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元アイドルでシンガーソングライターの女性が、ファンの男によってライブ会場の外で刺された事件。この女性は以前からこの男による執拗なストーカー行為に悩まされていました。

報道では「ファンとアイドルの距離」が近すぎることが原因とも言われていますが、NY在住でメルマガ「ニューヨークの遊び方」の著者・りばてぃさんは「問題はそこではない」と断言。

米国の判例を紹介し、日本でも同様の制度を導入すべきと持論を展開しています。

そもそも何が問題なのか?

5月21日、日本で衝撃的なニュースが報じられた。

大学に通いながらアイドル活動を続けていた、まだ20歳の冨田真由さんが、東京都小金井市のライブ会場でファンに刃物で刺され重体となった事件だ。

この事件を受け、日本では、元アイドルや現役アイドルからも「ファンとアイドルの距離が近すぎる」とか、「ファンはアイドルを恋愛対象としてみてはいけないと思う」といった声が上がっていると報じられているようだ。

でも、こういう発想は、何か問題が起こると、まず、自分の方に落ち度がないかとか、改善できることはないかなどと自省する、真面目で勤勉な、いかにも日本的な考え方のような気がする。

そういう考え方は、日本人の良いところなのだけれど、でも、今回の事件、本当に、そういう問題なのだろうか?

〔ご参考〕

ファンとの「近すぎる距離感」売りにする芸能界 元アイドルが「トラブル誘発」経験を告白した

ファンとアイドルの距離が近すぎたり、アイドルを恋愛対象としてみることが問題だと言ってる人たちは、

じゃぁ、もっと距離が近くて、恋愛対象としてみられることもある普通の女性だったら、ストーカーの被害にあったり、刃物で刺されてたって仕方ないって思ってるのだろうか?

そんなバカな話ないでしょ?

だったら、アイドルだからとか、関係ないじゃん。

今回の事件で、みんなで考えなきゃいけないのは、まず、「今、この瞬間も、ストーカーの被害にあっている女性がいるとしたら、どうやって彼女たちを守るのか?」ということじゃないの?

『警視庁によると、冨田さんは9日、武蔵野署を訪れ、「ブログやツイッターに岩埼容疑者から執拗に書き込みを受けている」などと相談していた』

〔ご参考〕

「ブログやツイッターに(容疑者から)執拗に書き込み受けている」被害者の冨田真由さん、警察に今月相談

とか、さらりと報じられてるけど、これが本当だとしたら、警察側が、業務上過失傷害で訴えられたっていいくらいかもしれない。

警察の対応からも感じる。「常識の通じない相手」に弱い日本人

だって、警察は民事不介入だから…っていう言い訳は、そのストーカーしている人が、元彼とか、元旦那とか、百歩譲って友人や職場の同僚とか、被害にあった女性と、もともと直接何かしらの関係があった場合にだけ成立する話でしょう。

あと、元彼とか、元旦那とか、友人や職場の同僚とかがストーカーしてるのなら、周りに誰かしら相談に乗ってくれたり、助けてくれる人もいるかもしれないけど、

今回のケースみたいに、相手がどういう人かまったく分からない場合、警察のほかに助けてくれる人、なかなか見つからないと思う。

だって、相手がどういう人かまったく分からないと、助けてあげたくても、間に入るのはめっちゃ怖いじゃん。

このへんの発想力のなさが、この件に限らず、同質社会の日本の残念な弱点な気がする。

人口の大多数、それこそ97%くらいが同じ日本人という日本では、無意識のうちに、みんなだいたいこのくらい理解してるだろうとか、そこまでおかしな奴はいないだろうって、みんななんとなく思ってる節があって、

