記事提供:conobie

“思いやりの心を持ちましょう”“相手の立場になり優しく接しましょう”子どもたちに接する職業の人が、このような美辞麗句を自分の生徒に言うことがあります。

でも、実際に自分自身が“相手の立場になること”ができていない先生に出会ったことがあります。

たとえ丁寧な言葉遣いをしていても、そこに“言われた側の気持ちになって考える”“相手の立場に立って考える”の気持ちが入っていないと相手を深く傷つけてしまうことがあります。

私もそんな経験を何度かしたことがあります。

自閉症の息子をどこも受け入れてくれなかった

自閉症の息子が小学校1年生の時の話です。

喘息発作が激しい息子に何とか体力をつけてほしいと、水泳教室の体験授業に連れ回していました。落ち着きがなく常にウロウロしている多動な子どもでしたので、行ったすべての水泳教室で玉砕。どこも入会を受け入れてはくれませんでした。

特に、そのこと自体をどうこうは思っていません。

スクール側の人間、企業側に立てば、その他大勢の生徒さんを預かっているわけですから、皆に迷惑がかかる大変な子どもに入会許可を出すことはできないのでしょう。

でも、同じ断るのにも実に様々な言い方をされました。その中でも、「その言い方は、心無いのでは」と思ったことがありました。

あなただったら、どの断り方を受け入れられますか?

以下は実際、私が言われた断り文句です。

①▼▼▼水泳教室

「せっかくお越し下さったのに申し訳ございません。障害のあるお子さんは対象外ですから、入会をお受けすることはできかねます」

②■■■水泳スクール

「他のお子さんに迷惑がかかってしまいます。誠に申し訳ございませんがお引き取りください」

①②はとっても丁寧な言い方です。

でも、私は「結局、うちの子はみんなと一緒にできる子ではないから、来てもらっては困るということでしょ」と思いました。

でも、一番、心をえぐり取られたきつい言葉は…こんな風に言われました。

●●●●スイミングスクール

「お母さま、あなた、一体何を考えているんですか。こんな程度の低い子、うちで水泳を習えるわけがないでしょう。入会はお断りします!」

大会に出す選手養成でも有名なところでしたので、そもそも、足を運んでしまった自分がいけなかったかもしれません。

でも、このスイミングスクールの体験を受ける前、どうしても入会させたかった私は息子に何度も「コーチの言うことを聞いてじっとしているのよ。動いたり走ったり暴れては絶対にだめよ」と言い聞かせていました。

上の保護者観覧席から見学していましたが、息子はその言葉をきちんと守り、普段はすごく動く子どもでしたがそれなりに体験の場では頑張っていた様子がよく分かりました。

でも、他のお友だち(健常児)のように長くはじっとはしていられず、何分か経過してからじっと順番を待っていることができずにモゾモゾ、ゴゾゴソし身体を動かし始めました。

すると、突然、コーチは息子の腕を鷲掴みにして、私のいる保護者席まで連れてきました。

「ああ、もうだめだ」と私は悟りました。でも、息子は自分の身に何が起こったのか状況が分からず、プールから上がってきてキョトンとしていました。

私は濡れた息子を抱き締め「よく、頑張っていたね。えらかったね。もう帰ろうね。帰りにお菓子買ってお家で食べようね」と言いました。

でも、コーチは息子がいる目の前で「こんな程度の低い子、うちで水泳を習えるわけがないでしょう」と言い放ったのです。

息子はもう来年、高校生になります。

この15年間で、バスの中で見知らぬおじさんに、息子と一緒にいる私が罵倒されることなどしょっちゅうありました。

でも、今までで一番きつかったのはこのプールでの体験授業での出来事でした。

その中で、救われた言葉も

それでも水泳教室に通ってほしかった私は、ある教室に行きました。そして、こちらではこのように断られました。

◆◆◆スイミングスクール

「お子さんは障害があるのですね。それではじっとプールサイドで座っていることは難しいかもしれませんね。

こちらのスクールでは障碍児専門のコーチがおらずスタッフの数が限られています。また、水は命に関わるスポーツです。生徒10人対コーチ1人なので立石さんのお子さんに何かあったり溺れてしまったら大変です。

お子さんのために、入会をお受けしたいのはやまやまなのですが、こんな状況ですのでご希望をお受けすることができないのです」

他の水泳教室と同じく、断わり文句には変わりはないのですが、丁寧な言葉を使っているだけではありません。

「プール側に迷惑がかかる」と企業サイドの理屈ではなく、保護者の気持ちに配慮して「お子さんのためにこちらには入会しないのが賢明だ」と伝えてくれているのです。

この経験から、ママたち、子どもたちとの接し方が変わった

私はかつて塾を経営していました。メインは健常者を対象にしている塾でした。そこに障害があるなし、家庭でのしつけがされているか否かに関わらず、様々な生徒が入会を希望してきました。

生徒15人対先生1人の定員でした。頂く授業料は決まっていますから、一人手のかかる子が来たからと先生の数を増やすことは経営上できません。

結果、一人に時間をかけて対応した場合、他の子どもたちを放っておくことになり、苦情を受けることにもなるからです。

そのため、走り回って奇声を発して授業妨害をする生徒の入会をお断りすることも多々ありました。

そんな時、私は決して「他のお子さんにご迷惑をかけることになるので、入会をお断りいたします」とは言いませんでした。プールでの苦い経験があるからです。

あくまでも相手のスタンスに立ちながら「今、お子さんは一時間、椅子に座ってお勉強できる段階ではないように感じます。

教室に来たら椅子に座ることを強要され、お子さん自身がつらい思いをすることになります。もう少し、時期をずらしてからご検討されてはいかがでしょうか」と、お伝えしていました。

これは、断っていることには変わりないのですが、「あなたのお子さんはダメな迷惑をかける存在」とは、伝えたくないのです。大事な子どもを他人が全面否定するなどあってはいけないのです。

そんな経験を生かして、自分もこれから子どもたちとそのママたちに接していこうと思っています。

上っ面の言葉では、伝わらない

あれから10年経ち、今では当時よりも私は母として強くはなりましたが、この文章を書いているだけで、当時の場面がフラッシュバックし心が締めつけられ、涙が出きます。

そのスイミングスクールは家の近所で前を通ることも多いのですが、毎回、前を通るたびに、何とも言えない不愉快な感情が今でも湧き起こってきます。なかなか、立ち直ることができない私です。

上っ面の「思いやり」「優しい心」を言葉で伝えるだけでなく、子どもに何かを教える教師の仕事に就く人は、ぜひ態度で示してほしいなと思った出来事でした。

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