「ミルクマン」を知っていますか?

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イギリスの伝統的な風習の一つに「ミルクマンのデリバリー」があります。ミルクマンとはその名の通り牛乳を配達する人のこと。その昔は当然冷蔵庫がなかった暮らしだったために、新鮮なミルクが毎朝ミルクマンによって届けられていました。

でも、1950年代に入り一般家庭の冷蔵庫の普及に伴い、ミルクマンの需要が激減。それでも古き良き伝統を守り抜く市民により70年代頃までは、ほとんどの家庭がミルクマンにミルクの配達を依頼していました。

ところが、やはり時代と共にスーパーマーケットが進出しコスト面でもミルクマンの運ぶミルク1本の値段はスーパーの牛乳よりも高く、安さを売り物にするスーパーに太刀打ちできなくなってしまったのです。

1990年代に復活したミルクマン

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90年代に入り、オーガニック食品への関心が市民に広がったために「食品の根本を見直す」という形でミルクマンが復活を遂げたのです。筆者が住んでいたロンドンでも、早朝、ミルクマンが路地を通って新鮮なミルクを配達する姿を目にしていました。

そして現在、ミルクマンの存在が少なくなっているとはいえ、朝暗いうちから白い息を吐きながらミルクを配達しているミルクマンに「おはよう!」と言われるとなんだか清々しい気分になります。

1日飲む分だけを毎日配達してくれる

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家族の人数によって、2本配達する家もあれば1日1本のみを配達する家もあります。ミルクマンのミルクは新鮮さを売りにしているために「朝食のシリアルはこれでなきゃ」という人も中にはいます。

飲み終わったら、玄関先に瓶を置いておけばあくる朝に新しいミルクと交換してくれるのです。そしてその風習を大切にしているイギリス人からすれば、いつになってもミルクマンの存在は残ってほしいもの。

現在、ミルクマンの存在はイギリスで5千人いるかいないかと言われています。絶滅危惧種のような存在になってしまったミルクマン。本来、可愛い瓶に入れられて届いていたミルクも、その瓶を製造している工場が閉鎖となってしまったために、今ではコストの安いプラスチックの容器で運ばれることが多いのだとか。

筆者のエリアのミルクマンは、恐らく小さい個人の牛乳製造者は今でも小さなバンでやって来て昔ながらの瓶で配達しています。「瓶のミルクだからこそ美味しい!」というファンもきっといるのでしょう。

先日、また一人のミルクマンが仕事を終えた

出典 http://www.express.co.uk

イギリス南西部のグロスターシャー州、キングス・スタンリー在住のブライオン・ウィリーさん(70歳)は57年間続けて来たミルクマンの仕事を退職しました。ブライオンさんは13歳の時からミルクマンとして働いてきたそうです。

学生時代のお小遣い稼ぎにと始めたミルクマンのアルバイトが本職となり、その仕事を愛し楽しみながら57年間、1日も休むことなく住民にミルクを配達し続けて来たブライオンさん。

15歳で学校を辞めたがミルクマンの仕事は辞めなかった

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きっとブライオンさんにとって、このミルクマンの仕事は天職だったのでしょう。15歳には地元の農場でフルタイムで働き、ミルクマンとしてもミルクを配達する毎日だったそう。そして、1986年に500人の顧客がいるエリアを任されるようになったのが40歳の時でした。

1962年と1981年に大雪に見舞われたことを今でもはっきりと覚えているというブライオンさん。その大雪の日でさえもミルクを配達しました。ミルクマンの仕事はお豆腐屋さんや新聞配達の仕事と同じく、毎朝3時起き。

体調が優れない日もあったことでしょう。それでも新鮮なミルクを待ってくれている顧客のために、1日も休まずに毎日配達を続けたブライオンさんの勤勉ぶりはもはや表彰されるに値するものではないでしょうか。

4月2日に最後の1本を顧客に配り終え、ブライオンさんの57年という長いミルクマン生活は幕を閉じました。「これまで、たくさんのお客さんと知り合い、友達のようになりました。」57年もの歴史をミルクと共に歩んできたブライオンさんにとって、このミルクマンの存在が、将来消えてしまうことはとっても悲しいことでしょう。

イギリスのミルクマンの歴史は続いてほしい!

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ブライオンさんの妻マリオンさんは2013年に他界。ブライオンさん夫婦には二人の子供がいますが、子供が生まれた日でさえもミルクのデリバリーを欠かさなかったのだから、どれだけブライオンさんが仕事に対して責任感が強いかが伺えますね。

その子供も今では家庭を築き、ブライオンさんは「おじいちゃん」に。退職後はオーストラリアに住む息子にも会いに行きたいし、娘や孫との時間もたくさんできるから楽しみだと嬉しそうに語りました。

57年間、1つの仕事だけをこなすというのはいったいどんな感じでしょう。人の一生分にもなってしまう年月。ミルクマンとしてイギリスの古き良き伝統を大切にしながら楽しんで仕事をしてきたブライオンさん。これからは老後をめいいっぱい楽しんでほしいですね。

そしてイギリスのミルクマンの存在が、このまま消えてしまわないことを祈る筆者。ミルクマンを見かけることはイギリスに住んでいる小さな喜びの一つ。この風習がいつまでも残ってほしいです。

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公式プラチナライター。イギリス在住22年目。いつも読んで下さる皆さんに感謝。Twitterアカウントは@mayonesque18です。よろしくお願いします。

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