記事提供:クーリエ・ジャポン

「政府は信用できない。経済的にも不安ばかり。結婚したり子供を持ったりするなんて考えられない。こんな状況で明るい未来が待っているとは、とても思えない」

──そんな日本の若者の絶望が、7ヵ国の大学生を対象にした調査で浮き彫りになった。

調査をおこなったのは、20代の若者の動向を調査・分析する機関「大学明日20代研究所」だ。

韓国、中国、日本、インド、米国、ドイツ、ブラジルの7ヵ国1357人の学生を対象に、自国の政府や結婚、仕事に対する価値観についてオンライン上でアンケート調査を行った。

1. 政府を信頼しているか?

政府および公共機関をどれくらい信頼しているか、クリーンであるか、効率的な業務処理を行っているかなど4つの指標に対する認識と満足レベルを測定した後、5つの項目の平均値で算出。

「政府をどれだけ信頼しているか」という質問からは、日本、韓国、ブラジルの3国で特に不信感が強いことがわかった。

逆に「信頼している」と答えた人がもっとも多かったのは中国で、56%だった。

国家に対する信頼度が7ヵ国中、最低だったのはブラジル(11.7%)だ。

米通信社「ブルームバーグ」によれば、国営石油公社ペトロブラスの汚職や高いインフレ率で、ブラジルは現在、政治、経済ともに非常に不安定な状態にある。こうした世情が今回の調査にも大きく関与していると言えそうだ。

また、2014年に開催されたFIFAワールドカップでは、関連投資の達成率が目標に届かなった。

16年に開催されるリオ五輪関連投資についても、緊縮財政の影響から一部は見送られるとみられていて、「五輪による経済効果は期待できない」という感覚が国民をさらに意気消沈させている。

日本(16.1%)より低い結果になった韓国(15.8%)でも、経済の落ち込みが激しい。韓国銀行によると、13年2月に朴槿恵政権が発足してからの3年間の平均成長率は2.9%で、過去の政権の実績と比べると明らかに失速している。

16年2月には、輸出額が前年同期比18.5%減と大きく減少。輸出依存度が50%以上の韓国経済にとって、これはかなり深刻な状況だ。

原因は最大の貿易相手国である中国経済の伸び悩みで、韓国政府は「回復は容易ではない」としている。

2. 結婚や出産、子育てに対して前向きか?

不安定な政情は、結婚や出産・子育てに対しても消極的にさせるようだ。

日本(40.7%)、韓国(47.5%)、ブラジル(20.4%)は「結婚は必ずするべきか」という質問に対しても、中国(73.6%)やインド(75%)に比べてそれぞれ低い数値を示している。

また、「子供はいなくてもいいか」という質問に対して、日本(17%)と韓国(16%)は7ヵ国のなかでも特に高かった。

内閣府の調査によれば、日本の出生数は1984年に150万人を割り込み、91年以降わずかな増加と減少を繰り返しながら、全体的には緩やかな減少傾向にある。

日本の少子化は、長引く経済不振、非正規雇用の拡大による賃金格差、長時間労働の横行、保育所の不足などさまざまな問題が複雑に絡み合うことによって引き起こされている。

16年5月18日、政府はこれらの問題を包括的に改善する「ニッポン一億総活躍プラン」を発表した。

25年度までに現在1.42(14年度)の出生率を1.8にまで上げる方針だが、中長期的な政策が多く、長期的な財源の確保が可能かどうかが疑問視されている。

韓国でも少子化は切実な問題だ。

米中央情報局(CIA)によると、韓国の出生率は約1.25人と、日本を下回っている。日本同様、不安定な雇用が未婚、少子化を助長しているのだ。

3. 卒業後、就職できると思っているか?

4. 将来的に起業したいと思っているか?

就職に対する不安が特に強いのは、やはり韓国だ。大学卒業後に就職できると考えている若者はわずか21.5%だった。

米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」によれば、韓国では特に若年層の失業が大きな問題になっていて、16年に入り、15~29歳の若年層の失業率が10%超に上昇。この15年間で最高水準になっている。

経済不振や雇用不安によって、現在の韓国の若者は「恋愛、結婚、出産」をあきらめざるを得ない「3放世代」と呼ばれ、最近ではこれにさらに「人間関係、住宅購入、希望、夢」を加えた「7放世代」だとまで言われている。

こうした社会の鬱屈した空気は、今回の調査にも如実にあらわれた。

これとは逆に、経済成長が続いている中国やインドの学生は、大半の質問において肯定的な回答をしている。

また、雇用不安の少ない中国では起業熱が高く(図4、61.4%)、香港紙「サウス・チャイナ・モーニングポスト」によれば、中国では1日平均4000社が新規に設立されていて、起業熱の高さは世界でも群を抜いているという。

インドもいま空前の起業ブーム(図4、60.3%)。「自国で起業したほうが、家賃や人権費などの起業コストが圧倒的に安い」という理由で、海外進学、就職組の帰国が相次いでいるという。

この状況に対し、インドのモディ首相は15年9月にシリコンバレーを訪問したときのスピーチで、「『頭脳流出』だと思っていたら、実は『頭脳預金』だった」と述べた。

一方、英「BBC」によれば、日本は先進国のなかでも特に起業に対して否定的だという。

スタートアップに投資するVCや銀行が少なく、大企業志向の若者が多いことが原因だという、日本経済の再生には新興企業への援助が必須だとも指摘されている。

5. 現在の人生に満足しているか、未来に希望を持っているか?

現在の自分や社会への満足度と未来への期待度を調査し、その差異を数値化した。

未来に対する期待値について、ドイツは+1.6と低い数値を示した。もともと現状に対する満足度は高いが、昨今の膨大な数の難民の受け入れに生じた社会不安が、若者にも徐々に影響を及ぼしているようだ。

だが、最下位だったのは日本。7ヵ国のなかで唯一、-5.7とマイナス値を示した。つまり、日本の若者の多くは、「未来は現在より悪くなる」と考えているのだ。

実は、13年に主要6ヵ国(米国、英国、スウェーデン、フランス、ドイツ、韓国)の若者を対象に行われた意識調査でも同様の結果が出ていた。

「自分の将来について明るい希望を持っている」という質問に対して、米国56%、スウェーデン52%、韓国ですら42%だったのに対し、日本は12%で突出して低い数値を示したのだ。

だが、世界的に見れば日本は平和であり、衣食住に苦労することはほとんどない。そんな日本の若者が、未来に希望を持てない理由はなんだろうか?

明治大学国際日本学部の教授で『日本の若者はなぜ希望を持てないのか』(草思社)の著書でもある鈴木賢志は、原因は受験や就職などで一度失敗するとなかなか挽回できない、日本の社会システムにあると指摘する。

そのため、日本の若者はマイナス要因をネガティブに捉える傾向が強く、希望がどんどん縮小しているのだ。

日本の閉塞感はすでにピークに達しているようだが、鈴木は若者が希望を取り戻すヒントは「国際交流」にあるという。

ある調査では、「国際交流活動を経験した日本の若者のほうが、そうでない若者よりも将来に希望を持っている割合がずっと高い」という結果が出ているからだ。

鈴木はこの理由を、「日本にあるシステムやルールがすべてではないことに気付くことで、希望を高めている」と分析。より柔軟で寛容な社会を作ることが、日本の若者に希望を取り戻すための大きな鍵になると言えそうだ。

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