記事提供:R25

1974年青森県生まれ。魚戸おさむのアシスタントを経て、2004年に『ルサンチマン』でデビュー。『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(05~08年)は映像化も果たす。

『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で09年から連載中の『アイアムアヒーロー』は、現在20巻まで発売中。

また映画『アイアムアヒーロー』は、主演が大泉洋、ヒロインに有村架純と長澤まさみを配し、国際的にも評価される仕上がりで4月23日(土)全国ロードショー!

さらに感染パニック前夜を描くドラマ『アイアムアヒーロー はじまりの日』は4月9日(土)にdTVで配信スタート!

ちょっと冴えない青年のリアリティ溢れる日常を、シニカルかつやや残酷な切り口で描く作風で人気を博している。

現在連載中の『アイアムアヒーロー』は、そんなテイストにパニックホラーの要素を加えて大ヒット。このたび劇場版が作られ、4月23日(土)に公開となる。各国の映画祭で高い評価を得るなど、下馬評は上々。

原作を描く花沢健吾に話を聞くにあたって、これほどありがたい前提はない。

「もう、うれしいという思いしかなくて。なるべく自由にやってほしいと要望は出していました。

自分が描いた漫画って、客観視できないし、面白がれないんですよ。読んだらそのときの辛さが蘇ってきちゃうんです。映画は楽しめる作品になってほしいと願っていたので、本当にラッキーだと思っています」

冴えない日常を送る冴えない漫画家が、謎の生命体が巻き起こすパニックに巻き込まれる。主人公の英雄(大泉洋)は、パニックが広がって社会が崩壊していくなか、女子高生の比呂美(有村架純)との逃避行が成り行きで始まる。

というのが大筋だが、原作では世界観を構築するためにある工夫が施してある。

「パニックモノを作るに当たって、大きなウソをつくわけじゃないですか。そのために、日常の流れはとことんリアルにしないといけないと思い、自分自身をなるべく投影したものを主人公に、感情移入して作ったほうがいいと考えたんです」

…と英雄は語る――と言いたくなるくらいキャラの雰囲気は花沢先生そのものだ。映画では大泉洋が演じるが、そこは“別物”。

「映画は映画の『アイアムアヒーロー』であってほしいんですよ。だからこそ僕も楽しめるんです。根底にある柱の部分は共通だと思うんですけど。なんか自分の子どもみたいなものがどんどん成長して、自分よりも大きくなるみたいな感覚です」

それは寂しいわけではなく、望むところ。20歳で、印刷所で工員として働き始め、23歳でアシスタントになった。もともと絵を描くのが好きということもあり、「いい暮らしができるだろう」という目論見があったらしい。

アシスタントとしての生活も楽しかったというが、プロを目指す限りどこかで勝負する必要があった。「ちょっと遅すぎた」と振り返る29歳のとき、『ルサンチマン』を初連載。冴えない男たちが仮想現実でモテと性を求める作品だ。

「あまりいい結果が出なかったんですよね。自分が好きなものを作っても、読者に評価されなければどうにもならないということを突きつけられて、落ち込みました」

ただ、やめようとは思わなかった。漫画以外で生活するイメージがなかったという。

「『アイアムアヒーロー』でようやく日の目を見た感覚です。うれしかったですし、生活水準は上がりましたが、暮らし向きはそんなに変わっていないんですよ。やることは漫画を描くことですからね。

完全週刊連載ではないんですが、だいたい月に3本を9日で描いて、3、4日休みというスケジュールです。とかいいながら結構迷惑かけているんですけど」

ただそこにも、人気作家になれたからこその自由がある。結果を出しているだけに、ある程度スケジュールには融通を利かせてもらっているらしい。といってもそれは、人物描写へのこだわりと緻密な描き込みゆえ。

すなわち、クオリティ維持のための熱意だ。しっくりこない表情は何度も描き直し、ウソがないことを全力で検証する。かくして原作は、いよいよ佳境にさしかかっている。

「ゾンビものによくある、結局結論が出なかったり、核兵器で全部おしまいみたいなことは避けたいんですよね。自分のなかでも、しっかりと着地点のある漫画を描いてみたいなって」

そこには、『ルサンチマン』への雪辱の思いもある。と同時に、商業作品として面白さを担保する必要もある。等身大であった英雄も、ややヒロイックな活躍を見せ始めているが…。

「でもある意味英雄は、この物語の“蚊帳の外”にいるんですよ。主人公であって、主人公ではない。モブキャラのひとりであるような。どうしても作品では自分を投影しているだけに、脇役の感じがしてしまうんですよね。

それが自分にとっての武器になって受けているんだと思うんですが。ある意味時代にも救われた感じはしますよね」

裏を返せば「自分の作風はバブル時代ならまず受けない」。だけど花沢先生、たとえば今日のように映画についてのインタビューを受け、試写会でキャスト陣と共に登壇。押しも押されもせぬ人気漫画家の階段を着実にのぼっている。

すなわち、“リア充”となりつつある。自身を投影してヒットしてきた作風にもかかわらず、現実とのギャップが生じ始めているなか、次回作は…?

「次の作品は考えてはいますよ。リア充化については、何かを引きずっているのでたぶん大丈夫です。ただネタ切れは本当にヤバいですね。アウトプットばかりでインプットする時間もないので…。

それにツイッター(年中どぎつい下ネタ全開のツイート)も失敗でしたね。こんなの出せばそりゃモテないだろうと思いますよ。自分のブランド化には、完全に失敗しました。次回はペンネームを変えて、ゼロからやり直したいですねぇ(笑)」

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