中央アメリカ中部に位置する共和制国家

Mozote, the view from above
by alison.mckellar

エルサルバドルという国を耳にしたことがありますか?中央アメリカ、いわゆるラテンアメリカの中央に位置するこの発展途上国は、多くの社会問題を抱え、ラテンアメリカの中でも上位に入る貧しい国としても知られています。

人口密度としてはアメリカ最大ともいわれているエルサルバトルは、宗教はローマ・カソリック教が60%近くを占めており、これが文化に多大な影響を与えています。元々伝統的なローマ・カソリック教はキリスト教の中でも非常に厳格で、女性に対しては中絶を認めていないことでも有名です。

避妊や不妊手術を禁じるカソリック教

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カソリック教の信者は、中絶はおろか避妊具を使うことも忌み嫌います。子供を授かることを「神の恩寵」と崇めているために不妊手術をしたり中絶をした女性に対しては、なんと禁固50年という厳しい刑が処せられるのです。

そして、女性が難病を患っていて妊娠の継続や出産に命の危険が伴っても、母体は胎児の命よりも優先順位が低いとみなされ中絶することは許されません。また、胎児に重度・軽度関係なく何らかの障がいがある場合でも中絶は禁止。もちろんレイプ被害で妊娠しても無理やり出産しなければいけないのです。

人権団体が激しく抗議するも…

Free "Las 17"
by DC Protests

女性の権利をことごとく無視した宗教による圧力が文化となっているエルサルバドルは、世界中の人権団体から激しい抗議を受けています。自然に流産したという事実であっても「違法に胎児を始末しようとした」と疑われ逮捕、そして投獄されてしまうのです。

お腹の子供を失った悲しみを癒す間もなく理不尽に逮捕され何十年も禁固刑を受けなければいけないエルサルバドルの女性。彼女たちに「生きる」という権利はないも等しいのではないでしょうか。

レイプにより妊娠してしまい、中絶したくてもできない…。そんな人たちは自殺を選ぶことが多いと言います。そして広がる違法中絶の闇。免許を持たない医師により中絶を望む女性が集まるも、いい加減な手術で逆に命を落としているというケースが10万人に120人はいるとか。

自分で無実を証明しなければいけないという司法


by tian2992

エルサルバドルでは、病院側が勝手に「この女性は中絶した」と主張すれば投獄されるというあまりにも理不尽な社会になっています。自然流産であってもそれを自分で証明する方法がないと勝手に中絶とみなされてしまうからです。

そして、証明するためには弁護士を雇わなければいけません。エルサルバドルの多くは貧困層。それゆえ弁護士を雇う余裕がないどころか十分な教育を受けていない女性は、文字さえも読めないという状況なのです。

暴行を受けて妊娠してしまった10代の女性が流産をしたために禁固30年の刑を言い渡されたという事実もあります。予期せぬ流産がエルサルバドルでは「凶悪殺人」として扱われるのです。

人権団体の動きもあり、この女性は禁固30年を言い渡されたものの7年で釈放となりました。それでもいわば冤罪もいいところ。こんな風に人生を狂わされている女性がエルサルバドルには多く存在しています。

2011年に流産したマリア・テレサ・リヴェラさん(33歳)

出典 http://www.independent.co.uk

マリアさんは5年前に多量出血を起こしトイレで意識を失いました。家族に発見され病院に搬送されるも、病院側が「中絶」と主張し警察に通報。そのためマリアさんは禁固40年の判決を受けたのです。

またもここに無実の罪で収監された女性が。マリアさんには息子がいましたが投獄中は家族と会うことは一切許されませんでした。ところが4年間の投獄の後、マリアさんは釈放されることになったのです。理由は「容疑不十分」でした。

1998年以降、いかなる中絶も禁止するエルサルバドル

Empowering Women - Panel Discussion on the occasion of the International Women’s Day
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命の重さをリスペクトするというと聞こえはいいですが、女性に全くの権利を与えず、自然流産さえも「罪」として扱うとは人権冒涜も甚だしいと思わずにはいられません。もし、その女性が子供を望んでいて待ちに待った子供が不幸にも流産してしまったとしても、病院に「中絶」と誤って通報されれば逮捕され投獄されてしまうのです。

中世ならまだ、宗教が国を支配するという意味では理解できる気がしないでもないですが、この現代社会でこのような理不尽な法律が女性から権利を奪い、冤罪で投獄するという知識面でも経済面でも抵抗できない貧困層の人々の揚げ足を取るような文化は、国を破壊するだけではないでしょうか。

歪みに歪んだ女性への偏見と冒涜。でもカソリック教徒の人たちは中絶を非難した病院側に味方し、冤罪で逮捕した警察側を称賛しているのです。2013年にも、慢性の難病を患っていた妊娠中の女性が、胎児に重度の障がいがあることがわかって中絶を申し出たものの拒否。

母体への危険な影響と、出産しても胎児が死亡する恐れもあるという二重の危険性にも関わらず裁判では女性の中絶はいかなる理由であっても認めない、と一刀両断。特例だと主張し、中絶を申し出た医師さえも刑事責任が問われることになったのです。

「流産は犯罪ではない」

Free "Las 17"
by DC Protests

人権団体が猛烈に批判するカソリック教の中絶禁止法と流産による投獄。胎児が出産後死亡する可能性が高くても中絶を認めないとは、いったいどういう命のリスペクトの仕方をしているのかと開いた口が塞がりません。

新しい命が生まれれば、それを見守り育てる親も必要。その親が出産後、難病で亡くなってしまったとしても、生まれた胎児が施設に預けられその後の人生がどうなっても「とりあえず生まれれば良し。後のことは知りません。」と言っているようなものではないでしょうか。

流産を殺人罪とするカソリック教

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キリスト教の教えとはそういうことなのだろうか、と宗教に疑問を持たずにはいられません。宗教の重圧で人権が虐げられる国は、常に女性や子供が犠牲になっています。それはイスラム教でもキリスト教でも同じ。

宗教はあくまでも人と神の問題。そこに法が介入すると言うこと自体が間違っているのではないかと思う筆者。宗教の自由と言われるように、何を信仰するのもその人の自由ということは、それによって人を束縛してはならないということではないでしょうか。

貧困層に見受けられがちなこうした女性への権利の冒涜ですが、カソリック教色が濃いイタリアでも「中絶」は一切禁じられています。イギリスの隣国アイルランドも同じ。ただ、エルサルバドルは流産で実刑ですから女性への対応があまりにも酷いといえるでしょう。

皮肉にも投獄で祈り続ける女性たち

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このほど、4年で釈放されたマリアさんは「毎日監獄の中で祈っていました」とメディアで答えています。マリアさんにとっての神は何なのでしょうか。自分を監獄に陥れたカソリック教の神なのだとしたらあまりにも皮肉なこと。

神の教えによって投獄された自分がまた神に祈りを捧げる…エルサルバドルの女性の権利と尊重は、この法律が改正されないことには永遠に手に入れることはできないでしょう。人権団体が躍起になって女性の権利を主張している気持ちが理解できる気がします。世界にはこのようにあまりにも無慈悲な国が存在することが悲しいですね。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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