ゲイの牧師さんに同性愛についてのお話を聞いてきました。

私はアメリカにあるプロテスタント系のクリスチャンスクールで高校最後の2年間を過ごしました。その頃はもちろん自分がゲイであることなど誰にも言ったこともなければ、自分でも認めたくなかった時期でもありました。そのような中で、保守的なキリスト教のゲイに対する教えを叩き込まれた事もあり、高校を卒業後も教会へは通ってはいましたが、ゲイである自分は教会から歓迎されていないと感じていました。

2001年にオランダが同性婚制度を導入し、次々にヨーロッパの各国が同性婚、またはそれに代わるシビルパートナーシップを導入し始めましたが、アメリカでは2015年になるまで同性婚の導入が実現されませんでした。その大きな理由が保守派のキリスト教徒たちでした。彼らは聖書に書いてある言葉そのままを信じ、同性愛者を非難し続けています。

また、2015年以降もそのようなクリスチャンの同性婚への批判や反発行動が多く報じられています。このような情報から多くの人は、全てのプロテスタント系クリスチャンがLGBTに対して批判的だと思うようになっているかもしれません。

2014年の冬からベルリンで暮らし始めた私は、ふと、ドイツのように同性婚ができる国に住むクリスチャン達は同性愛者についてどのように思っているのか疑問に思い始めました。

今回、ご自身もゲイであることを公表し、新宿コミュニティー教会で牧師をされている、中村吉基牧師にお話を伺える機会をいただきました。

中村牧師へのインタビュー

私:本日はお時間をいただきありがとうございます。まずはじめに、日本人にはあまりキリスト教に関して馴染みがないのですが、神父さんと牧師さんの違いについて教えていただけますか?

中村牧師:簡単に言いますと、神父とはカトリックの聖職者のことを言います。正式には司祭と言いますが、神父さんと言うのは親しみを込めた呼び名ですね、日本のカトリックの方は、神父様とおっしゃいます。私は牧師なんですが、牧師は(宗教改革で始まった)プロテスタント教会の教職者のことです。

私:そうなんですね。牧師さんは教職という立場なんですね。そういえば、中村牧師は以前高校で教師もされていたんですよね?いつ牧師さんになろうと思われたんですか?

中村牧師:大学卒業後は高校の教師をしていましたが、記者に転職し、その仕事が楽しくなってきてしまったんですね。キリスト教の仕事をするよりも、マスコミの世界で生きたいとか、東京にいるとゲイライフってとても楽しいですよね。今のようにSNSなんかもない時代でしたけれど、2丁目に行ったり、仲間と交わっているのが非常に楽しいという頃で、徐々に牧師になる希望を遠ざけてしまいました。

ところが、その頃肺炎にかかって、死にそうになってしまったことがあったんです。それまでは教会にも毎週行っていたのかなぁ?病気になったのが神様からの問いかけのように感じ、病気が癒されたのであれば、これからの人生を神様のために、人のために捧げていこうと思ったのが30歳くらいでした。

私:そんなことがあったんですね。中村牧師はいつ頃、自分がゲイであると気づかれたんですか?

中村牧師:同性に惹かれるようになったのは中学生になったばかりの頃でした。でも、その時はゲイというセクシャリティで生きていくとは思っていませんでした。大学を卒業して社会人になった時に、きっと女性と結婚して、家庭を築くのだろうなと思っていました。というのは、当時の中学生、高校生が読んでいた雑誌に読者の悩みに応えるコーナーがあったのですが、そこで答えていたクリスチャンのドクターが同性に惹かれることは一過性のものだと書いていたんですね。「あなたが成人する頃にはそれは治ります」というのが当時の論調だったんです。なので、私もいつか同性に惹かれることはなくなっていくのだろうと思っていました。

私:なるほど。当時はそういう考え方が一般的だったんですね。現在とはだいぶ違いますね。教会ではどうでしたか?教会に通っていて、ゲイであるがために教会から歓迎されていないと感じたことはありましたか?

