上司からこのようなことを言われたことはありますか?

「部下に育ってほしいからあえて私は何もしない」

「上司がいなくても機能する組織こそが理想的な組織だ」

「上司が身を粉にして動かないとやっていけない組織はいざという時に弱い」

言っていることは理解出来るのです。

本屋に並んでいるマネジメントの本のタイトルにもこのようなことを謳っているものが目立ち、ネット上でもこのようなマネジメントを良しとする考えが多く見受けられます。

確かに、上司が日常業務で手が一杯になっている余裕のない組織で、いざトラブルがあると、ただでさえ余裕のない職場が絶望的なまでに機能しなくなることが考えられますが・・・

現実的な問題を無視して、理想をかざすだけでは、大きなしっぺ返しがあることを知った出来事があります。

動かないを理想とする上司の下で働いた経験談

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記事提供 がんばれ熊さん

私が勤める食品スーパーでは店長の異動が頻繁にあります。そして、「責任者はいざという時以外は動かない」を理想とする店長の下で働いたことがあります。

確かに店長が売り場の日常業務から外れ、マネジメント業務に専念出来るのは理想なのですが、うちは町の小さなスーパーです。イオンモールのような巨大なショッピングセンターとは違うのです。

残念ながら店長をフリーにさせるほど人件費に余裕はないのです。

私たち一般社員も、店全体のことを考えると、店長に多くの仕事を抱えこんでもらわずに余裕をもってもらいたく努力をしているのですが、あまりにも使える人件費が少ないのです。

そのため歴代の店長は本部から要求される人件費の数字をオーバーしないように自ら身を粉にして動いていたのです。

あまりしてほしくなかった事ですが、休みの日にレジを半日だけして帰る店長もいました。そうすることで大幅に人件費を節約出来るのです。

正直いって、「店長が動き回らなくても店が機能する状態にしたいのに、現実的な人件費の問題で出来ない」ということに残念な気持ちでいてました。そんな、「店長にはあまり動いてもらいたくない」と思っている中で・・・

本当に動かない店長が来たのです。

今まで、一緒にやってきた店長とは違い、売り場にほとんどいないのです。3時間も4時間も、店長の姿を見ないのです。

何も手伝ってくれない店長の考えとは?

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「部下に育ってほしいから俺は何もしない」

店長の姿を何時間も見かけない理由を店長自身が説明していました。「部下に育ってほしいから俺は何もしない」ということです。一理あると思いました。今まで一緒にやってきた歴代の店長は誰よりも多く動き回るタイプだったのです。

店長も責任者でありながら少ない人件費の中での日常業務をこなす頭数になっていたのです。つまり、店長が動き回ることが当たり前という意識が従業員の中にあったのです。

このみんなの意識を変えようと店長は何も手伝わないという選択をしたのです。最初から俺に期待をするなというスタンスです。そうすれば・・・

店長が手伝わないのは当たり前という状態にまでみんなが育ってくれる。

と思ったそうです。私も以前から、「店長が動き回らなくても店が機能する状態にしたい」と思っていたので最初は大変かもしれないが我慢をしていればそのうち、店長がいなくても当たり前に機能する強い店になると思い、少ない人数で戦う努力をしていました。しかし・・・

「あの店長、ずっと喫煙所にいますよ」

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従業員から多くの不満が出てきたのです。

「あの店長、喫煙所にずっといますよ」

「事務所でスマホばかりしてますよ」

「本当に何をしているのか謎ですね」

この不満を聞いて知りました。店長は、店のことを考えた上で動かないのではなく、戦う姿勢が欠けているから動かないのです。仕事よりもスマホに夢中になっているのでした。

そのため売り場がガタガタになったのです。しかも、レジに長蛇の列が出来ても気にせずにスマホの世界に店長は旅立っているのでした。

腹が立ちました。こっちは必死に体が千切れるような思いをしているのに戦う姿勢が見えないのです。

私たちが売り場で戦ってる間、店長としてのマネジメント業務で戦っているのならまだ分かるのですが・・・

スマホの画面と戦っていたのです。

戦う相手を間違っているのです。だから、みんなのやる気にも影響が出てきたのです。



一応、店長はたまに売り場を見に来て、

「ここが出来てない」

「あれが出来てない」

と言ってくるのですが、歴代の店長と違い、多くのことを見落としているのです。

私の目から見て、出来ていない事だらけなのです。手が回ってないから、本当に重要なところしか出来てないのです。

売り場に常にいてると、気づくことですがスマホの世界の住人には気づかないことなのです。気づかないから当然、指摘も出来ないのです。

さらに困ったことに手が回ってないのに何も手伝わないという従業員からの不満は・・・

諦めに変わっていったのです。

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「ある意味楽できるね」

同僚の女性社員は言いました。確かにその通りだと思いました。

「店長はどうせ見に来ない」

「見に来ても、見るところは限られている」

そんな意識で、売上が上がるわけがありません。売上がどんどん落ちてきました。店長はそれでも、本部には、「ライバル店が近くにできたからと売上が落ちた」と説明をしていました。

しかし、その説明では納得できないほど売上が落ちたのです。私の予想通り、店長は異動させられることになりました。

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「これからって時に分かってないよな」

店長は本部からの異動の指示に不満を言っていました。ライバル店が出来たら売上が落ちるのは当然だという考えです。

さらに、本気でそう思っているのか不思議なほど自分のマネジメントに自信をもっていました。

「本部は1カ月、2カ月の短期的な売上しかみていない」
「これから、長期的な視点で店を良くしていこうと言う時に異動っておかしいよな」

と言う店長に、どこからその自信がくるのか不思議な気持ちになりました。しかし、私は余計なことは言いませんでした。その代わりに社交辞令で、残念そうな表情を見せてあげたのでした。

理想をかざす前に考えるべきは従業員の不満です。

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上司がいなくても機能する組織を理想とする気持ちは理解出来るのですが・・・

私が訴えたいのは現実的な問題なのです。その問題とは従業員からの反発なのです。今まで手伝ってくれていた上司が急に手伝ってくれなくなった時に従業員に大きな負担がかかってくるのです。

ここを無視して理想だけをかざし、「自分が手伝わないことで部下が育つ」という気持ちだけでいると部下を育てるというよりも・・・

従業員の不平不満だけを育てる結果となるのでしょう。

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spotlight公式プラチナライター。食品スーパーの店員ならではの記事を楽しんでいただければと思います。

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