最愛の我が子が思わぬ病気になってしまったら、母としてできることはめいいっぱいの愛情を注いで抱きしめてあげることではないでしょうか。ところが、それさえもできなかった一人の女性が、乗り越えなければならなかった苦悩の日々を英メディアに語りました。

ウエストサセックス州在住のナターシャ・ペニーさん(33歳)が1歳9か月の息子セバスチャンの血尿に気付いたのは、ちょうどお風呂に入れている時でした。慌ててパートナーのルークさんと息子セブ君を緊急外来へ。

すると医師は「感染症か何かでしょう」と診断。抗生剤を処方されて帰されたのです。イギリスにはよくあることとはいえ、セブ君の場合も、この誤診が後から思わぬ悲劇へと変わってしまったのです。

去年の10月に膀胱がんと診断

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何度となくセブ君の具合が悪くなるたびにGP(クリニック)に連れて行ったナターシャさん。それでも「感染症」の域から脱した検査をしてもらうことはできませんでした。そして不安な気持ちを抱えながらのホリデー先のスペインで、セブ君の具合は悪化。急きょイギリスに戻り、そこで初めて「膀胱がん」と診断されたのです。

血尿が発見の糸口になります。膀胱の表面は、移行上皮という粘膜で覆われています。膀胱がんは、この移行上皮ががん化するものです。

膀胱がんの主な初期症状としては、無症候性血尿があげられます。また、下腹部の違和感が現れる場合もあります。下腹部の違和感は膀胱炎でもみられる症状ですが、膀胱がんの場合、抗生物質を服用しても治りにくいのが特徴です。

出典 http://ganjoho.net

膀胱がんは、男女の比率でいうと男性のほうが女性の3倍も多く、50歳以上が90%を占めると言われています。イギリスでも毎年、小児膀胱がんは数例しかなく極めて稀なために、セブ君の場合もなかなか気付かれなかったということもあるのでしょう。

1歳9か月の小さな体に6センチ弱のがんが見つかった

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「もっと早くに気付いていたら…」きっと病気の子供を持つ全ての親が思うように、ナターシャさんも誤診続きのGPを詰る思いだったことでしょう。小さな体に見つかった6センチ弱のがん細胞は転移こそしていなかったものの、セブ君はギリギリのところで命の危機に迫られていたのです。

手術と輸血と抗がん剤治療により命を救われたセブ君。でもその間は決してスムーズにはいきませんでした。無痛薬が漏れていたためにセブ君は痛みで悶え苦しまなければなりませんでした。

ナターシャさんは「息子はあとどれほどの苦しみに耐えなければいけないのだろう。目の前で痛みで泣く子供に何もしてやれない自分が辛かった。誰かなんとかして!と叫びたかった」と語りました。「5時間の手術は今までの人生で、最も長く感じた時間でした。」

そしてセブ君はイギリスで最初となる「小線源治療」を受けることに。

放射線を出す小さな線源(カプセル)を前立腺内に挿入して埋め込み、前立腺の内部から放射線を照射する治療法です。線源にはヨウ素125という放射性同位元素が密封されています。

出典 http://www.nmp.co.jp

「高度な技術であの子の命が救われたといっても過言ではありません。もし10年前に同じことが起こっていたら、息子は助からなかったかも知れませんから。」

何度も抱きしめてやりたい気持ちをこらえた…

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この治療の間はセブ君を動かすことができなかったために、ナターシャさんは抱きしめてやりたい気持ちを必死で抑えてセブ君のベットの横で共にがんと闘い続けました。その間、セブ君は治療を受け入れる姿勢を見せ文句一つ言わなかったそう。

「この治療をすれば、あなたはきっと良くなる。」そう息子に言い聞かせたナターシャさん。病気の子供を持つ親なら絶対に諦めたくないという気持ち。子供への献身的な愛は誰よりも強く、その思いはセブ君へも伝わりました。

どうやって乗り越えたのか今ではもう思い出せないほど

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2歳にもなっていない小さな子供が痛みをこらえて治療をすることを。優れた技術であっても愛する我が子の小さな性器に施す小線源治療は、やはり子供には辛いことでしょう。そして直接我が子になす術もなく見ていなければいけない親の辛さも想像を絶するものがあります。

セブ君の血尿が出てから、手術、治療を終えるまでの間はまだ1年も経っていません。それでもナターシャさんとルークさんにとれば恐ろしく長い地獄の日々だったことと想像します。治療が無事に終わってやっとセブ君を抱きしめることができた時、ナターシャさんは言い様のない安堵を感じたに違いありません。

「がんに負けない」

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膀胱がんは日本でもイギリスでも毎年1万人ほどの発症率といわれています。イギリスでは毎年5,6人ほどの子供が小児膀胱がんと診断され、大人も含めるとイギリス国内で7番目に多いがんなのだとか。

子供には珍しくても、決して稀というわけではない膀胱がん。どのがんも早期発見が命を救うカギになるために、やはりイギリスのGPも度重なる誤診は改めなければいけないのではないかと思う気持ちは否めません。

今回、相当な苦難の日々を乗り越え、「がんに、私たちの人生を奪われてたまるかという思いだった」というナターシャさん。見守る親も頑張る子供も「生きたい」という強さががんに打ち勝ったのでしょう。

専門家によると、特に子供の膀胱がんは本人が気付くにくいことが多いために普段から親が血尿などが出ていないかチェックすることが大切だとか。無事に治療を終えたセブ君も、今後元気に成長してくれるといいですね。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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