中村牧師:まず、ゲイのことが教会で話題になることがありませんでした。日本の教会で話題になるようになったのは、90年代の終わりで2000年になる頃でした。それはゲイの牧師が出てきたからでした。80年代のキリスト教会ではゲイの事が話題に出ることはまずありませんでした。なので、自分が歓迎されていないと感じたことはありませんでした。

私:そうなんですね。私は1998年から2004年まで留学先のアメリカでプロテスタント系の教会に通っていたのですが、その教会ではゲイに対してのバッシングがすごかったので、ゲイであることはものすごい悪いことだとずっと思っていました。

中村牧師:2015年の東京レインボープライドで私たちの教会は日本の教会としては初めてブースを出展しました。その際にアメリカのテレビ局のインタビューを受けました。その記者さんの質問内容から、なんとなくこの人自身が教会を歓迎していないなと感じたんですね。そのテレビ局の記者さんによれば、プロテスタントという言葉自体が反LGBTというように捉えてしまっているように感じました。

私:そうですね。私が通っていた教会が正にそうでした。なので、リベラルで教養のある多くのアメリカ人がプロテスタント系の教会に対して良いイメージは持っていない気がします。

中村牧師:私は非常にリベラルな教会で育ってきましたので、いろいろな人がいてもいいという教会で育ってきたんです。イエス・キリストは同性愛に関して何も言っていないんです。なので、キリスト教は同性愛行為を禁じているのか?なぜイエスが言っていないのにそう思うの?っていうことです。

リベラルな教会では「異性愛のカップルが真っ当に家庭を築きあげていくことが非常にキリスト教的」なんてことは決して言いません。ですが、無言の圧力というか、教会にそういう家族が多かったりすると、自分もそうなっていくのかなとか、教会がメッセージを発信していなくても、教会に来ている人たちからそういう圧力を感じることはありました。

ですが、実際に日本でも保守的な教会の人たちは平気で礼拝のメッセージの中で「同性愛はいけません」と言います。でも、私自身は幸いそういう教会で育ってこなかったので、そういう教会があること自体知らなかったです。

私:そうなんですね。教会によって、こんなにも見解が違ってしまうんですね。私が通っていた教会では同性愛を最大の罪だと話していたんですが、その点で中村牧師はどのように信者さんへご説明されていますか?

中村牧師:聖書には同性愛が最大の罪とは書かれていません。しかし文脈を無視して同性愛バッシングに使われる箇所はあります。でもそれはリベラルな教会での理解では現代におけるホモセクシュアリティに関してのことを言っているわけではありません。

たとえば旧約聖書のレビ記に「女と寝るように男と寝てはならない」と記されてあります。これは当時の異教の世界で神殿にお参りした際に、少年の男娼と性交するという迷信的な慣習があったのです。少年が射精することが豊作(実り)の象徴となっていました。その迷信に対して、ユダヤ教側からの批判だったのです。

ですから、そんな迷信に囚われなくても、神はあなたたちのことを必ず守り、導いてくださる、ということを言っているのです。ただ、十字軍の時代になって、イスラム教徒とキリスト教徒とが戦い始め、兵隊がたくさん必要になったことで、どちらの勢力も多産をすすめ、勢力拡大を強いられました。生産性のないパートナーシップは聖書において否定されているという、文脈を無視した解釈が行われるようになりました。これが今に至るまで一部の教会では信じ続けられているのです。

私:そうだったんですね。初めて知りました。その当時の時代背景や習慣などもあり、本当の意味を理解するのは難しいですね。それでは現在、日本キリスト教団ではゲイやLGBTについてはどのような立場をとっているのですか?

中村牧師:私たちの教会が属している日本キリスト教団は戦時下に日本のプロテスタント教会が国策によって合同した教団です。合同教会ですから、そこにはさまざまな伝統を持つ教会が加入しています。同性愛に対しても多様な意見や主張があり、現在までには見解を公にはしていません。

新宿コミュニティー教会について

私:新宿コミュニティー教会とはどのような場所ですか?ゲイの私たちが行っても大丈夫ですか?

中村牧師:はい、誰でも歓迎します。

私:どのような方々が教会に来ていますか?

中村牧師:12年間、教会の活動を続けていますと、その時々で構成は変わってきていますが、私たちの教会は他の教会に比べると若い方が多いです。教会を始めて7,8年は私の年齢を超える方は来ませんでした。今ではお年寄りも集っています。

この12年間に500人以上が私たちの教会へきました。ですが、なかなかメンバーにまでなる方が少なく、私のカウンセリングだけを受けてご自分の教会に帰っていく人たちもいます。幸いなことに2015年はすごく教会にいらっしゃる方が増えた年で、もう10年間くらいずっと、7、8人の教会だったんですけれども、現在は15、6名に増えて、そこからメンバーが増えるのではないかと期待しています。

私:教会へ初めて来られた方にはどのように接していますか?

