妊娠中に最もよく見られる心の病が「鬱病」です。100人の妊婦さんのうち10~15人が患ってしまうといわれています。特に初めての出産を迎える場合はお腹の子供に問題はないかという心配や自分は良い親になれるかという不安も大きく、また周りのサポートに満足を感じなかったり孤独になったりしがちです。

でも、出産という大きな仕事に向けてそういう心配や不安は自然の感情といってもいいでしょう。ただ、妊娠中はホルモンのバランスも大きく変わるため、その感情に上手く対応できないことが出てくるのです。それが一般的に「妊娠うつ」と呼ばれる症状です。

筆者は妊娠中は大丈夫でしたが、産後うつになりました。治るまでに数年かかってしまいました。妊娠うつも産後うつと同じぐらいの割合で起こると言われています。

我が子が自分のお腹の中で育っているという嬉しい気持ちの反面、妊娠中は体の変化についていけない自分もいたりして、ホルモンの影響で「便秘」「妊娠線」「重度のつわり」など様々な症状が出た場合には気分が落ち込みうつになりやすいのでしょう。

妊娠中の鬱の症状

イライラする
気持ちがいつも落ち込んでいる
いつも楽しかったことがが楽しくなく感じる
眠れない
いつも疲れている
涙もろい、わけもなく涙がでてくる
食欲がない  

などです。

妊娠するとエストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンの分泌が増え、それによりホルモンバランスが崩れてしまいます。

プロゲステロンのマイナス面でもある、イライラや感情の起伏の激しさなどが影響し、自律神経も乱れてしまい鬱の症状が出てしまうのです。

出典 http://mamari.jp

元々繊細で神経質なタイプや几帳面なタイプは妊娠うつになりやすいそう。過去にうつを患った人が一度治っても妊娠中にうつになるというケースは多く、特に薬の服用を止めた場合、妊娠中に再発する可能性は70%ともいわれています。

辛い時に「辛い」といえることがヘルプになる

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妊娠時にうつを患い一人で抱え込んでしまうと、赤ちゃんにもママのストレスが伝わりよくありません。うつ病のせいで中絶したり、自信喪失した妊婦が自殺を図るということも実は少なくないのです。

もちろん、医師に相談し食生活の改善や十分な睡眠、適度な運動などなるべく自律神経やホルモンのバランスをとって上手く体調管理することが一番望ましいのですが、一番大切なのは辛い時に「辛い」と言えること。周りの人にヘルプをお願いして、少しでも赤ちゃんへの負担を軽くしてあげることを心がけるようにしたいもの。

8年間不妊治療をして念願の双子を授かったのに…

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イギリス、北ヨークシャー州在住のマリー・カーさん(51歳)は、2014年に8年間の不妊治療の末、双子の女児を妊娠。ところが嬉しくて幸せいっぱいなはずのマリーさんは、重度の妊娠うつを患い中絶まで考えるように。

「赤ちゃんはいらない。養子に出したい」

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妊娠して間もなく急にうつの波に襲われたマリーさん。お腹の中の胎児が双子だとわかっても「とんでもない間違いを犯してしまった」「不妊治療で宿った命は私のものじゃない。こんな子供要らない。私には関係ない。生まれたら養子に出したい」とまで思うように。

マリーさんには以前のパートナーとの間に成人した子供がいます。そして双子の赤ちゃんの父親でもあるベンさん(65歳)との間に11歳になる子供もいます。一人目を産んですぐに「二人目が欲しい」と思ったもののなかなか妊娠できず、二人は不妊治療に踏み切ったのです。

8年の不妊治療の間に3回の流産…

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子供がほしいと熱望している女性にとって流産ほど辛い経験はないでしょう。マリーさんは3回もの流産を経験しました。でも、流産すればするほどどうしても二人目を産むことを諦めたくないと思うように。

当時49歳だったマリーさんは、高齢出産希望ということでNHS(国営病院)ではできることが限られていました。そのためプライベート病院で高額な費用を支払い不妊治療に挑んだのです。卵子ドナーにより卵子を提供されたマリーさん。

