10万人以上が暮らすエチオピアの難民キャンプ

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南スーダンから来た難民10万人以上が暮らす、エチオピアの難民キャンプ。そこで活動する日本人看護師が、授乳しているやさしそうなお母さんを見つけます。でも、その赤ちゃんには秘密があったのです。

ひとりの赤ちゃんを救った、南スーダンのお母さんたちの驚きの行動とは?

難民キャンプで活動する看護師・畑井智行さん

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こちらの男性は看護師の畑井智行(はたい ともゆき)さん。2013年から国境なき医師団の活動に参加。リベリアやネパールなどさまざまな国や地域で活動してきました。

そんな畑井さんが、エチオピアにある難民キャンプで活動していた頃に体験したというお話です。

畑井さんは、難民キャンプに病院を立ち上げる活動に参加していました。

このキャンプには、紛争で村ごと焼かれたり、家族を殺されてしまったり、命からがら南スーダンから逃げて来た人々が続々と集まっていました。

住む場所も食べ物も十分になく、病院には栄養失調やマラリアなど、さまざまな感染症にかかった患者さんが来院してきます。10万人もの人々が暮らすキャンプなので、その人数は圧倒的です。

ある赤ちゃんとの出会い、その子のお母さんは…

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畑井さんは“赤ちゃんに授乳するお母さんの姿を見ました。栄養失調のために、小さな赤ちゃん。そのお母さんのやさしいまなざしが、とても印象的だったそう。

翌日、畑井さんがまたその赤ちゃんを見かけます。お母さんからおっぱい貰えてよかったね…と思っているとふと異変に気づきます。

あれ?お母さん昨日の人と違ってないか?

なんと、昨日とは違うお母さんから授乳されていたのです。これはいったい、どういうことなのでしょうか?

気になった畑井さんは、赤ちゃんを抱いている女性に尋ねてみることにしました。

ひとりの赤ちゃんにママがたくさんいる理由

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「この子の本当のお母さんは誰ですか?」

畑井さんの質問に対して、赤ちゃんを抱っこしていた女性はこう答えました。

「私たちは母親ではありません。この子の本当の母親は出産時に亡くなりました。父親は南スーダンの戦闘で生死不明です」

生まれてすぐ、一人ぼっちになってしまった赤ちゃん。そんな赤ちゃんを、他の入院患者のお母さんたちが交代で育てていたのです。

しかも入院日数は平均で5日のため、すでに何人ものお母さんがバトンタッチしていたというから、驚きですよね。

「私たちは、赤ちゃんの両親のことは全く知りません。でも、小さな赤ちゃんが居て、私たちはその子に母乳を与えることが出来るわ」

赤ちゃんを愛おしいと感じ、助けたいと願うのは世界共通のママの思い。その気持ちから、南スーダンのお母さんたちは知らない赤ちゃんに授乳をしていたのです。

お母さんたちのやさしさと、たくましさ

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自身も難民キャンプに暮らす中、見ず知らずの他人の赤ちゃんを育てるやさしさとたくましさ。お母さんたちの話を聞いたスタッフも、動き出します。

新生児サイズの蚊帳を作ったり、淋浴をさせたりするなどみんなで協力。極度の栄養失調だった赤ちゃんは、たくさんのお母さんたちの愛情に支えられて、自分でスプーンが持てるほどに回復したのです!

畑井さんの腕の中にいる小さな赤ちゃんは、お母さんがいないという過酷な状況でもたくさんのお母さんたちのお蔭で命を繋ぐことが出来ました。

そこには日本のママたちが抱える、孤独や不安感を救うヒントがあるのかも知れません。

国境を越えて見つけた“ひとりじゃない”子育て

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今の日本は、核家族化や個人化が進んでしまい、昔は当たり前のようにあったご近所付き合いや人とのつながりが少なくなっています。

でも南スーダンのお母さんたちは、母親を失った子どものためにみんなで赤ちゃんを育てることで赤ちゃんを救うことが出来ました。

そんな風に地域で協力し合って、ママや赤ちゃんを支えていくことが出来たら、子育ての不安や孤独感に押しつぶされそうなお母さんの助けになるのではないでしょうか?

子育てを他人事としてとらえずに子どもはみんなで育てるという南スーダンのお母さんたちの姿勢は、これからの子育てのありかたを私たちに示しているのかも知れませんね。

“医師団のこぼれ話”をもっと覗いてみませんか?

©Carille Guthrie / Medecins sans Frontieres

国境なき医師団で活動する、畑井さんのエピソードはいかがでしたか?

“国境なき医師団”で活動する人の話が読める「医師団の雑談」というウェブサイトでは、思い出話以外にも世界の驚きの食生活など、興味深い情報が満載です。

医師団で活動する人の目線で見える世界を、ぜひ覗いてみてください。

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