学校や会社など、これまでとは違った環境に飛び込むというのはどこかワクワクするもの。ですが、中には人とのコミュニケーションが苦手で、不安の方が大きいという方もいるのではないでしょうか…。

今や飛ぶ鳥を落とす勢いの6人組アイドルグループ・でんぱ組.incの中でも、金髪ショートヘアと、ひと際異彩を放つ最上もがさんも、人との関わりを苦手としていた一人。過去には、家に引きこもって“ネットゲーム三昧”だったことが、本人の口からも明かされています。

今回は、そんな最上さんにSpotlight編集部がインタビュー。ネットゲームで男性キャラを使用していた時の名残から、現在も一人称が「ぼく」のもがさんが、どうやって引きこもり状態を抜け出し、アイドルという選択肢を選んだのか語ってくれました。そこには「家族」との知られざる絆が。

ネトゲをやめたきっかけは「生きるため」

最上:最初にまず、ぼくがネットゲームをやり始めたきっかけは「人が嫌い」だったこと、そしてネットゲームをやめたきっかけが「生きるため」だったんです。

元々コミュニケーションを取るのが下手だったぼくにとって、ネットゲームは相手の顔を見ることもなく、キャラクターになりきって人とコミュニケーションを取ることが出来るから楽でした。できればずっとゲームだけして生きていきたかったんですけど、ある時、親がリストラされてしまい、自分も将来のことを考えなきゃいけないという現実を突きつけられて。

ちょうどその時、妹が受験シーズンだったんですけど、母から「このままだったら学費もつらい」という話をされて「自分がゲームばかりしていたらだめだ」と思い、働き始めました。そんなある日、でんぱ組が新しくTOY'S FACTORYとレーベルを立ち上げるという記念お披露目会の日があって、来場者にどら焼きを配る仕事をしていたんです。そこででんぱ組のプロデューサーの“もふくちゃん”に初めて会う機会があって。

そのあと、Twitterでコミュニケーションを取っていたら「話しに来ない?」と秋葉原のディアステージ(でんぱ組.incのメンバーが働いていたライブスペース)に呼ばれて「今1人抜ける予定の子がいて、加入する子を探しているんだけど、今は何をやっているの?」と言われたので「今は日雇いのバイトをしているニートです」「趣味は何?」「ネットゲームと漫画とアニメです」という話をしたら、

「オタクは大歓迎。でんぱ組はアイドルグループというよりは、面白集団だからやってみない?」

と軽い感じで言われて。とにかくその時は自分に自信がなかったから、顔写真を撮らなければいけない履歴書を書くのが本当に嫌だったんです。そこを省いてくれるならぼくにとっては素晴らしい思って「やってみます」と言ったんです。

トークに入れず「メモ係でもいいですか」

――最初に「人が嫌い」とおっしゃっていましたが、いきなりアイドルという人前に出なければいけない特殊なポジションに挑戦したんですね。

最上:そうなんです。ぼく、いまだにアイドルの友だちがほとんどいないんです。アイドルは立派で、綺麗でキラキラした女性たちだというのが自分の中にあって、そんな綺麗な人たちに触れてはいけないと思うと近付くのが怖くて。

SEKAI NO OWARIのSaoriさんが、女の子の方が苦手な人で「私はサバサバし過ぎて考え方が違う」と言っていたんですけど、ぼくもそういうタイプ。集団じゃなければいけない、秀でたところがあったら妬むといった女の子特有の考え方に付いていけなくて、これまでなるべく関わってきませんでしたし。

――でも、メジャーになると露出も増えて否が応でも多くの人と関わらなければならないですよね。

最上:だから最初は本当にダメで、インタビューの時も6人一緒に話したりする機会があってもしゃべれないし、人との話にも乗れないから自分だけずっと黙っていたり。いざしゃべったとしても、他の人たちの声が大きいから負けるみたいな。

だったらしゃべらないほうがいいと思って、「インタビューは一言もしゃべれないので参加しなくてもいいですか。パソコンで打つ方が得意だからメモ係をします」と言いました(笑)。

でもグラビアをはじめ、ドラマやバラエティなど、自分だけで表現しなければならない機会が増えてきて。でんぱ組を広めるために存在感を出さなければいけないのに、話を振られてもプラスにならない返ししか出来ず「これではいけないな」と。今は場数を踏んで、少しずつ成長しているという感じです。

ネガティブなコメントに返答する理由

――もがさんは一回のブログにかける熱量が相当だと思うのですが、それはどういった思いからですか?

