランべが射殺されるような目に遭わせた男児の両親を逮捕すべき」「代わりに彼らを射殺しろ」といった声も寄せられてしまうまでに。

これらの批判を受けながらも、男児の両親はFacebookで「楽しかった1日になるはずが、恐怖の1日になってしまったけど、息子が救われたことに感謝している」とメッセージを投稿。

ネット上では「両親が前科者だとか関係ない」と批判の批判をする人も現れています。そしてある黒人の女性は「この批判は明らかに黒人への人種差別です」と断言。

その女性はYouTubeで「あなた方がどう解釈しようと自由ですが、私は一言言いたい」と前置きし、「過去にも動物園でこうした事故はあった。白人の子供がゴリラの獣舎に落ちたこともある。それなのに白人の両親は全く批判をされず、なぜ黒人の両親だけがこうした批判を受けるのか。」と訴えています。

「動物園のような、子供にとって興奮しやすい場所では、どの親でも子供の行動に注意しなければいけないのは当然。人種は関係ない。そして今回男児が無事で救出されたことは何より嬉しいこと。でも、社会の男児の両親への批判はおかしいのではないか。なぜ、親が逮捕されなければいけないのか。」

それ以前に、なぜこの事故で「育児放棄」呼ばわりされなければいけないのか、と女性は訴えています。これはどう見ても「事故」であって、親が育児放棄の末に起こったことと結びつけるにはかなりの無理があるのではないでしょうか。

出典 YouTube

現在、このような形で射殺されてしまったハランベの死を悼み、30万人もの人々が「ハランべに正義を!」と訴えて署名運動がネット上で行われています。動物園側はあくまでも「正しい判断だった」と主張。

男児に怪我がなく救出されたことが何よりですが、やはり尊い動物の命がこんな形でまたも人間に奪われてしまったことが悲し過ぎます。でもだからといって男児の両親を「育児放棄」と批判して集中攻撃するのは間違っているのと思う筆者。事件の直前、どんな状況があったにせよ、子供が一人で柵をよじ登り落ちてしまったのを多くの人が見ています。

ハランべよ、安らかに…

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批判が批判を生み、また横から別の批判も生まれて行きどんどん大きな問題になっている今回の「ゴリラ射殺事件」。ハランべもこうなることは望んではいなかったはず。体は大きくても心は優しいと言われるゴリラなだけに、このような最期を迎えさせてしまったことが悔やまれてなりません。

男児が無事だったことがやはり何よりですが、ハランべの死を哀しまずにはいられない人が多いというのもまた理解できる気がします。と同時に男児への両親の批判も早く収まって欲しいと思う筆者です。

出典 YouTube

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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