何かしら極端に例外的なケースが起こると、なかなか適切な対応をとれない。

空気読めとか、世間体を考えろっていうのは、大多数のまともな人には通用するけど、今回のように頭のおかしい人だって、何百万、何千万人の中に一人くらいはいるわけで、

常識が通用しないとき、どうするか?って考える力
は、今後、グローバル化が進んで、日本の常識が通用しない場面が増えていけば、ますます重要になっていくだろう。

とにかく、そのあたりは、最初から多種多様の文化や価値観やライフスタイルを持つ、様々な人種や民族が集まってできてるアメリカのような国とは違う。

そう、アメリカでは、こうした犯罪への対応が、日本とはかなり違っている。

いろいろな違いがあるのだけれど、例えば、ストーカーに限らず、セクハラとか、いじめとか、盗撮など、極めて悪質なのに刑事罰はさほど厳しくない事件が起こったら、

類似の事件の予防のため、そんなことをしたらどんなに大変なことになるのか見せしめ的な意味合いも含めて、誰もが驚くとてつもないペナルティが加害者に課せられたりもする。

ストーカー犯罪自体への刑事罰は、懲役数年程度だったとしても、損害賠償金とかなんやかんやで、あら、それって実質的には死刑のようなものじゃないの?って感じの判決になることもあったりするのだ。

実は、つい最近、アメリカで、ストーカー&盗撮事件に絡んだ超巨額な賠償裁判が結審して、大きなニュースになっていたので、その内容をご紹介しておこう。

誰もが驚くとてつもないペナルティ

まず、被害にあわれたのは、FOX、ABC、ESPNなどの大手テレビ局でスポーツ解説者やキャスターなどを務め、

2014年には人気番組『ダンシング・ウィズ・スターズ』(Dancing with the Stars)の司会などもされたエリン・アンドリューズ(Erin Andrews)さん。

今から8年ほど前の2008年、スポーツ専門チャンネルESPNのキャスターだったアンドリューズさん(当時30歳)は、取材のため滞在したホテル(The Nashville Marriott)の自室内で裸になっているところを、

密かに隣の部屋に滞在していたストーカー
のマイケル・バレット(Michael Barrett、当時46歳)に盗撮され、その動画をインターネット上に流出された。

そう、この例からも明らかなとおり、ストーカー被害ってのは、別に「ファンとアイドルの距離が近すぎる」から起こるわけじゃない。

どんなに距離が離れていても起こる可能性はあるのだ。

犯人のマイケル・バレットは、保険のセールスマンとして出世したこともある普通の物静かな男性で、離婚したが結婚経験もあり、子どももいるが、しかし、当時はうつ状態にあり、親と一緒に実家に住んでいた。

バレットが逮捕されてから、彼を知る人々からは「まさかそんなことをする人だとは思わなかった」という驚きの声や、父親から、「息子は真面目で勤勉」と擁護する発言が出たという。

このあたり、この手の犯罪をする人に何か共通点があるのかもしれない。

そんなマイケル・バレットに対するストーカーと盗撮の刑事罰は、懲役2年半(すでに釈放済み)となっていたのだが、被害にあったアンドリューズさんは、それだけで済まさせなかった。

犯人に彼女の隣の部屋を与えたホテルに対し、7,500万ドル(約85億円)!!!もの巨額の損害賠償訴訟を起こしたのだ。

そう、日本円で85億円。

85万円とか850万円じゃない。

ストーカーによる盗撮を放置したという訴えなわけだが、実に、巨額だ。

ストーカーによる盗撮を放置して85億円も賠償請求できるなら、もし、今回の小金井市の事件がアメリカで起こっていたら、その賠償金は、数百億円とか、数千億円になってるかもしれない?

で、もちろん裁判になった。

ストーカーは如何にして、被害者の部屋を知ったのか?

その裁判で、ホテル側は、アンドリューズさんの滞在してる部屋を、犯人のバレットに教えていないと猛烈に反論。

ホテルのフロント係は、フロントに来た犯人に他のお客の許可なしで、部屋番号を教えることは絶対にないし、予約時にもそんなことはできない仕組みとルールになっていると主張。

マリオット・グループの副社長も、31年間働いてきたけど、こんなケースは初めてで、絶対に、アンドリューズさんの部屋を教えることなんてありえない、と各所でふれまわった。

しかし、数日に渡って公判が続く中、2時間半にもわたる犯人の音声テープによる証言が行われることになり、どうやって隣の部屋を確保したのか、その手口が明らかにされた。

それによると、まず、フロント係に聞いても教えてもらえなかったが、レストランに行くふりをしてフロントからはずれ、ホテル内に設置してあった内線電話でフロントに電話し、

