記事提供:日刊サイゾー

番組初回から50年もの間、『笑点』(日本テレビ系)に出演し続けた桂歌丸が、司会から勇退した。

5月22日の放送の「歌丸ラスト大喜利スペシャル」では、歌丸司会最後の大喜利や、新司会者発表ということもあり、大きな注目を浴びた。TOKIOと『笑点』軍団の対決あり、再現ドラマを交えた『笑点』の“ウラ事件簿”ありと、盛りだくさん。

演芸コーナーではナイツが登場し、いつもの“ヤホー漫才”を「桂歌丸」をテーマにやっているところに、なんと本人が登場。「ナイツ」をテーマに、“ヤホー”ならぬ“アホー漫才”を披露したりもした。

だが、そんな見どころの多い各コーナーをしのぎ、その真骨頂を見せつけたのは、やはり番組後半に行われた生大喜利である。

3問行われた大喜利のお題はすべて“粋”。たとえば、2問目はこうだ。

「アタクシは今日で笑点の司会からお別れをするわけですが、『笑点』に涙というのは似合わないと思うんですよね。そこで皆さんね、豪快に笑いながらひと言。アタクシがね、『どうしたの?』と伺いますので、返事を返していただきたい」

『笑点』に涙は似合わない。まさにその通りだ。

それに対する答えも粋だ。たとえば、歌丸と長年にわたって番組で舌戦を繰り広げてきた三遊亭円楽。

「アーハハハ、ワッハハハ」

「どうしたの?」

「笑ってないと涙が出ちゃうんです」

そんな答えに、歌丸は座布団を。

「山田くん、そーっと1枚やってください」

2人の関係性を日本中の人が知っているからこそ胸に響く、この一連の流れの美しさ。50年続く『笑点』は、もはや日本人の日常生活の一部になっている。そこに出る落語家や演芸を見るというよりも、その番組パッケージそのものを見ている。

たとえば、先日放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)に三遊亭好楽が出演した。「街で『ファンなんです』と声かけてくるファンに限って、たいしたファンじゃない説」を検証するためだ。

好楽が実際に街頭に立つと、すぐに多くの人たちが声をかけてくる。しかし、声をかけてくる人のほとんどが、好楽の名前を知らない。『笑点』の番組自体のファンだというのだ。

実際、好楽の名前を知らなくても、席の並び順はわかる。そんな番組、なかなかない。
大喜利のお題や答えで、政治的な時事をイジることも少なくない。

“普通”に見えて、実は“攻めている”。そもそも日曜の夕方にただひたすら大喜利をしていること自体、冷静に考えるとアナーキーだ。

「笑芸人」vol.2(白夜書房)の歌丸インタビューによると、ある時などは、番組スポンサーになりたいという企業がいたにもかかわらず、出演者たちの一存で断ったこともあるという。

落語界のこともよく知らないくせに、やたら口を出してくるというのが理由だったそうだが、それにしたって、スポンサーを出演者たち自身の判断で降ろしてしまうのだからスゴい。

ポピュラーの象徴として日本人の心に深く溶け込んでいるのに、アナーキーで反骨。それこそを、人は“粋”と呼ぶのかもしれない。

歌丸は、先ほどの『笑点』と同じ日の『NHKスペシャル』(NHK総合)の「人生の終(しま)い方」にも出演。進行役を務めつつ、密着取材にも応じている。

腸閉塞で入退院を繰り返し、肺にも病気を抱えている。舞台を降りると、すぐに車いすに乗る。体重も、この1年だけで10キロ減ったという。

それでも、高座に立ち続けている。

「アタクシも人生を終うのは、まだまだ80年ぐらい先ですけれども、まぁ、そのときになって慌ててもいけませんですから、いまから真剣に考え始めているんです」とほほ笑みを浮かべ語る姿には、落語家の矜持があふれ出ている。

歌丸は終わらない。

注目された『笑点』新司会者もCMをまたいだり、必要以上に煽ったりせず、あっさりと発表された。

新司会者は春風亭昇太。発表されるとすかさず、後任に本命視されていた円楽から「いくら使ったんだ?」というツッコミが入った。

その人選は意外性があると同時に、納得感もある見事なものだった。実年齢以上に世代交代を大きく印象付け、これから先、何十年も『笑点』は続いていくんだという強い意志を感じる人事だ。

「ここは?」

と、昇太の席を指して新メンバーは誰になるのかを円楽が問いかけると、歌丸は不敵に笑って答えた。

「あ、そこねえ、アタシが座る(笑)」

歌丸のどこまでも“粋”な終い方だった。

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