妊娠の可能性を強めるためにも精子もドナーに頼った方がいいと薦められ、結局、卵子と精子をドナーに提供してもらうことでようやく妊娠することができたのです。

妊娠15週目にうつが襲った

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念願の妊娠。ところが15週目に突然うつ症状が出始めたマリーさん。助産婦に相談すると抗うつ剤の処方を薦められましたが胎児に影響が出るのは困ると思い拒否。胎児のことを思いやる気持ちはあるのに、心はまるで別のことを考えてしまうようにもなったのです。

中絶まで考えてしまうようになってマリーさんの状態を、パートナーのベンさんは理解し難い様子でした。

2014年10月に無事に双子の女児が生まれるも、「何の感情も湧いてこなかった」と語るマリーさん。「出産が終わりホッとした気分にはなったけれどICUに入っている我が子を見ても何も思えなかった」というマリーさんは、女児と退院してからもうつ症状が治まることはありませんでした。

「双子を養子に出したい」とパートナーに言ったマリーさん

出典 http://www.mirror.co.uk

考えがまとまらないまま、母親になり、どうやって今後対応したらいいかもわからなかったマリーさんは、ベンさんに「双子を養子に出したい」と言ってしまいます。

ベンさんが驚愕したのは言うまでもありません。退院してからもベンさんが双子の面倒を見てよくしてくれているのに、マリーさんの心の中には「大きなミスをした」という考えしかなかったと言います。

3か月後、ブレイクスルーが訪れた

出典 http://www.mirror.co.uk

双子が生まれて3か月後、ようやく抗うつ剤を飲むようになったマリーさん。やがて精神的にも落ち着いてくるようになったそう。それと同時に「私がこの子たちのママなんだ」と思えるようになったと言います。去年の11月に抗うつ剤をストップすることにも成功。

現在、マリーさんは「子供たちが可愛くて仕方ないお母さん」に戻りました。マリーさんのうつを治したのは抗うつ剤の力もあるけれど、やはりパートナーのベンさんのサポートが大きいのではないでしょうか。

周りにSOSを発信することは妊婦さんにとって最も大切。「不妊治療という高額な治療をするからこそ、不安に思ったらカウンセリングなどを受けてよく考えてみてほしい。そして妊娠うつになっても、自分を責めるべきではありません。」とマリーさんは語りました。

妊娠うつになってしまったために、双子が生まれた最も素敵な瞬間を見逃してしまったマリーさん。それだけが今は悔やまれるそう。でも今は3人の母親として、双子とより深い絆で結ばれている様子。

誰しも経験する可能性が無きにしも非ずの「妊娠うつ」。自分自身のためだけではなく、赤ちゃんのためにもサポートを依頼すること、決して一人で抱え込まないことを日本の医師も進めています。

出産の後は、もっと大変な育児がやってきます。子供に悪影響を及ぼさないようにするためにも、子供のことを考えて抗うつ剤を飲んだり、誰かに相談したりするようにすればきっと治るはず。

うつになってその時楽しめなかったとしても、子供はママと楽しむ時間をシェアするために、どこかで休憩して必ず待っていてくれます。筆者も産後うつでどうにも辛い時期がありましたが、その分今、息子とより絆が深まったような気がしています。

妊娠中にこころの健康を保つために、自分には何ができますか?

健康でバランスのとれた食生活を心がける。
飲酒量を減らし、できれば飲酒を止める。
それができなければ、週に1度や2度、1-2ユニットの飲酒にとどめる。
タバコを止める。
助産師やかかりつけ医に「禁煙サービス」について相談する。
毎週、あなたが楽しめて、気分がよくなり、リラックスできる時間をつくる。
家族や友人に家事や買い物を手伝ってもらう。
エクササイズをする。
助産師に妊娠中の運動について、地域のマタニティ・エクササイズのクラスについて相談する。
心配なことがあれば、家族や助産師、かかりつけ医に相談する。
規則正しい睡眠を取る。

出典 http://www.rcpsych.ac.uk

今、妊娠しているママさんたちは、妊娠うつの予防として自分で心がけられることにトライして、心地よく妊娠生活を過ごせるといいですね。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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