中村牧師:こちらからセクシュアリティを聞くことは絶対にしません。実は今、教会で聞くことはお名前だけです。本名でなくてもいいんです。日本の教会では礼拝に来てくれた人数をカウントするために、受付で名前を書いてもらうのが通常です。教会によっては、メールアドレスや電話番号、住所を聞いたりしますが、私たちの教会ではそのようなことは一切していません。個人情報の問題もありますので、聞かないことにしています。

初めて教会に来られた方がどんな方か知りたいとは思いますが、あちらから言わない限りは出身地や、特にセクシュアリティに関しては聞かないようにしています。それは、教会へ来られている他の方へも徹底的に研修をしているくらいです。

私:現在教会にはLGBTの方はどのくらいいらしていますか?

中村牧師:上記で申し上げたように、セクシュアリティをお尋ねしないので具体的な数字はわからないのですが、ざっくりとした感じでは、LGBTとヘテロの人が半々です。

私:ホテルの会議室を教会にされているそうですが、それはなぜですか?

中村牧師:
自前の建物を持つ資金がないからです。私は教会というのは建物じゃないと思っています。教会というのは教会に来ている人、みんなが教会なのだと思っています。「旅する教会」と表現してもいいかもしれませんが、私自身が動いています。建物を持たない自由もあって、比較的小回りのきく牧師と言いますか、何かお悩みがあるならどこでも行きますよという姿勢が取れてます。

私は今もそうなんですが、ライター/編集者の副業をしながら、教会活動を支えています。そのこともあり、教会に常駐していることができないし、ほぼ日曜日の礼拝でしか使わないので、それであれば、近くのレンタル会議室などを利用して、そこに来てもらった方がいいということです。

私:日本では同性婚が認められていませんが、同性愛者が教会で結婚式を行いたいと申し出た場合に、結婚式を行ってもらうことは可能ですか?

中村牧師:はい、できます。多くの場合、教会ホームページからお問い合わせを頂きます。特に女性からのお問い合わせが多いです。事前にお目にかかって打ち合わせをします。キリスト教における結婚観などもお話しします。

若いLGBTへのメッセージ

私:最後に若いLGBTの方へメッセージはありますか?

中村牧師:日本の若いLGBTの間でも自殺をする人が多いです。私はさまざまな大学や高校で講演をさせていただいてるんですが、大学の授業に行ってもその中に当事者はいると思っていますので、その時に必ず言うんです。「何か犯罪をするような悪いことをしたんですか?」と、何もそんなことをしていないのに、どうして自ら死ななくてはいけないのか。それは本当におかしい。神様から与えられた命を大切にしてください。それぞれに与えられたセクシュアリティはこれも神様からのお恵みなのですから、それは恥ずかしいものでもないし、包み隠さなくてはいけないことでもないです。異性愛者のセクシュアリティと私たちのセクシュアリティは本質的には変わらないわけですから、それを何も後ろめたく思わなくていいことをいつも伝えています。

私:ありがとうございます。今日はお話を聞けてとても勉強になりました。また、間違ったクリスチャンのイメージを持っていたことがわかり、心がなんだかすっきりしました。

インタビューを終えて

今回、中村牧師にお話を伺える機会をいただき、私自身がキリスト教への偏見があったことを感じました。たくさんの教派があるキリスト教は聖書の解釈の仕方により、信じ方も変わること、キリスト教信者だからということだけでゲイに対して理解がないわけではないことを知ることができました。

マイノリティーの方や社会の弱者と寄り添って生きるのが教会のあり方だと語る中村牧師は副業で得たお金も教会に入れ、全てを教会と人々のために尽されています。以前保守的な教会に通っていた信者の方からセクシュアリティーについて相談を受けていたことがあり、その方が自殺をする恐れがあったため、札幌まで自費で行ったこともあるといいます。

あれはしてはいけない、これをしてはいけないという保守的な考え方ではなく、全ての人を受け入れる温かい姿勢が話をしていてもとても心地よく、そこには現代人がどこかで忘れてきてしまった人と人との関わりを思い出させてくるような気がしました。

それは多くのLGBTと過ごされた経験や人生の中でいろいろな経験をされてきた中村牧師だからこそできることだと思いました。

出典 http://life.letibee.com

中村 吉基 (なかむら よしき)牧師
1968年生まれ。
日本聖書神学校卒業。
日本キリスト教団新宿コミュニティー教会牧師。

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