【1】ブラック企業対策に、ついに国が動いた

日々流れるニュースの中で、過労死やうつ病の話を聞く事は多いです。とても悲しい事です。その原因として、「過酷な労働環境」の存在があります。

仕事内容や待遇が常識の遥か斜め上を行き、法律なんか完全無視。「人間の働く場所では無い!」と断言できる状況もあります。いわゆる「ブラック企業問題」です。これは、許されざる問題です。

この問題を受けて、2015年5月に、厚生労働省から全国の労働局に対して、次の様な通達が出ました。

労働基準法に違反した企業は、名前を公表する」

「今までの公表基準を変更し、ハードルを下げる。以って、違反企業の実名を出し易くする。」

この通達から一年が経過し、遂にブラック企業の実名が、「国の機関」によって認定・公表される事になりました。
しかし、その内容は、かなり期待外れだと言わざるを得ないものでした。

今回名前が公表された会社は、千葉市にある棚卸し代行業「エイジス」です。かなり長時間の残業をさせていたそうです。

従業員数は16年3月末時点で252人。営業拠点が全国に50か所あり、15年度の売り上げは179億円。16年5月以降、営業拠点4か所の63人の従業員に月100時間を超える時間外労働や休日労働をさせていた。うち15人は月に197時間もの時間外・休日労働があった。

出典 http://www.j-cast.com

ちなみに、「棚卸(たなおろし)」とは、「在庫数の確認作業」の事です。
企業は、パソコンや帳面で在庫品の情報管理をしていますが、本当にデータと実物が合っているかは見てみないと分かりません。そこで、定期的(半年に1回とか)に、データと実物を目で見て比較・確認します。
こう書くと簡単ですが、実際にやってみると大変です。時間も人手もかかります。

なお、当の「棚卸し代行会社・エイジス」は、2016/5/19の自社HPトピックスで、社長の名前が入った謝罪文を出しています。
再発防止に取り組むとの事ですが、これまでに違法残業させた従業員に対して何をしたか?…等の話は、謝罪文からは読み取れませんでした。

ともかく、社名公表は「エイジスのみ。たった1社だけ」でした。驚きです。そんなに少ないわけがありません。
ネットでは多くの企業名が挙がっていますし、民間では「ブラック企業大賞」なるものが毎年選考されています。
そんな中で、国が発表した会社はたったひとつ。なぜこんな事になるのでしょうか?

【2】定義が難しい & 条件が厳しい

なぜ1社だけか?というと、まず「ブラック企業の定義が難しい」という事が挙げられるでしょう。厚労省HPでは、以下の文章が掲載されています。

厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。

出典 http://www.check-roudou.mhlw.go.jp

そもそも、はっきりとした定義が省内で成立していない模様です。この状態では、世間一般で言われるところの「ブラック企業」を広くカバーできる体制では無さそうです。

とは言っても、労働基準法などの「法律違反」を大義にして動く事はできます。ただ、法律はいい加減に運用されるものではなく、厳格に扱われるものです。運用するスタッフも多数必要ですし、時間もかかります。そう簡単にはいきません。

しかし、厚労省も頑張っている様子です。立ち入り検査なども行っていますし、今後の動きに期待したいところです。

一方、日々のニュースでは、まだまだブラック企業問題は多く流れています。撲滅には時間がかかるでしょう。

また、ブラック企業の体質も変わってきています。「こんな所がブラック?」という意外な話もありますし、「まさかここまでやるとは…」と驚く事もあります。次の節からは、筆者が読んで驚いた事例を2つ紹介します。

今後の厚労省の活動で、こういったブラック企業の数が減る事を期待します。

【3】ブラック事例 その1 逆切れ裁判

「京都市内のシステム開発会社」に関する裁判のニュースです。この会社は、従業員を酷使して残業代を払っていませんでした。そんな中、従業員の一人が退職を申し出ると、会社は「退職するなら、損害賠償を請求する」と凄みました。脅しの訴訟をチラつかせたのです。
その後、そのシステム開発会社は、本当に損害賠償を求める訴訟を起こしてしまいます。自分は残業代すら払っていないのに、逆切れもいいところです。

裁判の結果は、「システム会社の完全敗北」。会社の請求はすべて棄却され、なおかつ未払い残業代1136万円を、従業員に支払うよう命じる判決が出ました。

この結果に対してコメントを求めたところ、担当者が出張中で、なぜか連絡が取れない」との返事が…。

【4】ブラック事例 その2 仏を語ってよいのだろうか?

こちらも京都の話。世界遺産にも登録され、国宝や重要文化財も多数存在し、古典にも名前が出てくる真言宗の有名な寺院「仁和寺(にんなじ)」に関する話です。つい最近のニュースです。

この仁和寺の宿坊(しゅくぼう)に勤務する板前さんが、過重労働で抑うつ状態になり、裁判になったとの事です。
(ちなみに「宿坊」とは、僧侶や参拝者の為の宿泊施設の事です。いわゆる「旅館」「ホテル」なので、料理を提供する事もあります。)

訴え出た板前さんは、料理長として宿坊に勤務していましたが、月100時間以上の時間外労働は当たり前、酷い時は月200時間の時間外勤務、もっと酷いと349日の連勤…となっていたそうです。
月200時間の残業となると、ひと月当たり25日勤務でも「1日8時間の残業」となります。これは酷いです。

裁判の結果は、仁和寺の敗訴。約4300万円の支払いを命じられました。
仁和寺側は、高等裁判所に控訴するか検討中…とのコメントを出していました。続報が見られないので、その後どうなったかは分かりません。

確かなのは、「仁和寺の評判が悪くなった」という事でしょうか。仏を語るのが適当なものかどうか、疑問に思えます。

【5】まとめ

今回の厚労省発表は「たった1社だけ」という結果になりました。これでは不十分との声が、専門家の間からも一般の人からも出ています。

確かに、1社だけとは…良くない意味で「予想外」の結果だと感じます。しかし、公表は始まったばかり。今後の展開に期待したいところです。

ブラック企業問題は、社会を蝕みます。軽い問題ではありません。厚労省だけに任せているのではなく、我々一般人も情報収集に励み、それぞれのブラック企業対策を考える必要があるでしょう。

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