最上:確かに大変ですが、自信がなくて失敗もたくさんしてきた自分でも、頑張って続けていればいつか良いことがあるんだよ、ということを見てくれる人に伝えたいんです。昔は自分もできなかった、でもできるようになったということは、やろうと思えば人間誰でもできる。それで「じゃあ自分もできるんだ」と感じてもらえたらいいなと思っています。

――ネガティブなコメントも拾って答えていますね。

最上:むしろネガティブなコメントの方を拾っている気がします(笑)。「あなたは卑屈になっているけれど、何もやらないだけじゃん、何かをやろうとしたらみんなできるんだよ」と言いたくなっちゃうんですよね。自分も最初からうまくいけたわけじゃなくて、ほとんど失敗しているけれど、失敗を積み重ねるといつかは成功することもある。環境は違えど、多分それはみんな一緒だと思います。

「本心じゃないことはブログに書けない」

――「恋愛に性別は関係ないと思っている」など、ドキッとするようなことも全て正直に書いていますね。

最上:本心ではないことは書けないですね。ファンに嘘は付きたくないから、思っている事をきちんと伝えたいという考えです。

そのブログも、自分が恋愛に性別は関係ないと思ってたから素直に書いただけのことです。性別問わず出会って好きだなと思ったら純粋に恋愛すればいいと思います。それを書いたところで世間的には理解されづらいですが、ファンで同じような悩みを持っている子が「もがちゃんが言ってくれたことで、気持ちが楽になった」と言ってくれていたので、よかったなと。

――他のアイドルグループでは、そういった意見を言う方はあまりいませんね。


最上:でも最近増えたと思いますよ、もしかしたらでんぱ組のせいかもしれない(笑)。アイドルには「いつもニコニコ笑って可愛く」という固定観念がある思うんですけど、ぼくはそれ以前の話。自分を作れないし偽れないし、キラキラしたものとは無縁だから、アイドルというくくりじゃなくて“最上もが”という一人の表現者としてみんなと対峙しようと思ったんです。

だからこそ偽りのない事を書きたかったし、つまらないブログを書きたくなかった。「今日は○○のライブがありました。楽しかったです。またね〜」というようなブログは自分には必要ない。逆にそうした感想ごとは、140文字以内で書けるTwitterでいいなと思っていて。ブログはずっと残りつづけるから、自分の正直な気持ちを書いていこうと使い分けています。

――その“しっかりと伝える”というスタンスは、もがさんの魅力の一つになっているかと。

最上:なっていたらいいなと思いますね。あと、もう一つ気をつけているところがあって、Twitterの使い方です。

最初はメンバーやSaoriさんをフォローしていたんですけど、一時期誹謗中傷が多くてフォローしている人にも迷惑がかかってしまったことがありました。だからTwitterはコミュニケーションツールではなく、情報をファンの人に提供するだけのものと決めて、今はフォローをゼロにしています。アーティストさん同士がコミュニケーションする上で大事なものかもしれないし、そこでたくさんの人と出会えるのも知っているんですけど、あえてそれを遮断する。怪しまれるのも嫌だし、自分が関わっている人を傷つけられるのはもっと嫌なので。

一人暮らしして知った家族の大切さ

――もがさんのSNSを常日頃見ていて、ご家族とのLINEのやりとりをアップするほど仲良しなんだなと思いました。

最上:元々は全然仲良くありませんでした。うちはお兄ちゃんも妹も優秀だったんですが、唯一ぼくだけ何もできなくて、体育が好き、美術が好き、ゲームが好き、ハイ終わり!みたいな(笑)。

お母さんは教育熱心だったから、それに怒ってゲームを奪うし、当時は「もう最悪」と思っていて。お父さんに関しても、「お父さんと一緒に歩くのは恥ずかしい」みたいな娘特有の反抗期があったのと、妹が産まれたことによってお父さんの愛情が全部妹に向けられてしまい、自分はずっと孤独だなと感じていました。

それで、ぼくはおばあちゃん子になるんですけど、ある日おばあちゃんが誰かと電話しているのが聞こえてきて「うちの孫は長男は出来がいい子で、下の子も勉強を頑張っているみたいなんだけど、真ん中の子にはまったく期待していない」と言っていてかなりショックを受けて。それを聞いてからネットゲームにより走りましたね。

