記事提供:conobie

子どもを取り巻く環境は日々刻々と変化します。ご家族にあった変化を言葉にするとき、大事なことであるほど、感情的な表現が飛び交うかもしれません。人間としてそれは自然なこと。でも、もしその場所に小さな赤ちゃんや子どもがいたら。

ふと立ち止まって、考えてみませんか。

家族が、いわゆるよくある「家族」のかたちを保つことは、簡単なことではありません。

日々みんなが努力して夫婦や親子、いろいろな関係を守っているわけですが、それががんばりきれなくなることも、ときにはあると思います。

だからこそ診察室では、ご家族の様子に気を配ります。

お母さん元気ないな、いつも一緒についてくるおじいちゃん最近来ないな、とか。

そんな様子に気がついて声をかけてみると、ご家族が抱えていらっしゃるものをお話ししてくださる場面がしばしばあります。

きょうの診察室:「この子にはまだ分かんないから」

ある赤ちゃんの4ヵ月健診でのこと。

その子のお母さんは、いくつかの精神疾患をかかえていらっしゃり、入院したり、お薬を飲んだりするなかで、3人目の子どもとして、この赤ちゃんを産みました。

お母さんは、ご自身の病気のコントロールが難しく、記憶がなくなったり、子どもの受診を忘れてしまったり、気がつくと自分を傷つけたりしてしまいます。

その日の外来でも、「先生、なんか気がついたら切っちゃったみたいで」と、新しいリストカットの傷を見せてくれました。

私は直接お母さんの主治医ではないのですが、サポーターの一人として話を伺うと、最近調子が悪いことの心当たりとして、ご主人との間がうまくいかず、言葉の暴力がきつくなってきてつらい、とお話してくれました。

お母さんが話すあいだ、赤ちゃんはお母さん膝の上に抱かれ、きょうだいは診察室で遊んでいたのですが、そこまで聞いて私は、お子さんにはより適切な言葉で家族の状態を伝えたほうがいいと感じ、看護師さんに、

「ちょっと診察室の外でお子さんたちと遊んでいてもらえますか?」と声をかけ、お母さんだけに話を聞くことを提案しました。

するとお母さんは、「あ、いいよ先生、この子たちにはまだ分かんないから」と言ったのです。

子どもたちは“分かっている”

子どもたちは本当に分かっていないのでしょうか?

夫婦のケンカの話、離婚のこと、親とのいさかい…。

子どもに隠さなくてはいけない、ということではありません。

もちろん渦中にいると、子どもへの伝え方どころではない、ということもきっとあると思います。

でも、私が多くの子どもに接していて思うのは、子どもはとてもよく分かっているということ。

詳しい内容は別にしても、家族のつらい語り口や普段と違う表情を、子どもたちはとても鋭敏に感じ取ります。

実際、夫婦間の言葉の暴力を聞いている子どもの脳機能への影響は、身体の暴力を目撃することの影響よりも大きい、という研究もあるのです。

どの年齢にあっても、子どもたちは「聞く」権利と「聞かない」権利をもっています。

また、その子にとって大事なことを聞くときには、「その発達段階に合わせた言葉や方法で守られた環境」で、聞く権利があります。

だからこそポジティブな内容も、ネガティブな内容も、大人が気をつけて子どもに届けたいと思うのです。

みなさんの周りの大人の会話は、どうでしょうか。

もしかしたら、同じようなことが起きているかもしれません。

そんなときにはそっと、子どもたちを幸せな言葉で包むお手伝いをしていただけたら、とても嬉しいです。

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