少し前のお話です。

2年前の母の日の前日、アメリカ・アーカンソー州に住む83歳になるメルヴィン・アムラインさんが、妻のドリスさんと2人暮らしの自宅から姿を消しました。メルヴィンさんは3年前にアルツハイマー型認知症と診断され、少しずつ記憶を失いつつありました。

大恋愛ののちに結婚した2人

出典 http://www.cbsnews.com

結婚60周年を迎えるメルヴィンさんとドリスさんは、今でも相思相愛の仲。薄れつつある記憶を手繰り寄せるために2人でよく話し込みますが、どちらが先に申し込んだかで可愛い言い合いをして笑いあうほど仲良しの夫婦です。

それでも認知症という診断が下ってからのドリスさんの思いは、決して楽なものではありませんでした。長い人生を一緒に歩んできた夫がだんだんに2人の大切な思い出を無くしていってしまうのです。それは心にぽっかりと大きな穴があいてしまったような、どうしようもない気持ちだったに違いありません。

ところがその日、メルヴィンさんは自宅から忽然と姿を消してしまいました。

普段は家のまわりを散歩するのでさえ介添えが必要なメルヴィンさんが、一人で外出するはずはありません。
でも、もしかしたら…

ドリスさんは警察へ捜索願いを出しました。メルヴィンさんがいなくなってから40分ほどが経過していました。

アメリカでも認知症による徘徊のために行方不明になるお年寄りは後を絶たず、警察署ではこういった捜索願いを受けることは珍しくないそうです。

ところがグリグスビー巡査部長とディラード巡査がメルヴィンさんを発見した時、通常の徘徊者の保護の時とは様子が違っていることに気がつきました。

メルヴィンさんは当て所もなくさまよい出たのではなく、確固たる目的があって外出していたのです。

「理由を聞いた時、お手伝いしなければと思いました」

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メルヴィンさんは最初の子どもが生まれて以来、毎年必ず母の日にはドリスさんに花束を贈っていました。それで明日が母の日だと気付いた時に、買い物に出かけていたのです。

自分の住所も言えず、どの方角から来たかも分からないメルヴィンさんでしたが、どうしても花を買わずには帰れないと言ったのだそうです。

それで2人はメルヴィンさんを発見したこと、安全に連れ帰ることを署に連絡した後、途中でスーパーに立ち寄りました。アメリカの大型スーパーには生花店が入っていて花束を売っていますし、アレンジメントを注文も出来ます。

店の監視カメラにはメルヴィンさんを介助する2人の制服警官がシッカリと映っており、レジで支払いをするのに手持ちが少し足りないのを見て、その分を背後からコッソリと渡す気遣いも。

そして心配して待っているドリスさんの元へ、急行したのでした。

無事に帰ってきたメルヴィンさんを見て、ドリスさんは…

出典 http://www.cbsnews.com

メルヴィンさんの満面の笑顔を見た時、ドリスさんは、昔のメルヴィンさんが戻ってきたのを感じたそうです。身体の中で何かが崩れるような気がして、ありがとう、ありがとうとしか思えませんでした。


「私には彼の心が見えたからなんです。
 記憶からは無くなっていても、
 心が覚えていることがあります。
 それはもう、本能のようなものなんです」

束の間のことだったかもしれませんが、こうしてメルヴィンさんと彼の愛情が、ドリスさんの元へまた戻ってきたのでした。

今度の日曜日の母の日にちなんで、ちょっぴり心温まるお話をお届けさせていただきました。

Source: CBS Evening News

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