――いわゆる「ネットゲーム廃人」の時代に突入するわけですね。

最上:はい。その後、でんぱ組に加入してしばらくしてから、仕事場が遠いということで一人暮らしを始めるんですけど、その時に家族の大事さを痛感したんです。実家だと家に帰ったらお風呂が沸いているし、お母さんはご飯を作ってくれているし、洗濯もやってくれる。それを今まで常識だと思いながら生きてきたので、最初は洗濯機もどうしたらいいのかわからなくて(笑)。その都度お母さんに電話して「洗剤入れて柔軟剤入れて回せばいいのよ」などと教えてもらっていました。

電話するたびにどんなことでも答えてくれるから段々と「お母さんはすごい」という尊敬の思いに変わっていきましたね。お父さんも、本来子どもが好きだったということもあって、面倒見もいいし「実家に置いてきた○○を取りに行かなければいけない」と言ったら、わざわざ実家から持って来てくれるので、今では合鍵を渡しているぐらいです。

家族仲が悪くなるくらいなら自分が稼ぐ

――グラビア活動でも活躍されていますが、ご両親はどんな反応ですか?

最上:最初はグラビアにとても抵抗があって、「どう思う?」とお母さんに相談したんです。そしたら「今しか見せられない美しいものは、今出しても大丈夫だよ」と言ってくれて後押しになりましたね。グラビアが好きなお父さんに至っては、会社に載ってる漫画を持って行って「これはうちの娘」と自慢してくれています(笑)。

――では家族仲は今かなりいい状態なんですね。

最上:ただ、お兄ちゃんが一時期やばかったんです。ぼくが家を出た後、愚痴をいう相手がいなくなったからか、お母さんとよく喧嘩してたみたいで。それを聞いてからお兄ちゃんとはSkypeで「おにい元気?」「最近どうよ」みたいなやりとりを個人的に取り合っています。

極論ですけど、お兄ちゃんは働かなくてもいいと思っています。ぼくは生きるために働くという選択肢があったんですけど、お兄ちゃんは「自分が好きなことでなければ働きたくない」と抵抗があって。もし、お金のことで家がゴチャゴチャするのであれば、その分ぼくが稼げば心配はないので。いつか今の状態がダメになったら、お兄ちゃんもきっと必死になると思うし。だからお兄ちゃんのことを責めないで平和にいこうよみたいな話を家族としています。

もがさんがTwitterで公開した家族とのLINE。

――ここまで色々なことをさらっと明かしてくれましたが、相当な覚悟を持ってこの世界に入ってきたんだなあと感じました。

最上:逃げたいと思うこともあるんですけど、もしやめてしまったら家がどうなるんだろうとまず考えちゃうんです。

――自分の事より家族のことが浮かぶんですね。

最上:家族が離ればなれになってしまうのが怖いんです。今、妹は実家の近くで働いていているのでまだいいんですけど、もし実家を出たいと言い出したら、子離れが出来てなさそうな両親が心配。だからゆくゆくはみんなで都心に住もうかな、なんて考えています。

ぼくは一度ダークサイドに落ちると長くなってしまうので、そんな時は両親によく連絡しています。「今日はこういうことがあって凹んだんだ」「そっか、大丈夫だよ」みたいに、元気づけてくれるので最近は落ちこむことも少なくなりました。妹も愛猫の写真をたくさん送ってきて励ましてくれたり、プレゼントをくれたり…。だから家族は何よりも大切な存在ですね。

あとがき

ブログに見られる熱のこもった文章の通り、インタビューでも終始誠実に、多くのことを語ってくれたもがさん。「自分はアイドルというくくりじゃない」という言葉がありましたが、数々のメディアに必要とされている現状を見ていると、すでに新たな”アイドル像“を作り上げているのではないでしょうか。

そんな彼女が所属するでんぱ組.incは、現在『はやぶさかがやきツアー2016』の真っ最中。もがさんにソロ曲を提供したCharaさんや、以前からもがさんがファンだと公言するFear, and Loathing in Las Vegasなど、ジャンルの違うアーティストをゲストに招き、ライブでしか見られないコラボ曲も披露。ブログと合わせお見逃しなく!

<取材・文/Spotlight編集部、写真/長谷英史>

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