イギリスに住んで20年以上。度重なるNHS(国営病院)の誤診に驚くこともなくなってしまった筆者ですが、このほどニュースとなった悲惨な医療事故は、衝撃と共に激しい怒りを覚えてしまいました。

目覚めたら両足が切断されていた母親

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出産のために病院へ行き、目覚めた時には可愛い我が子をその手に抱きしめ幸せいっぱいのはずが、一気に闇の中へ突き落とされることになってしまったのはデヴォン州在住のエラ・クラークさん(31歳)。

彼女は幼馴染みの夫(32歳)との間に既に7人の子供を儲けており、今回8人目の女児を出産予定でした。子だくさんを望んでいた夫婦にとっては、8人目の子供も待ち遠しく、家族でワイワイ仲良く暮らすことを最も幸せと感じていたのです。

これまで帝王切開で無事に出産していたエラさんは、今回の8人目の子供の出産にも何の不安は抱いていませんでした。ところが、20週目の時に検査で「前置胎盤」であることを告げられたのです。

前置胎盤とは、胎盤が正常よりも低い位置にあり、子宮の出口(子宮口)を塞いでしまう状態をいいます。子宮は、子宮口を下側にして、ふくらんだ風船のような形をしていて、通常、胎盤は子宮の頂点に近い部分、つまり天井側(上側)貼り付いています。

しかし、前置胎盤は天井側ではなく、下側の子宮口付近に胎盤がある状態です。

出典 http://192abc.com

36週目に出血。緊急帝王切開で出産へ

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前置胎盤と言われても、自分のこれまでの出産経験に自信を持っていたエラさんは同時に病院側も信用していたために、さほどの不安は感じなかったそう。

ところが去年12月に多量出血して緊急帝王切開となりました。

赤ちゃんは無事に生まれた

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ウィンター・ローズと名付けられた8人目の女児は元気に生まれてきました。ところがエラさんは6リットルの出血をし、帝王切開後、子宮を摘出しなければならない異常事態となってしまったのです。

すぐに昏睡状態になってしまったエラさんはICUで輸血と治療が行われました。

最悪の事態はここで起きてしまったのです。エラさんが油断ができない状態であったにも関わらず、NHSの医師は6時間もエラさんの様子を見ることを怠ってしまったというのです。

そのため、血流が悪くなり足に血瘤ができてしまっていたエラさんの体は、次第に血液の循環をストップさせ医師が気付いた時には既に組織が破壊され、手遅れの状態でした。

このままでは臓器が壊疽を起こしてしまい命に関わるということで、なんと両足を切断せざるを得なくなってしまったのです。

5日間の昏睡状態から目覚めた時、両足はなかった…

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エラさんが意識を取り戻したのは出産から5日後のことでした。その間の記憶が全くないエラさんには「帝王切開の数時間後、目覚めた」という意識しかなく、ウィンター・ローズちゃんを看護師から渡されて抱きしめた時に傍にいた医師から全てを聞いたのです。

「薬がまだ切れていなかったので、足に感覚がなくても変には思わなかったんです。でも次第に状況が見えてきて。両足を切断されてしまったという事実が私の人生を変え、心を打ちのめしました。」

「どうしてこんな目に…!」

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夫のイアンさんも言い様の無い怒りと悲しみでいっぱいでした。エラさんは涙を抑えることができなかったと言います。

「子供たちと幸せな生活をこれからも送っていくはずだったのに、病院側の管理ミスで両足を切断されたことで人生の全てを奪われたような気持ちです。」

一番辛いのは、子供たちが怖がっていること…

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13歳の長女を筆頭に今8人の子供の母親となったエラさんですが、エラさんの突然の変わりようにまだ幼い子供たちは変化を受け止められない様子。

「特に13歳の娘は、難しい年頃で、私と一緒に学校へ行きたがらなくなりました。特に5歳の娘もまともに私を見ようとしなくなったんです。」

母にとって、子供たちから身体的な事情で怯えられるということほど辛く悲しいことはないでしょう。エラさんにとっても、まさに突然の出来事で目覚めたら両足がなかったのです。パニックになるのは当然。そして今後それがトラウマになるのはもはや避けられないことではないでしょうか。

病院側はセラピーやリハビリをエラさんに与えたそうですが、何よりエラさんの精神的ダメージが大きく、自宅に戻ってもなかなか受け入れることができないといった状態です。

でも生まれたばかりの子供と7人の子供の世話があるために、毎日泣いてばかりいられないのが母親なのです。

5ヶ月後に病院側から謝罪の手紙が

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管理不行届きのミスを認める手紙がNHSから送られてきたのは、エラさんが両足を失った5ヶ月後のことでした。普通なら、生後5か月になったウィンター・ローズちゃんの成長を楽しみ、幸せいっぱいのはずだったファミリー。

でも「私の足の切断のせいで子供たちからも怯えられ、家族は崩壊してしまいました」と語るエラさんの毎日は、私たちの想像を絶する辛さであることでしょう。

「13年間、普通の母親だった自分はもういない…」

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エラさんの精神状態は5ヶ月経った現在も非常に不安定で、カウンセリングを受けている医師からは「産後うつ」と診断されていますが、これはとても一言では片付けられない問題です。

集中治療室に入っている出産後の女性の監視を6時間も怠るというのは、信じがたい事実。何人も医師がいながらのこの医療事故で、一人の母親の人生が壊れてしまったのです。そしてもちろん、家族にも多大な影響が出ていることは否めません。

この5か月間、悪夢しか見なくなったとエラさんは言います。自分の両足切断が夢だったらどんなにいいか…。でも「命が助かっただけでも良かったと思っています」と8人の子供の母親は気丈にメディアでも応えています。

今後、子供たちがママの姿に慣れていくことを心から願う筆者。そしてすくすく育ってくれているウィンター・ローズちゃんの笑顔を見ることで、エラさんの精神が少しでも軽くなって、愛する家族と共に幸せな生活を送ってくれることを願ってやみません。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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