アンドリューズさんにつないで

と伝えたら、特に、何も言われずにつないでもらえて、内線電話のデジタル表示画面には、相手(つまりアンドリューズさん)の部屋番号が表示されるので、それで分かった、という。

犯人が、すぐにその部屋がある階に行ってみると、メイドがその部屋の隣の部屋を掃除していたので、そこで、隣の部屋に空室があることを知ったとのこと。

また、室内から漏れてくる声で、アンドリューズさんが滞在していることも確認したそうだ。

後は、フロントに戻って、先ほど確認してきたアンドリューズさんの隣の空室になっている部屋を、部屋番号で指定して確保するだけ。

まったく問題なく、隣の部屋を確保できたという。

…とまぁ、このように犯人本人の証言で隣の部屋を確保した手口が明らかにされたわけだが、

これがすべて事実なら、80億円を超える巨額の賠償金を支払わなきゃいけなくなるほどの過失は、ホテル側にはなかったんじゃない?って印象を受ける方も、たぶん、いらっしゃるだろう。

まず、アンドリューズさんの部屋番号を教えたわけじゃないし。

そもそも、何十億円もの巨額の賠償金を請求できるような事案なのか?っていう、根本的な疑問もないわけではない。

裁判所が下した驚きの判決とは?

ところがである。

なんと、最終的な判決は、アンドリューズさんの勝訴!!!となった。

ホテル側の主張や状況を勘案して、賠償金は5,500万ドル(約62億円)に減額されたが、その支払いを命じたのである。

す、すごい。

「ストーカーとホテルに62億円もの巨額賠償命令が出た!!!」

なんてインパクトの大きなニュース、そうそうあるものじゃない。

あまりにインパクトが大きかったからか、一応、このニュースは日本のメディアでも報じられている。

〔ご参考〕

米キャスターのヌード盗撮、ストーカーとホテルに62億円賠償命令

日本のメディアでは報じられていないさらに細かい情報をお伝えすると、この5,500万ドルのうち49%の2,695万ドルをホテル側、残りの51%の2,805万ドルは、犯人のバレットが支払うという判決だった。

でも、2,805万ドル(31億6200万円)もの賠償金は、家や車などのほか先祖代々の資産のすべてを売却したって、個人で払える人なんて、滅多にいないだろう。

即刻、バレットは自己破産が決定。

詳細は明らかにされていないが、バレットが払えない分もマリオットが代わりにいくらか追加して支払うということで和解が成立した。

〔ご参考〕

Erin Andrews Reaches A SettlementWith Marriott Hotels

まるで、法廷ドラマのような結末である。

この実話をもとに、堺雅人さん、新垣結衣さん共演のドラマ『リーガル・ハイ』でストーカー裁判のストーリーを作ってもらいたいくらいだ。

いや、ドラマでも、ストーカー被害の賠償金として62億円も支払えなんて劇的な結末は、なかなかないだろう。

そんなわけで、テレビでお馴染みの人気キャスターのアンドリューズさんの一件ということを抜きにしても、

「ストーカーとホテルに62億円もの巨額賠償命令が出た!!!」

というニュースは、アメリカでは非常に大きな注目を集めることになった。

ここまで話題になると、今後のストーカー犯罪を抑制する効果も期待できそうだ。

あるいは、この判決が先例となり、今後、アメリカでは、ストーカー被害にあった女性たちが、数億円、数十億円単位の賠償訴訟を起こし、続々と勝訴する事例が続くかも…。

そういう意味では、アメリカのストーカー裁判に対する考え方を根底から変えた歴史的な判例なのかもしれない。

いずれにせよ、当然、ストーカー犯のバレットへの世間の目というか、社会的制裁は、実質的には死刑の方がマシじゃない?ってくらい、とてつもなく辛らつなものになった。

かよわい女性を狙うストーカーには、日本でも、このくらいのペナルティを課すようにしても良いのではないだろうか?

すぐにできないにしても、日本のマスコミ関係者の方々は、「ファンとアイドルの距離が近すぎる」とか的外れな内容を報じてるんじゃなくて、

もっと本気で女性をストーカー被害から守るために役立ったり、参考になりそうな情報を取り上げてくれたらいいのにね。

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